2012 Fiscal Year Annual Research Report
Belle‐II実験のための高性能新型粒子識別装置の開発
Project/Area Number |
24244035
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
住吉 孝行 首都大学東京, 理工学研究科, 教授 (30154628)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
足立 一郎 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (00249898)
川崎 健夫 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (00323999)
河合 秀幸 千葉大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (60214590)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 粒子識別装置 / リングイメージチェレンコフ検出器 / シリカエアロゲル / HAPD |
Research Abstract |
本研究の要である光検出器としてHAPDを使用するが、10 年にわたる長期実験の間の放射線(中性子とγ線)損傷が懸念される。中性子への対策として、1)半導体中のp層を薄くすることで格子欠陥の確率を減少させること、2)読み出し電子回路のshaping 時間を短くすることで漏れ電流による雑音を減少させること、などを検討した。また、γ線に関しは、ホールが絶縁層に蓄積するなどで、APD の正常動作を妨げることが考えられるが、これに関しても絶縁層の厚さ・配置などを最適化することで対処できると考えた。平成24年度はこれらの対策を施したHAPDを多数作成し、放射線損傷の評価を行った。その結果、10年の長期使用においても十分に性能が保持されることが確認された。 HAPD の大量生産に備えて、高電圧試験、感度の一様性、ノイズ量、クロストーク等を自動的に測定するシステムの構築するために、その要となる分光光度計などを製作した。 チェレンコフ検出器の輻射体として、屈折率が1.05~1.06 の複層型のシリカエアロゲルを使用する。それらの製法に関しては、千葉大学で開発されたpin-hole 乾燥法が有効であるため、pin-hole 乾燥法で製作されたシリカエアロゲルの性能評価を行った。透過率は高いがクラックの入る確率が高いことが判明し、最終的にどの方法で製作するか再検討することになった。 実機に搭載される480台のHAPD の感度や、シリカエアロゲルの透過率、ミラーの反射率などの経年変化をモニターするためのシステムを検討した。LED を光源とし、光ファイバーを用いて一定量の光を測定器内の各所に入射することを考え、光ファイバーを用いた光分配システムを試作した。 HAPD には8kV の高電圧が印加される。480 台のHAPD に高電圧を印加出来るシステムが必要であるため、本年度はプロトタイプを製作しその性能評価を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本測定器で最も重要な要素となっているHAPDに関して、目標としている10年間の中性子・γ線損傷に耐える製品を製作できるという大きな目標が達成され、計画通りに平成25年度から大量生産が開始されることになった。また、HAPDの大量生産に向けて、受け入れ検査システムの構築が始まったが、その重要な要素である分光光度計が製作され、300~600nmの波長に対してのHAPDの応答が測定された。来年度はステッピングモータを導入して、位置によるHAPDの応答の違いを測定できるようにし、評価システムを完成させる 輻射体としてのシリカエアロゲルの製法にはpin-hole乾燥法と通常のアルコール内放置法がある。透過率に関してはpin-hole乾燥法が優れているが、クラックの少なさにおいてはアルコール内放置法が優れている。どちらの方法を用いても粒子識別性能は大きくは変化しないことが判っており、最終的には25年度に決定する。 測定器の光学的な性能評価のためのモニターシステムの検討を行った。光を測定器内に導入しそれをシリカエアロゲルで散乱させて、HAPDに一様な光量を照射することを考えた。光の入射位置からのHAPDの距離と届く光量の関係を測定した。期待していたようには一様な光量分布が得られず、入射場所を多数とる必要があることが判った。そのための多分木の光ファイバー分岐器を試作し、平成25年度においてそれを用いた評価を行うことになった。 高電圧電源に関しては製造業者との共同開発を開始した。電圧の上昇・下降の変化量で設定値との違いがあったものの、概ね期待した性能が達成されておりほぼ計画通りに進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で最も重要な要素となっているHAPDの大量生産に目途がついたことで、今後も研究は予定通りに進行できると考えている。平成25年度~26年度にかけて大量生産された420本のHAPDが順次納品されるが、それの受け入れ検査システムも平成25年前半には完成するので、計画通りに進行できる。 シリカエアロゲルの製法の選択は平成25年度中に行えば計画に支障はなく、また、どちらの製法を選択しても粒子識別性能に大きな差が生じないことも判ったので、計画に変更をもたらすことはない。 実機に設置された、HAPD,シリカエアロゲル、ミラーなどの光学的評価を行うためのモニターシステムは光量の一様性において若干の検討事項が残っているが、例え一様性に欠けても決まった量の光子が供給されれば性能評価は可能なので、そのことによって計画に大きな後れを生じさせるものではなく、若干計画よりは遅れる可能性はあるが、平成26年度中には完成できる予定である。 高電圧電源はすでにプロトタイプ試験でほぼ期待通りの性能が達成されていることから、少しの修正を加えることで、必要な性能を有した製品が完成することが判っている。これに関しても計画を遅らせる要因にはならない。 本研究以外で製作している測定器容器に関しても1/6モデルでその評価を終えており、予定通りに平成26年度には完成できる見込みであり、すべて必要な項目は計画通りに進むものと考えている。
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