2014 Fiscal Year Annual Research Report
サーマルフリーフォトニクスを目指した極限共鳴光学応答の開拓
Project/Area Number |
24244048
|
Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
石原 一 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60273611)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
一宮 正義 滋賀県立大学, 工学部, 准教授 (00397621)
沈 用球 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20336803)
芦田 昌明 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (60240818)
余越 伸彦 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90409681)
|
Project Period (FY) |
2012-05-31 – 2016-03-31
|
Keywords | 非線形光学 / 励起子 / CuCl / ZnO / 薄膜 / 四光波混合 / カー応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
26年度は以下の研究実績があった。 (1)CuCl薄膜において、室温位相緩和時間を凌ぐ輻射緩和時間を持つモードの全体を励起出来る短パルスを準備して、十分な信号強度を確保することを本研究の主要な目標としているが、26年度はそのようなモードのほぼ全線幅をカバーするパルスでの励起に成功した。その結果、10fs級の応答が観測されており、室温での信号強度低下も従来より遙かに抑えられるようになった。まだチャーピングの問題等で理論との一致に多少の問題が残るが、その解析も進めており、問題の所在が明らかになりつつある。 (2)ZnOについても、超高速モードの時間応答の観測に成功し、数10fs級の応答が観測され、簡単なモード解析によりその励起子成分が同定出来た。これについても理論との詳細な一致についてはまだ問題が残っており、最終年度に向けてこの問題の解決に向けて作業を進めていく。 (3)理論面では、ZnOの超高速応答をカー効果で観測するための解析理論が完成した。広いスペクトル幅の全体を利用して非線形性の大きさを評価するための指標を明らかにし、その指標の膜厚依存性を計算して理論解析に備えている。また、非マルコフ近似を導入するための定式化もほぼ完成し、今後のZnO、CuClの解析に応用していく予定である。 (4)CuClの超高速モードの発光理論が完成し、これによって、光を介した巨大な励起子間相互作用による重ね合わせ状態からの発光により高効率な上方変換発光が現れるという新奇な発光機構が明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
26年度は、CuCl、ZnOともに、目標にしていた10fs級の応答の観測に成功し、狙い通り室温での信号低減がかなり抑えられる結果となっている。特にZnOでこれが観測されたことは、当初の予定にはなかったことである。ZnOは応用上も極めて有望であり、この材料で超高速応答が観測されたことは、想定以上の成果であると評価出来る。さらに超高速発光の理論完成も予定に無かった成果であるが、この理論により、励起子の重ね合わせ状態より生じる、励起子系発光の全く新しい機構が発見されたことは大きな成果と言える。特に上方変換発光が高効率で起こると言うことは、応用上も新しい光源開発に結びつく成果である。また、このように予想された現象がこの科研費研究のこれまでの実験で得られていたことを突き止めた点も重要な成果である。順調な進捗に加え、このような当初予定になかった想定外の重要な成果もあわせて考えれば、研究は当初の計画以上に進んでいると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
27年度は以下のように研究を進める。 (1)まずCuClについては狙いの超高速応答が得られているが、理論との一致が十分ではないため、今後、同様の実験を多数の試料を用いて進めていき、膜厚依存性、温度依存性についてのさらに系統的なデータを蓄積する。そのようなデータを解析することによって、実験と理論が一致しない部分の理由を突き止め、十分納得できる形の結果を得るようにし、それをまとめて高IF誌へ投稿する準備を進める。 (2)ZnOについても同様に今後さらに多くの試料での測定を行い、理論と実験の一致の程度を高める。そのことによって観測されている超高速モードの理解を完全なものに近づける。 (3)理論的には非マルコフ近似による解析を可能としたので、それを用い、上記CuCl、ZnOの解析を引き続き行う。応答の速度、温度依存性については、既にサーマルフォトニクスと呼ぶに相応しい値が得られつつあり、これを理論的に精緻に説明できれば、目標に一段と近づくと期待される。 (4)輻射による励起子の重ね合わせ状態から生じる波長変換発光について、さらに理論的に詳細に明らかにすると共に、これを実証する実験を開始する。本高速発光は位相緩和速度を凌ぐスピードで発光しており、室温での波長変換発光の実現も期待できる。正にサーマルフリーフォトニクスの新しい機構であり、これによる波長変換機構が実験的に明らかになると大きなインパクトが期待できる。
|
Research Products
(26 results)