2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24244091
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
高井 研 独立行政法人海洋研究開発機構, 海洋・極限環境生物圏領域, プログラムディレクター (80359166)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 龍平 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10447419)
山本 正浩 独立行政法人海洋研究開発機構, 海洋・極限環境生物圏領域, 研究員 (60435849)
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Project Period (FY) |
2012-05-31 – 2015-03-31
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Keywords | 電気合成 / 独立栄養微生物 / 電子伝達 / 深海熱水 / 微生物活動 |
Research Abstract |
地球におけるすべての生物活動は、光励起あるいは酸化還元反応を介したエネルギー獲得によって支えられている。光合成と化学合成というエネルギー獲得様式のうち、化学合成エネルギー獲得は、細胞内外の化学物質そのものの酸化還元反応を介して起きる現象であると信じられてきた。近年、自然環境中で、金属硫化物や金属酸化物のナノ鉱物粒子を介在した電子伝達による遠隔的酸化還元反応が起きることが次々と証明されている。本研究提案は、この遠隔的酸化還元反応によって生じる電子を直接的なエネルギー源とする微生物によって支えられた深海・地殻内微生物生態系の存在を明らかにすること、さらにその化学環境を明らかにすることを目的とする。 当該年度には、計画通り、沖縄トラフ伊平屋北熱水フィールドの無人潜水機を用いた潜航調査および中央インド洋海嶺の熱水フィールドの有人潜水艇を用いた潜航調査で得られた極めて新鮮な熱水チムニーサンプルを用いて、電気合成独立栄養微生物の培養実験を行った。ポテンショガルバノスタットを用いた電気培養法により、500-1000mV 程度の電圧下で、陽極側に電子受容体を補強した培地中で、電子そのものをエネルギー源とする電気合成独立栄養微生物の培養を行ったが、明確な微生物の増殖は確認できなかった。本結果から、電気合成独立栄養微生物の増殖には、電極への微生物の吸着と微生物細胞表面に電子を受け取る導体が必要であることが考えられた。電極に天然硫化物チムニー片を使うことによって、電極への微生物の吸着が促進される事がわかったので、今後の培養実験の改善が期待できる。また対象微生物を鉄酸化菌に絞る事でより最適な培養条件を設定できることも分かった。直接的な電気合成独立栄養微生物の培養だけでなく、化学合成独立栄養微生物群集のバイオマスや生育速度に与える電気合成エネルギー代謝の影響評価実験についても準備を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
期間内に電気合成独立栄養微生物の培養の成功に至らなかったが、その理由についての条件が明確になり、次の培養条件の改良に至った。また当初の計画においても、初年度に電気合成独立栄養微生物の培養が成功しないことは十分考慮に入れており、初年度の結果を受けて、化学合成独立栄養微生物群集のバイオマスや生育速度に与える電気合成エネルギー代謝の影響評価実験の準備を行った。以上の理由により、本研究は概ね順調に進展したと結論づける。
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Strategy for Future Research Activity |
改良した条件下で、直接的な電気合成独立栄養微生物の培養を試みる。同時に、当初の計画に従い、化学合成独立栄養微生物群集のバイオマスや生育速度に与える電気合成エネルギー代謝の影響評価実験を行う。この研究計画においても、地質学的背景、物理・化学的性質の異なる熱水活動域から得られた極めて新鮮な熱水チムニーや金属酸化物マットサンプルを用いることによって、電気合成独立栄養微生物群集のバイオマスや生育速度、機能を、それぞれの熱水活動の環境条件で比較検討を行う。
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Research Products
(3 results)