2012 Fiscal Year Annual Research Report
ルテニウム錯体とポルフィリンを基盤とする高効率・高選択的光酸化触媒系の構築
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24245011
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Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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| Research Institution | University of Tsukuba |
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Principal Investigator |
小島 隆彦 筑波大学, 数理物質系, 教授 (20264012)
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| Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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| Keywords | ルテニウム錯体 / ポルフィリン / 高原子価オキソ錯体 / プロトン共役電子移動 / 光誘起電子移動 / 光触媒酸化反応 / 速度論解析 / 反応機構 |
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| Research Abstract |
１． 異なるピリジルアミン配位子を有する３種類のRu(IV)-オキソ錯体による、酸性緩衝溶液中(pH 1.8)での有機分子（主にアルコール）の酸化反応について、その反応機構を反応速度論に基づいて詳細に解析した。その結果、３つの錯体すべてについて、酸化反応の初期過程として、オキソ錯体－基質分子アダクトが形成されることがわかった。また、水素引き抜き過程の速度論的同位体効果が小さく、速度定数のC-H結合の結合解離エネルギーに対する依存性もほとんどないことがわかった。また、水素引き抜き過程の活性化エントロピーが負に大きな値を示した。これらの結果は、アダクト形成により、基質が酸化剤と強く相互作用し、遷移状態でのC-H結合とオキソ配位子との相互作用を容易にすることで、水素引き抜き反応の水素移動距離を短くしていることを示唆する。
２． Pd(II)-ポルフィリン錯体(PdPor)のメソ位にフラビン部位(Fl)を共有結合を経由して導入した２元系(Dyad; PdPor-Fl)を合成し、そのキャラクタリゼーションを分光学的測定、電気化学測定、X線結晶構造解析により行った。さらに、そのDyad 1におけるPdPorからFlへの分子内光誘起電子移動について、過渡吸収スペクトル測定に基づいてその光ダイナミクスを明らかにした。Dyadは、390 nmでの光励起により、励起１重項から電荷分離状態(Pd(Por・+)-Fl・-)が生成し、その寿命はPhCN中で20 psであった。それに対し、Sc3+存在下では、Fl部位にSc3+が結合することで電荷分離状態のエネルギー準位が低下し、三重項の電荷分離状態が生成することがわかった。また、その電荷分離寿命は0.11 sであった。この長寿命化は、電子移動における再配列エネルギーが増大し、逆電子移動速度が大きく減少したためと考えられる。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
水溶液中におけるルテニウム(IV)-オキソ錯体の基質酸化反応機構について、基質―オキソ錯体間のアダクト形成が、反応の遷移状態に対して重要な役割を演ずることを詳細な速度論的解析に基づいて明らかにすることができた。注目すべきは、アダクト形成により、C―H結合の結合解離エネルギーによらず、水素引き抜き反応が進行することを示した点である。一方、ポルフィリンを光増感部位とするポルフィリン(Por)―フラビン(Fl)ダイアッドを合成し、そのキャラクタリゼーションを行い、可視光励起におけるダイアッドの光ダイナミクスを明らかにした。特に、ポルフィリン部位にPd(II)イオンを挿入した、PdPor-Fl二元系では、Fl部位のSc3+との相互作用が生じ、PdPor部位からFl部位への光誘起電子移動により生成する電荷分離状態の寿命は、0.11秒に及ぶことが明らかとなった。以上のように、光酸化触媒系の構築にむけて、基礎的知見の蓄積は概ね順調に得られている。
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| Strategy for Future Research Activity |
１． 新規なサドル型水溶性ポルフィリンの合成を行い、それを光増感剤とし、ルテニウム錯体を酸化触媒とする光酸化触媒系の開発を行う。また、その光酸化触媒系の反応機構を、量子収率の決定、光誘起電子移動のダイナミクス、速度論解析に基づいて明らかにする。
２． サドル型ポルフィリンと水素結合が可能となる、配位子にカルボキシル基を導入したルテニウム錯体を合成し、キャラクタリゼーションを行う。そのルテニウム錯体とサドル型ポルフィリンの水素結合に基づく超分子形成を行い、そのキャラクタリゼーションを行う。
３． ポルフィリン―フラビン連結系のフラビン部位にルテニウム錯体を配位させ、ポルフィリン―フラビン―ルテニウム錯体３元系を構築し、そのキャラクタリゼーションを行う。さらに、その可視光励起における光電子移動ダイナミクスを明らかにする。
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Research Products
(51 results)
