2013 Fiscal Year Annual Research Report
触媒的官能基付加を基軸とする高原子効率変換反応の開発
Project/Area Number |
24245021
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
辻 康之 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30144330)
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Project Period (FY) |
2012-05-31 – 2015-03-31
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Keywords | 酸塩化物 / 付加反応 / 高選択的 |
Research Abstract |
これまで,アルデヒドのホルミル基がロジウムやコバルト錯体により活性化されることが知られているが決して容易な素反応ではない。このため触媒的なアルデヒドの付加反応(ヒドロアシル化反応)はその反応性および選択性が十分ではなく,現在もその大幅な反応改善のために活発な研究が続けられている。このような現状のもと,我々は,遷移金属中心との反応性が高く,容易に酸化的付加により活性化を受けることが知られている酸塩化物を用いた反応から研究に着手した。付加を受ける不飽和化合物には,最も反応性が高く,また反応において有用なα,β-不飽和化合物が生成物として得られるアルキン類を用いて反応を行った。反応において,金属アシル中間体の脱カルボニル反応がアルキンの挿入反応前に進行すると貴重なカルボニル基は失われ,アシル基の触媒的付加反応は達成されないことになる。画期的な触媒的官能基付加反応の達成のためには,これらの各触媒素反応を適切に制御する必要がある。このためには,用いる触媒中心金属の選択および触媒配位圏内環境を制御するための配位子の選択が極めて重要であった。反応においては用いる配位子の配位力,空間的な広がりなどが触媒反応に大きな影響を与えた。本反応においてはN-ヘテロ環カルベン配位子を配位子に用いることにより,脱カルボニル化反応が全く進行せず,高収率でベンゾイル基を保持した生成物を与えた。酸塩化物を用いる触媒的官能基付加反応は,これまでその実現に向けて挑戦が繰り返されてきたが,これまでに一般的な基質に対してカルボニル基を保持したまま触媒的付加反応に成功した例はなく,我々の研究成果が最初の成功であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
酸塩化物は反応性は高いものの,脱カルボニル化反応などその反応制御が困難なことが予想されたが,酸塩化物の酸化的付加に続く挿入反応を加速することにより,カルボニル基を失うことなく反応を達成することに成功した。また,反応の位置ならびに立体選択性は極めて高いことが明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はパラジウム触媒に挟み角の大きなキレート性ホスフィン配位子を用いることにより,ホルムアミド誘導体およびギ酸エステル誘導体の触媒的官能基付加反応の開発を行う。反応においては,従来のように外部からの一酸化炭素加圧の必要がない反応の開発を行う。挟み角の大きなホスフィン配位子はこれまでも特異的に高活性な触媒系をもたらしてきたが,本研究では主に骨格にXantphosを用い,リン上のフェニル基を種々修飾することにより触媒反応の達成を試みる。触媒反応の達成後は,一酸化炭素-アミンおよび一酸化炭素-アルコールによる触媒反応も試み,一酸化炭素を必要としない本触媒的官能基付加反応の特徴を際立たせる予定である。 さらに,N-カルバモイルクロリドを基質に用いる触媒的官能基付加反応を試みる。付加を受ける不飽和化合物としては,酸塩化物,ホルムアミド誘導体,ギ酸エステル誘導体の豊富な反応実績があるアルキン類を用いる。原子効率の高い官能基付加反応のさらなる開発を実施する。
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Research Products
(5 results)