2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24245019
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
岩澤 伸治 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (40168563)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 有機化学 / 合成化学 / 二酸化炭素固定化 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までの検討で、ロジウム錯体を触媒とする単純芳香族化合物の炭素-水素結合の直接カルボキシル化反応の開発を行い、ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)エタンを配位子とし、還元剤としてメチルアルミニウムメトキシドを用い、テトラメチル尿素を添加剤としてジメチルアセトアミド溶媒中で反応を行うことにより、良好な触媒回転数でカルボキシル化反応が進行することを見出している。本年度の研究では本反応の反応機構に関し詳細な検討を行った。その結果、本反応では炭素-水素結合の切断の段階が律速段階であり、反応系中の二酸化炭素濃度が反応効率に大きな影響を与えることを明らかにした。また、反応休止状態が塩化ロジウム(I)錯体であり、塩化物イオンの存在が本反応の効率に大きな影響を与えることを明らかにした。さらに前年度に続いて、アルケニルピラゾール誘導体を用いるアルケンの炭素-水素結合の直接カルボキシル化反応の基質一般性の拡大、並びに生成物のピラゾール部位の変換反応についてさまざまな検討を行い、各種の有用な合成中間体への簡便な変換法を確立することができた。 また、PSiPピンサー型パラジウム錯体を用いる不斉ヒドロカルボキシル化反応の開発について検討を行った。各種P-キラル錯体、並びにSi-キラル錯体の合成法を確立し、これを用いてアレン類のヒドロカルボキシル化反応のエナンチオ選択性についてさまざまな検討を行った結果、リン原子上の置換基のかさ高さが大きく異なるSi-キラル錯体を用いることにより、良好なエナンチオ選択性で目的のカルボキシル化体が得られることを見出した。本反応は各種のアレンに対して適用可能であり、またケイ素原子がキラル中心となる新しいタイプの配位子設計に基づき従来ほとんど例のないエナンチオ選択的な二酸化炭素固定化反応を実現したものとして興味深いものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ロジウム触媒を用いる反応の反応機構について詳細な検討を行い、興味深い知見を得ることができた。アルケンの炭素-水素結合のカルボキシル化反応に関する研究も順調に進展している。 キラルなピンサー型配位子の合成法を開発することができ、これまで例のほとんど例のないシリルキラル錯体の合成法を確立すると共にこれを用いた不斉ヒドロカルボキシル化反応に関し重要な知見をえることができた。これらの知見は今後の研究の展開に重要な基盤となるものである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、単純アルケン類の炭素-水素結合の直接カルボキシル化反応の展開を検討する。キラルなピンサー型錯体を用いるヒドロカルボキシル化反応については、光学収率の向上を目指して各種の配位子を合成する。さらに酸化的環化-β水素脱離によるアルケンからの不飽和カルボン酸合成、並びに光エネルギーを利用する反応についても検討を継続する。
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