2014 Fiscal Year Annual Research Report
マントルの水マッピング:高温高圧下の地震波減衰特性と電気伝導度からの制約
Project/Area Number |
24244087
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
芳野 極 岡山大学, 地球物質科学研究センター, 准教授 (30423338)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
米田 明 岡山大学, 地球物質科学研究センター, 准教授 (10262841)
西原 遊 愛媛大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (10397036)
山崎 大輔 岡山大学, 地球物質科学研究センター, 准教授 (90346693)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | マントル / 水 / 単結晶 / 粒界 / 電気伝導度 / 拡散 / 地震波減衰 / プロトン伝導 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は水がマントルのどこにどの程度の量存在しているかを定量的にマッピングすることを目的としている。少量の水に敏感な物性である地震波の減衰(非弾性効果)を特徴づけるQ値の決定と電気伝導度に基づき、マントルの水の量と分布を地震波減衰および電気伝導度トモグラフィーと照合して決定を試みる。 本年度は、本科研費でSPring8のBL04B1のD-DIA型プレスに導入した短周期振動油圧システムを用いてQ値の測定を本格的に開始した。オリビンの粒内で起こる減衰への水の影響を調査するために、無水のフォルステライト単結晶と天然の含水オリビンの単結晶をそれぞれ直列に配置して、歪の位相差をX線ラジオグラフィでその場観察した。同じ結晶軸方向で無水のフォルステライト単結晶と含水オリビンの単結晶の間での振動の位相差が確認され、含水試料は減衰していることが分かった。 電気伝導度測定は、マントルに相当する温度では試料の脱水を防ぐ事が難しいため、低温で測定を行ってきた。高温での含水試料の電気伝導度を推定するために含水鉱物の結晶構造内に存在する水素がどのような移動度(拡散)を持ち、どのような形態の水素が電気伝導に寄与しているかに関する知識がマントルの定量的な水の量の見積もりに重要である。このため、ワズレアイトとリングウッダイトの含水単結晶を重水素(D)と軽水素(H)をドープしたものを合成し、それぞれの結晶間におけるD/Hの相互拡散実験を行った。拡散プロファイルは二次イオンビーム質量分析機(SIMS)で測定した。ワズレアイトとリングウッダイトのHD相互拡散係数はワズレアイトの方が同じ温度で大きいが、オリビンで報告された値にどちらも近い値であった。この拡散係数からNernst-Einsteinの関係を用いて電気伝導度を計算すると水の寄与は他の伝導メカニズムと比べるとマントル遷移層の条件では小さいことが推定された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、地震波減衰と電気伝導度を用いてマントル鉱物中の水の量を定量化することを目的としている。本科研費で新しく開発から着手した高温高圧下での地震波減衰測定の研究は、初年度に短周期振動システムの開発、SPring8のD-DIA型プレスに設置、2年度目にこのシステムのテスト運用と有効性の確認、3年目にあたる本年度では系統的なデータの取得が可能となったことで、概ね研究計画通りに研究は進展していると言える。 一方、電気伝導度の水の影響に関しては、オリビンの高圧相であるワズレアイト、リングウッダイトのプロトン伝導を支配する結晶内の水素の移動度を決定するためにDとHをドープした含水単結晶を合成し、それらの結晶間でのD/H相互拡散実験を行ない、拡散係数の決定が行われ、電気伝導度への水の寄与がそれらの鉱物では小さいことが推定された。既存の電気伝導度のデータとは整合性が無いことから、特定の核種の水素が電気伝導度へ貢献している事が考えられる。 全体の研究の進展を考慮すると研究はおおむね順調に推移している。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度末に導入した短周期振動油圧システムでオリビン多結晶の測定データは、今までの報告された値と大方一致することから、本研究で採用した周期振動とX線その場観察を組み合わせた方法は、高温高圧下におけるQ値測定に十分に有効である。また、含水オリビンの単結晶は無水フォルステライトより、減衰していることが分かった。ただし、歪量を稼ぐために標準物質として用いられた無水フォルステライト単結晶も高温下では減衰していることから、定量な議論を行うためには標準物質自体のQ値を測定する必要がある。今後は、標準物質のQ値をより減衰の少ないと考えられているサファイア単結晶と比較して、現在得られているデータを正しいQ値に補正することが必要である。また、オリビンの減衰への水の効果を含水量の関数として決定するためには、含水量の多いオリビンを用いて研究する必要があるため、今まで研究対象となり得なかったさらに水の溶解度が高くなる高圧条件下での測定が有効である。測定セルの小型化を行っており、昨年度の1GPaに比べて、現状では3GPa程度の圧力を達成できている。圧力発生をさらに拡張していくことにより、多様な水の量の試料を準備する事で、Q値への水の効果をより精密に決定することを考えている。同時に高い含水量の天然オリビンは存在しないため、含水オリビン単結晶を合成する必要もある。一方で、高温での電気伝導度への水の効果を知るために、ワズレアイト、リングウッダイトHD相互拡散実験に引き続き、今後は含水オリビン単結晶でのHD相互拡散実験を行なっていく予定である。
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[Journal Article] High-pressure phase transitions in FeCr2O4 and structure analysis of new post-spinel FeCr2O4 and Fe2Cr2O5 phases with some meteoritical and petrological implications2014
Author(s)
T. Ishii, H. Kojitani, S. Tsukamoto, K. Fujino, D. Mori, Y. Inaguma, N. Tsujino, T. Yoshino, D. Yamazaki, Y. Higo, K. Funakoshi, M. Akaogi
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Journal Title
American Mineralogist
Volume: 403
Pages: 1788-1797
DOI
Peer Reviewed
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