2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24245027
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
木口 学 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (70313020)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 単分子化学 |
Research Abstract |
主に、室温での単分子ダイナミクスの解明、イオンワイヤの電子伝導特性を単分子レベルで解明すること、および単分子スイッチに関する研究を展開した。 室温で適用可能な単分子接合の振動分光計測の開発を行った。単分子接合では分子が金属ナノギャップ電極に捕捉されており、光増強場を利用するには最適な構造となっている。電気伝導度とラマンの同時計測システムを構築し、ギャップに捕らえられた単分子からのラマンシグナルを室温溶液中で観測することに成功した。電気伝導度と同期したラマンシグナルの強度変化、振動数シフトから、単分子接合における分子のダイナミクスを実時間in-situで観測することに世界で初めて成功した。 イオンワイヤの電子輸送特性については溶液中電気化学STMを用いて研究を行った。かご分子を用いることでイオンを狙った数、制御された形で積層出来ることに注目した。そこで、イオンを含む分子をかご内部に積層させた分子について、申請者の確立した単分子計測を適用した。詳細な電気伝導度計測と理論計算を組み合わせることで、イオンワイヤの電子輸送特性を単分子レベルで解明することに成功した。 単分子スイッチに関連し、共役分子のピラジンを用いた単分子接合の伝導度と電極間距離の変化を検討した。その結果、電極間距離を変調することで可逆的に2値の値をスイッチできることが明らかとなった。特にon状態ではdirectパイ-binding法の適用により、抵抗のほとんどない状態を達成した。さらに、電極金属と複数の接続部位を有するオリゴチオフェンを用いることで、3つの値を可逆的に示す多段階スイッチの開発にも成功した。 また、単分子接合の電子状態解明に向けて、熱起電力計測装置およびショットノイズ計測システムの立ち上げも行い、性能の評価などを行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
室温における単分子ダイナミクスの解明、イオンワイヤの電子輸送過程を単分子レベルで解明、また、多値の伝導度を示す単分子スイッチの作製に成功するなどの成果が得られたから。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度は特に熱起電力計測の確立を目指す。具体的には、分子接合の両側に温度差を与え、電極間の電圧を計測する事で、熱起電力計測を行う。MCBJ電極を酸化物の熱絶縁層の上にセットし、金属線の近くに小型のヒータおよびPt抵抗温度計をセットする。極低温において、両電極の温度差を最大30度程度まで変化させて、両電極間の電圧を計測する。熱起電力が正か負かでまずキャリヤが電子がホールか評価を行う。キャリヤが電子の場合、LUMOが伝導に関与しており、フェルミ準位はLUMOに近いことが分かる。熱起電力計測から求まるゼーベック係数(Z)は接合の透過率に関する情報を与える。理論計算と比較することで、フェルミ準位と伝導軌道のエネルギー差を決定する。
|