2012 Fiscal Year Annual Research Report
電気粘着効果を発現する機能性表面の開発と極限環境保持機構への応用
Project/Area Number |
24246029
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
青山 藤詞郎 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (70129302)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柿沼 康弘 慶應義塾大学, 理工学部, 准教授 (70407146)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 半導体製造プロセス / 精密位置決め / 機能性エラストマ / 保持機構 / 電気粘着効果 |
Research Abstract |
本研究では,半導体製造プロセスに必要なウェハ保持や機械加工における薄肉工作物保持のための高速着脱可能な無歪み・無荷重固定機構の実現を目的として,電気粘着機能表面の開発を行うことを目的としている. 平成24年度は当初の計画通り,①電気粘着効果が発現する,エラストマを含浸させた凸形状を有する3次元微細構造体の提案②走査型プローブ顕微鏡による電気粘着表面の観察および局所的な表面特性の計測と電気粘着効果の生じやすい構造体の検討,に取り組んだ. ①に関しては,基板上に傾斜した微細な支柱を3次元の編目状に配置した構造体において,支柱の格子点が表面に分布するように設計することで,表面に大きな電界勾配を付与できることを,2次元の電場解析により示した.この結果に基づき,多重裏面露光法により3次元の微細編目構造を作り,これにエラストマを含浸させた電気粘着表面を提案した.実際に製作したところ格子点状に規則的に分布する電気粘着現象を確認した. ②に関しては,従来の電気粘着ゲルと,微細構造体を構成する柱部分の直径や隣接する柱同士の間隔等のパラメータを変更した複数の電気粘着表面を用意し,局所的な表面観察および表面特性の解析を実験的に行った.3次元微細編目構造を用いた電気粘着表面は格子点上で規則的に粘着が生じ,構造パラメータを変更することで性能を調整できることを示したが,単位面積あたりの発生保持力は小さいことが明らかになった.一方で,従来の電気粘着ゲルは電場印加時に粘着する領域が不規則で,その領域も少ないにも関わらず,高い保持力が発生した.この原因を3次元の電場解析により明らかにする計画である.また,平成24年度の計画の一つとして挙げた真空中での電気粘着現象の観察に関して,当初予定していた真空用ファイバスコープでは十分な観察できないことが明らかとなり,計画を変更して,真空観察装置を設計・製作中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画していた真空中での電気粘着現象の観察に関して,実施できなかったことが理由である.予定していた真空用ファイバースコープに加え,様々な種類のファイバースコープを試験的に評価したが,真空中で使用可能でありかつ十分に表面を拡大して高精度な観察を実現することができなかった.このために,真空容器にガラス窓をつけて大気下で,マイクロスコープにより観察する計画に変更した.具体的には,ガラス窓にITO膜を施し,これを電極にして電気粘着表面と電極界面の現象を観察する.ガラスの厚みを極力薄くする必要があり,この装置の設計にかなりの時間を要したが,現在設計は完了し,製作に移っている.平成25年度の前半で真空中での電気粘着現象の観察実験を行う計画で,この遅れは取り戻すことが可能である.この点を除けば,概ね順調に研究は進んでいる.
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は,真空下での電気粘着現象の観察と電場-構造連成解析を駆使して,表面構造と電気粘着効果の物理関係を明らかにする.これに基づき微細表面構造による電気粘着機能性表面を開発する. 真空下での電気粘着現象を観察するための観察装置は,6月末に完成する予定で,これを用いて大気下と真空下での電気粘着現象の観察を行い,真空下で電気粘着現象が弱まる原因について調べる.また,数値シミュレーションと実験を重ねて,微細凹凸面とエラストマからなる構造体と電気粘着効果の物理的関係を明らかにして,電気粘着効果を示す構造体の支配因子(突起形状,突起先端-ゲル表面距離,材料特性など)を特定する.数値シミュレーションでは,繰り返し計算による3次元電磁場-構造連成解析を用いることで,より実環境に近い条件を実現した上で,表面構造と電気粘着現象の関係を調べる計画である,実験によるアプローチとしては,平成24年度に購入した走査型プローブ顕微鏡による表面特性解析を引き続き行う.これらの結果に基づき,高い電気粘着効果が得られる微細表面構造体を製作して,高性能な電気粘着機能性表面を創成する.
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Research Products
(2 results)