2015 Fiscal Year Annual Research Report
大気の無い天体表面で何が起きているか:イトカワ試料詳細分析と宇宙風化研究の新展開
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24244088
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
野口 高明 九州大学, 基幹教育院, 教授 (40222195)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
日高 洋 広島大学, 理学研究科, 教授 (10208770)
木村 眞 茨城大学, 理学部, 教授 (20142226)
岡崎 隆司 九州大学, 理学研究院, 助教 (40372750)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 宇宙風化 / 太陽風 / 希ガス / 透過電子顕微鏡 / 希ガス同位体質量分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)第2回国際公募イトカワ試料の透過電子顕微鏡(TEM)観察:イトカワ試料の反応性は異常に高く,地球環境で反応が起きコンタミネーションによって試料が覆われた。それを平成26年度末から27年度初めに集束イオンビーム(FIB)加工で削り落とした。そして,4試料すべてを九州大学超顕微鏡解析研究センターのTEMで観察した。その結果,宇宙風化層の厚さは大きな違いが無いが,ソーラーフレアトラックの数密度と平均長さに相関があること,表面にマクロステップがあるものはソーラーフレアトラックがないことを見出した。希ガス同位体質量分析と組み合わせると,ソーラーフレアトラックの数密度と平均長さと太陽風起源の4Heと20Ne量には相関があること,マクロステップを持つ粒子は内部から希ガスが脱ガスしており高温を経験していること,宇宙風化層は100年程度で定常状態に到達することが判明した。 (2)太陽風模擬のプロトン及びHe+照射LLコンドライト隕石のTEM観察:(1)と同様に平成26年度末から27年度初めにFIB加工で削り落とした。そして,10試料すべてを九州大学超顕微鏡解析研究センターのTEMで観察した。照射期間と宇宙風化層の厚さの関係を鉱物ごとに調べた。 (3)アポロ15号回収の月レゴリス試料の電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)観察,TEM観察,希ガス同位体質量分析:アポロ15号のコア試料を使い,深さごとに粒子の表面形状のバリエーションをFE-SEMで観察し,深さ方向でそれら種類のバリエーションに変動があるか検討した。その結果にもとづいて,表面形態の違いによって希ガス同位体の含有量や同位体比にどのような変動が見られたかを明らかにした。また,主要な表面形態それぞれについて,表面付近の内部構造をTEM観察によって明らかにした。また,アポロ12号の月表面試料についてもFE-SEM観察を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
(1)国際公募イトカワ試料の分析について: 平成26年度に観察を行うはずであった第2回国際公募イトカワ試料のTEM観察は1年間遅れたが,完結することができた。また,希ガス同位体質量分析結果とあわせて,イトカワ試料が小惑星表面で太陽風に曝露されるだけでなく,加熱を経験するなど,予想以上に複雑な個々の履歴を持つことを明らかにすることができた。この結果については,昨年度JAXAで開催されたHayabusa 2015国際シンポジウムで発表すると共に,今年度6月末に横浜で開催されるGoldschmidt 2016国際シンポジウムで発表する予定である。遅れはほとんど取り戻せた。 (2)イオン照射試料の分析について:LLコンドライトの照射実験試料のTEM観察は(1)のイトカワ試料と同様に1年間遅れてしまったが,行うことができた。あと4-5試料観察すると観察は終了できるので,遅れは相当取り戻すことができた。 (3)月レゴリス試料の分析について:アポロ15号回収試料については,太陽風照射の環境について,かなり明らかにすることができた。アポロ12号試料については,FE-SEM観察を一通り行ったところである。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)国際公募イトカワ試料の分析について:今年度は第3回国際公募イトカワ試料のTEM観察と希ガス同位体質量分析を行う。希ガス同位体質量分析を行うために大気との接触時間をできる限り減らすため,昨年度末からグローブボックス内で微小なイトカワ粒子を取り扱うためのハンドリング器具の開発を行い,ハンドリング器具はほぼ完成した。これから6月上旬まで,試料受入のリハーサルを行い,6月後半から8月末までTEMおよび希ガス同位体質量分析を行う。 (2)イオン照射試料の分析について:LLコンドライト照射試料については,あと4-6試料,TEM観察試料を追加しTEM観察を終了する。FIBを使い,50×50×50ミクロンの試料を切り出し,希ガス同位体質量分析を行う。(1)と組み合わせて,宇宙風化層の形成期間を推定する。また,CMコンドライトの照射試料についても,5試料程度FIB加工し,TEM観察を行う。また,FIBを使い,50×50×50ミクロンの試料を切り出し,希ガス同位体質量分析を行う。 (3)月レゴリス試料の分析について:まだ,アポロ11号,14号,16号,17号の試料を持っており,この1年間で,できる限りFE-SEM観察を進める予定である。全試料の観察を終了sるのは年度内では難しいため,特に,月の宇宙風化で重要なものとされる,微小隕石の衝突に依って形成される蒸着層を持つ粒子表面の形態の特徴を明らかにすることを目標として,17号試料とその他1-2カ所の観察を行う計画である。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] Surface and internal structures of a space-weathered rim of an Itokawa regolith particle.2015
Author(s)
Matsumoto, T., Tsuchiyama, A., Miyake, A., Noguchi, T., Nakamura, M., Uesugi, K., Takeuchi, A., Suzuki, Y., and Nakaano, T.
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Journal Title
Icarus
Volume: 257
Pages: 230-238
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Mineralogy and noble gas isotopes of micrometeorites collected from Antarctic snow.2015
Author(s)
Okazaki, R., Noguchi, T., Tsujimoto, S., Tobimatsu, Y., Nakamura, T., Ebihara, M., Ito, S., Nagahara, H., Tachibana, S., Terada, K., and Yabuta, H.
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Journal Title
Earth Planet Space
Volume: 67
Pages: 90-106
DOI
Peer Reviewed
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