2012 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ空間におけるアルカリ金属s電子系の絶縁体金属転移と強磁性
Project/Area Number |
24244059
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
野末 泰夫 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (60125630)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
萩原 政幸 大阪大学, 極限量子科学研究センター, 教授 (10221491)
中野 岳仁 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (50362611)
五十嵐 睦夫 群馬工業高等専門学校, 電子メディア工学科, 教授 (60259819)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 絶縁体金属転移 / 磁性 / アルカリ金属クラスター / ゼオライト / 電子相関 / 電子格子相互作用 / ポーラロン / NMR |
Research Abstract |
多孔質結晶のゼオライトでは,丈夫なアルミノ珪酸塩骨格の間に3次元的に規則正しく配列したナノ空間が形成される。この空間にアルカリ金属を吸蔵させると,s電子は局在性の高い量子状態を形成するとともに,電子相関が効いた新奇な多体電子系を形成する。その結果,非磁性元素で構成されているにもかかわらず強磁性やフェリ磁性や反強磁性などが観測される。 細孔がダイヤモンド構造で配列したカリウムタイプのゼオライトLSXに吸蔵させるカリウム金属の吸蔵量を増加させるとフェリ磁性が観測されるが,磁性が発現する状態では電気抵抗が減少し,金属状態に転移していることがわかった。また,含まれるナトリウム量を増加させると,フェリ磁性は強磁性に変化し,磁化がより顕著になるが,あるNa濃度を超えると,突然,強磁性が消失することがわかった。また,電気抵抗にも顕著な増大が現れ,ナトリウムの少ない系の性質とは大きく異なることがわかった。 一方,ナトリウムタイプのLSXにナトリウム金属を吸蔵させた系では,吸蔵量を増加させると,非磁性の絶縁体状態から常磁性の金属状態に突然転移し,温度上昇と共に磁化率は増大し,室温付近できわめて大きな値を示す。この系のNa核の核磁気共鳴の様子から,室温ではダイナミカルにイオンが熱振動するのに伴って磁性が発生する,従来にない性質が見えてきた。 また,細孔が体心立方構造で配列したソーダライトではモット絶縁体状態の反強磁性が観測されるが,アルカリ金属の種類を重くすると,ネール温度は上昇するが,さらに重くすると突然磁性が消失し,金属に転移する様子が見えてきた。これは従来からハバードモデルで期待されてきた絶縁体金属転移の可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細孔がダイヤモンド構造で配列したゼオライトLSXにカリウム金属を吸蔵させると細孔当たり6原子付近で劇的に電気抵抗が減少して金属状態に転移する。しかし,Na量を増加させると強磁性を示さない吸蔵量では絶縁体状態を示すことが解ってきた。これらは磁性と伝導が強い相関を持っていることを示している。これらの状況は,電子格子相互作用も含めた相関電子系の性質として興味が持たれる。一方,全てナトリウム金属の系では,吸蔵量を増加させると,ダイナミカルにイオン運動する系の磁性が見えてきたが,これはポーラロン効果を考慮した多電子系の磁性として興味が持たれる。
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Strategy for Future Research Activity |
特異な性質に関連して様々な試料を作成する。また,特製の密封セルを用いた電気的測定を中心にアルカリ金属の組成依存性と吸蔵量依存性を系統的に解明する。また,近赤外可視紫外での光学スペクトルに加えて,赤外分光装置による中赤外域での低エネルギー電子励起スペクトルを得る。加えて,磁気測定と電子スピン共鳴と核磁気共鳴によりs電子のスピン状態の解明を行う。これらの測定により,s電子系における電子相関と電子格子相互作用が競合した金属転移と磁性の発現に関する知見を得る。また,ソーダライトにおけるアルカリ金属をより重いRbにすることで,磁性と伝導に大きな変化が見えてきたので,その解明を進める。これらの研究により,配列したナノ空間における相関s電子系の様子を詳しく解明する。
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