2014 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ空間におけるアルカリ金属s電子系の絶縁体金属転移と強磁性
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24244059
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
野末 泰夫 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (60125630)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
萩原 政幸 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (10221491)
中野 岳仁 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (50362611)
五十嵐 睦夫 群馬工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (60259819)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 強磁性 / 絶縁体金属転移 / 強相関ポーラロン系 / ゼオライト / アルカリ金属 / 電子相関 / 電子格子相互作用 / 強相関ポーラロン系 |
Outline of Annual Research Achievements |
多孔質結晶のゼオライトでは,丈夫なアルミノ珪酸塩骨格の間に3次元的に規則正しく配列したナノ空間(細孔)が形成される。この空間にアルカリ金属を吸蔵させると,s電子は局在性の高い量子状態を形成するとともに窓を通じて細孔間を遷移し,電子相関が効いた新奇な多体電子系を形成する。また,ゼオライト骨格構造には多くの種類があり,その結果,骨格構造に依存した様々な性質が観測される。 細孔が二次元的に配列したゼオライトP(GIS 骨格構造)におけるカリウムクラスターについて,大きな進展があった。ゼオライトP では,4 つの8 員環 が開いたGIS ケージが8員環を共有してa 軸方向とb 軸方向にジグザグチャンネルを形成し,それが互いに交わった擬二次元的な空間を形成している。また,4 員環がつながったベルト状の壁がa軸方向とb 軸方向に伸びており,GIS ケージの天井と床を形成している。陽イオンとしてカリウムをGIS ケージ当たり2 個含むゼオライトに,金属カリウムをGIS ケージ当たりn 個吸蔵させた試料の室温における光吸収スペクトルを測定したところ,カリウム吸蔵量n の増加によって,1.2 eV 付近の吸収バンドが成長し,その高エネルギー側には,n と共にシフトしながら成長する吸収バンドが観測された。1.2 eV の吸収バンドは,ジグザグチャンネルに平行な偏光によってs電子が励起される光吸収と解釈され,n と共にシフトしながら成長する吸収バンドは,c 軸に平行な偏光によってs電子の集団運動が励起される表面プラズモンと解釈した。また,低エネルギー側では,n の増加と共に顕著な光吸収の成長が見られ,系が金属に転移したことが予想されるため,電気抵抗率の測定を行い,金属転移が明確に見いだされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ゼオライトPは,新たな擬二次元系の骨格構造を有することから,その性質の研究は,これまでの他のゼオライト中のアルカリ金属の性質との間に違いが見られた。 電気抵抗率の温度依存性を測定したところ,n = 1.05 以下では,有限なエネルギーギャップを示し,絶縁体状態にあることがわかった。しかし,n = 1.09 では,突然ギャップが消失して,金属に転移することがわかった。その活性化エネルギーは,n = 0.8 付近から,金属転移を起こすn = 1.09の直前まで,比較的一定の値を示し,n = 1.09 で突然ゼロになった。また,磁気測定の結果,全ての吸蔵濃度n において,ほぼ非磁性であった。これらの結果を「強相関ポーラロン系」の概念を導入して解釈した。 そのなかで,ゼオライトPが,一種類のケージだけから構成されていることを考慮して,絶縁体金属転移に関する詳細な考察を行った。n = 1 以下の広い範囲で非磁性の絶縁体状態にあることについて,ふたつのスモールポーラロンが結合した一重項のスモールバイポーラロン状態を考えた。しかし,2個の電子間のクーロン斥力を考慮して,隣接するGIS ケージにまたがった2中心型のスモールバイポーラロンを考えた。その結果,n = 1 において,全てのGIS ケージにスモールバイポーラロンが形成される。また,活性化エネルギーがn = 0.8 以上でほぼ一定となるのは,熱的に励起されたs電子が,スモールバイポーラロン上をラージポーラロンとして遍歴するモデルで説明できる。それと同時に,n = 1 を超えると,スモールバイポーラロン上に新たなs電子を供給することになり,それがラージポーラロンとして遍歴し,金属への転移が説明できる。このように,光学測定と電気伝導度と磁気測定の結果は,「強相関ポーラロン系」としての性質として解釈できることが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
擬二次元的な配列ナノ空間を形成しているゼオライトPにおけるカリウム以外のアルカリ金属の性質の解明にも興味が持たれる。また,別途研究を進めているゼオライトLSX中の系では,カリウムにナトリウムを加えて行くと,性質が大きく変化する徴候が見られており,カリウム・ナトリウム合金クラスターの性質の解明を進める。
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[Journal Article] Unconventional magnetism in the layered oxide LaSrRhO42014
Author(s)
N. Furuta, S. Asai, T. Igarashi, R. Okazaki, Y. Yasui, I. Terasaki, M. Ikeda, T. Fujita, M. Hagiwara, K. Kobayashi, R. Kumai, H. Nakano, and Y. Murakami
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Journal Title
Phys. Rev. B
Volume: 90
Pages: 144402-1-7
DOI
Peer Reviewed
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