2012 Fiscal Year Annual Research Report
リソグラフィを用いずにナノ構造を作るための金型製造技術の開発
Project/Area Number |
24246027
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中尾 政之 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90242007)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長藤 圭介 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (50546231)
土屋 健介 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (80345173)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | マイクロ・ナノデバイス / 機械工作・生産工学 / 結晶成長 / エネルギー効率化 / 燃料電池 |
Research Abstract |
本研究では、リソグラフィ(感光性樹脂をパターン露光して2次元模様を転写する技術)を用いずに、数10nmから数μmのピッチや高さを有する凹凸の“ナノ構造”を形成する金型製造技術を開発する。具体的に、(a)金型全面に直径が可視光波長以下の針状組織を形成するためのナノワイヤの結晶成長技術、(b)上記針状組織を円錐組織に変形する成膜・エッチング技術、(c)金型全面に直径が可視光波長以下の円柱穴組織を形成するための通電孔生成を伴う陽極酸化技術、などである。平成24年度では、上記の金型を転写して、(1)DNA保持膜、(2)無反射膜、(3)燃料極、(4)沸騰伝熱面、等を評価した。 まず、(a)ナノワイヤの結晶成長のために、鉄のスパッタ薄膜を大気雰囲気下で375℃・20分間、加熱・酸化させて、直径200nm・長1μm程度のナノワイヤを多数、結晶成長できた。このナノワイヤ基板と染色体とを遠心分離機に入れ、染色体を遠心力で伸ばしながら、ナノワイヤ上に点接触で固定し、基板自体が(1)DNA保持膜として使えることを確かめた。さらに上記ナノワイヤ基板を(b)クロム成膜・エッチングして針状から円錐に変形させ、この円錐群をニッケルメッキ膜に反転してから、さらにシート状の樹脂に転写し、反射率0.8%、透過率82%の(2)無反射膜が作成できた。 また、アルミニウム薄膜を(c)陽極酸化し、次いで、この通電孔を有するアルミニウム酸化膜を“金型”として、下地膜のジルコニウムとイットリウムの金属薄膜を再度、陽極酸化し、ジルコニウム・イットリウム酸化膜の直径200nm程度の円柱群を作成できた。燃料電池用の(3)燃料極として供する予定である。また、陽極酸化膜をアルミニウムに転写した円柱群を(4)沸騰伝熱面に適用し、それがない平滑面に比べて核沸騰の泡が剥がれやすく、熱流束が2倍程度大きくなることを確かめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
概要で述べたように、(a)ナノワイヤの結晶成長、(b)針状組織を円錐組織に変形する成膜・エッチング、(c)通電孔を有する陽極酸化は本研究申請時の計画以上に順調に進展できた。 たとえば、(a)ナノワイヤの結晶成長では、これを(2)無反射膜に用いると、ワイヤの高さを揃えないと、散乱光が増えて透過光が白濁するので、結晶成長後に平板でプレスして高さを揃えるプロセスを開発した。また、(b)針状組織を円錐組織に変形する成膜・エッチングでは、当初、クロム成膜後に、CHF3でエッチングする2工程のプロセスを用いていたが、水素ガスで酸化鉄のナノワイヤを還元しながら円錐組織に変形させる、1工程のプロセスを開発した。さらに、(c)通電孔を有する陽極酸化では、上記と同様に(2)無反射膜に用いるときに、通電孔の位置を整列させないと、散乱光が増えて白濁化するので、予めピラミッド状の突起を整列させたシリコン基板をアルミニウム薄膜に押し付けて、転写穴を基点に通電孔を発生させることで、結果的に整列した通電孔を作成した。 また、申請者は付帯技術として、ロールによるナノインプリント技術を進展させた。つまり、上記のナノ構造を平板に作成した後、ニッケルメッキで転写し、さらにメッキで0.3mmまで厚くしてからそれを離型した後に、ロール状に丸めて金型として供し、プレスでなく、ロールでナノプリントできるようにした。ロール金型で転写すると、金型は線状に被転写物に当たるので、小さな力でしかも短時間で転写・離型しやすくなる。この転写技術の開発によって、(2)無反射膜や(4)沸騰伝熱面のような製品が容易に試作・評価できるようになり、その成果が本研究の金型製作技術にフィードバックしやすくなった。 本研究助成金によって試行錯誤が実行でき、確実に多くの新規技術を開発できた。このため、上述したように計画以上に順調に進展と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では上述したように計画以上の進展できたが、それでも申請時の計画を保留・変更した技術もある。 たとえば、本研究申請時では(3)燃料電池の燃料膜のために、(c)陽極酸化で作成した円柱穴の金型の中に、ジルコニウム・イットリウム酸化膜(安定化ジルコニア)のスラリーを入れて、その円柱構造を転写することを計画したが、円柱穴が深すぎてスラリーを離型できなかった。そこで今年度は、計画変更して再陽極酸化で、安定化ジルコニアの円柱構造を作った。それでも今年度の再陽極酸化膜はいまだ200nmよりも高い円柱にならず、実際は半円球であった。 また、本研究申請時には(d)通電孔を円柱から円錐に変形するエッチング、(e)球を平面上に固定させるメッキも計画していたが、試行しただけで保留した。なぜならば、同じく本研究申請時に計画していた(5)EL膜の光取出し膜を作成したが、円柱でも光取り出し効率が平板に比べて1.8~1.9と高く、円錐や半円球と同等だったためである。 実際は、金型形状よりは、成形形状の影響が大きかった。プレス成形を行えば、加熱・変形・冷却・離型のプロセスは数分と長くなるが、形状転写率(たとえば金型の円錐形状の高さと被転写物のそれの比)は95%と高かった。しかし、低生産効率は上述の製品では致命的な欠点になるため、申請者はロール成形に変更し、数m/分程度と高速でシートに転写できた。しかし、シートとロールとの接線近傍で瞬時に加熱・冷却するので、形状転写率は80%程度といまだに小さい。そこで今後は、ニッケルメッキのロール金型表面にダイヤモンドライクカーボンを成膜し、接線上にスキャンするレーザ光を、その膜だけに吸収させてシートを瞬間加熱させる技術を試みる。 このように、今後は、スラリー離型容易な表面処理技術、再陽極酸化技術、ダイヤモンドライクカーボンの成膜技術を計画に加えて、研究を推進する。
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Research Products
(11 results)