2012 Fiscal Year Annual Research Report
高精度ロケットを用いた太陽の硬X線撮像観測による相対論的現象の探査・解明
Project/Area Number |
24244021
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | Japan Aerospace Exploration Agency |
Principal Investigator |
高橋 忠幸 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 教授 (50183851)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡辺 伸 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 助教 (60446599)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 太陽物理学 / X線天文学 / Si検出器 |
Research Abstract |
本グループが開発を進めてきた先端的硬X線イメージャーを発展させ、カリフォルニア大学バークレー校SSL (Space Science Lab.)およびNASAと協力して、ロケット観測実験FOXSI, FOXSI2を遂行している。2012年11月、我々は米国ホワイトサンズミサイル実験場において太陽観測ロケット実験 FOXSI(Focusing Optics X-ray Solar Imager)を実施し、太陽からの硬X線放射を集光撮像観測することに世界で初めて成功した。我々は焦点面検出器を担当した。焦点面検出器である両面シリコンストリップ検出器は、両面から同時に信号を読み出すことで光子ごとの反応位置とエネルギーの決定を可能にし、低ノイズの読み出し集積回路と合わせて我々が独自に開発してきた。打ち上げ前の実験では FWHMで 0.5 keV のエネルギー分解能、および 5 keV を下回るしきい値を達成している。両面シリコンストリップ検出器を用いての初の宇宙観測となるFOXSI実験では、1 Hz以下の極めて低いバックグラウンドレートを実現しつつ5分ほどの観測時間内に数千の太陽硬 X 線光子を検出することができた。RHESSI 衛星やようこう衛星搭載の硬 X 線望遠鏡ではフーリエ再構成によるイメージング手法が感度を制限していた。FOXSI は 7 秒角(FWHM)という高い角度分解能の硬 X 線望遠鏡と低ノイズ・高位置分解能の半導体検出器による直接撮像で、5-15 keV の領域で格段の感度向上、特に、S/N比の向上をはたしている。FOXSIに引き続き、FOXSI2の提案もNASAによって認められている。そのために、80 キロ電子ボルトまでの硬X線領域でより高い感度を持つテルル化カドミウム検出器の基礎開発を行った。検出器の実装方法、読み出しについて検討を進め、次年度の製造に備えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的の一つであったFOXIロケット実験に成功している。実際に打ち上げ場に出向き、共同で作業を行った。これらの作業で得た知見は、次期ロケット実験FOXSI2において、撮像検出器を如何に改良するか、また、日米の作業分担をどのように行うかを検討する上で非常に有益であった。 硬X線領域で感度を向上させるためには、シリコンではなく、より硬X線領域での阻止能力の高いテルル化カドミウムを用いた半導体イメージャの開発が必要である。我々はすでに読み出しのASIC技術やそれをコントロールするためのFPGA回路を確立した。今後は、FOXSIロケット実験で確立した電気的、機械的I/Fにもとづいて実装をはかればよいこととなり、初年度としては非常に順調に作業が進んでいるとしてよい。
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Strategy for Future Research Activity |
日米共同実験であり、FOXSI2実験では、日本の分担作業がさらに広がる。研究協力者に、本グループの卒業生であり、FOXSIロケット実験に博士課程、博士研究員として携わった石川真之介博士を加え、研究グループの強化をはかる。 テルル化カドミウム半導体の両面ストリップ検出器においては、ストリップ電極を安定してつけること、また読み出しのためのバンプ技術が鍵である。これらを早い段階で確立することが必要である。今年度中に素子を読み出すための回路基板の詳細設計を行い、試作をおこなうなど、すでに技術的に高い達成度にあるものの製造作業を先行する。 ロケットや大気球、あるいは超小型衛星などの小型飛翔体を用いた実験は、これまでにやられてこなかったような手法で新しいサイエンスを切り開くことが可能である。その機会を用い、太陽フレアから、銀河系内、銀河系外の相対論的天体の様々な課題にアプローチするための検討を、国際的に幅広く進める。
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