2013 Fiscal Year Annual Research Report
L10合金/ホイスラー合金積層電極を用いた高出力・低消費電力磁気抵抗素子の創製
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24246002
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大兼 幹彦 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50396454)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | スピンエレクトロニクス |
Research Abstract |
今年度は、MnAl層の磁気特性および表面平坦性の改善を目的として、組成、基板温度(Ts)、熱処理温度の最適化を行った。その結果、最適条件はArガス圧0.5 Pa、Mn組成56.9 at%、Ts = 250°Cであることが分かった。最適条件下において、MnAl層の飽和磁化Ms = 530 emu/cm3、磁気異方性エネルギーKu = 約10 Merg/cm3、表面平均粗さRa = 0.21 nmであり、前年度よりもさらに良質な薄膜を得ることに成功した。 さらに、最適化したMnAlの作製条件を用い、またMnAl/MgO界面に極薄強磁性体(X)を挿入したMnAl/X/MgO/CoFe構造の強磁性トンネル接合素子(MTJ)においてTMR効果を観測することに成功した。MnAlを電極に用いたMTJでTMR効果を観測したのは本研究が世界初である。TMR比は室温において約8%であったが、MTJ素子において磁気抵抗効果が観測されたことから、CPP-GMR素子への応用が可能であることが明らかとなった。 CPP-GMR素子については、今年度はホイスラー合金層の組成依存性について調査を行った。Co2MnSi, Co2(Fe0.4Mn0.6)Si, Co2FeSi, Co2Fe(Al0.5Si0.5)組成の電極を用いたCPP-GMR素子を作製し、磁気抵抗比を評価した。その結果、Co2(Fe0.4Mn0.6)Si組成において最大の磁気抵抗比が得られることが分かった。この組成で磁気抵抗比が大きかった要因は、ハーフメタル特性が優れていることによると考えられる。また、この組成は磁気緩和定数が0.003と非常に小さく、最終目標であるスピン注入磁化反転の実現に対しても非常にアドバンテージが大きい。さらに今年度は、Co2(Fe0.4Mn0.6)Siを良好な磁気特性を保持したまま、2 nmまで薄膜化することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の目標は、(1)L10-MnAl合金薄膜において薄膜の高品質化をおこなうこと、(2)L10-MnAl薄膜を用いた磁気抵抗素子を作製すること、(3)前年度に引き続きCPP-GMR素子の作製条件等を最適化すること、(4)MnAl/Co2(FeMn)Si積層膜を作製することであった。 L10-MnAl合金薄膜の作製については、系統的な実験によってほぼ最適条件に近づけたと考えている。また、最適化したMnAl電極を用いた強磁性トンネル接合において、世界で始めた磁気抵抗効果を観測することに成功した。これは、MnAl膜の高品質化によるものである。この成果については、論文発表を行い、また招待講演などでも広くアピールすることができた。今後、磁気抵抗素子においてさらに良好な特性を得るための、積層界面制御が残された課題である。 CPP-GMR素子については、ハーフメタルホイスラー合金層の組成に関して詳細に調査を行った。その結果、磁気抵抗効果は組成に対して大きく変化し、従来から良く知られているCo2MnSiホイスラー合金にFeをドープした、Co2(Fe0.4Mn0.6)Siホイスラー合金において大きな磁気抵抗効果が得られることが明らかとなった。この研究発表の後、他グループからも同様の実験結果が報告されており、この組成のホイスラー合金材料が高磁気抵抗比を得るのに極めて有用であることが証明されている。また、Co2(FeMn)Siホイスラー合金は磁気緩和定数の評価結果により、その値が0.003と非常に小さく、また薄膜化に対しても有用性の高い材料であることが明らかとなった。以上のことから、最終目標であるMnAl/Co2(Fe0.4Mn0.4)Si積層電極を用いた磁気抵抗素子の創成に向けて非常に有望な結果が得られており、研究は順調に進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終目的は、10ナノメートル以下の超微少サイズで利用可能な磁化の熱揺らぎ耐性を有しつつ、かつ、高出力および超低消費電力動作を実現するための、L10合金/ホイスラー合金積層電極を用いた面直通電型巨大磁気抵抗(CPP-GMR) 素子の創製である。24~25年度において、MnAl単層膜において、垂直磁気異方性定数が1×107 erg/cc以上、磁気緩和定数が0.01以下となる高性能材料を得ることには既に成功した。また、表面平坦性の改善により、磁気抵抗効果の観測に成功した。最終年度はMnAl垂直薄膜上に,Co2(Fe0.4Mn0.4)Siホイスラー合金層を積層した電極を用いたCPP-GMR素子を作製する。想定している層構成はMgO sub./Cr(30 nm)/Ag(30 nm)/MnAl(2 nm)/Co2(Fe0.4Mn0.6)Si (d nm)/Ag/ Co2(Fe0.4Mn0.6)Si (d nm)/MnAl(20 nm)/Ta(5 nm) (d = 2~4 nm)である。これまでに蓄積した素子作製技術を用いることで、高品位な素子が形成できると考えられる。最終的な目標として、高出力および超低消費電力動作のために、CPP-GMR素子において、室温における磁気抵抗比100%以上、および、スピン注入磁化反転電流密度1×106 A/cm2以下を実現することを掲げている。非常に高い目標であるが、これまでの2年間の成果をベースとし、さらに技術を発展させることで、目標を実現したいと考えている。さらに、基礎的なデータとしてMnAl/Co2(FeMn)Si積層膜の界面構造および磁気特性、磁気緩和定数の評価を系統的に行い、得られた素子特性に対するメカニズム考察や、将来の素子開発の指針を明確化することが最終年度の目標として、非常に重要と考えている。
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Research Products
(24 results)
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[Journal Article] Half-metal CPP GMR sensor for magnetic recording2014
Author(s)
Z. Diao, M. Chapline, Y. Zheng, C. Kaiser, A.G. Roy, C.J. Chien, C. C. Shang, Y. Ding, C. Yang, D. Mauri, Q. Leng, M. Pakala, M. Oogane, Y. Ando
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Journal Title
J. Magn. Magn. Mat.
Volume: 356
Pages: 73-81
DOI
Peer Reviewed
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