2014 Fiscal Year Annual Research Report
電気粘着効果を発現する機能性表面の開発と極限環境保持機構への応用
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24246029
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
青山 藤詞郎 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (70129302)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柿沼 康弘 慶應義塾大学, 理工学部, 准教授 (70407146)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 機能性表面 / 機能性材料 / トライボロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,半導体製造プロセスに必要なウェハ保持や機械加工における薄肉工作物保持のための高速着脱可能な無歪み・無荷重固定機構の実現を目的として,電気粘着機能表面の開発を行うことを目的としている.前年度の研究成果を踏まえ,平成26年度は当初の計画通り,①3次元微細構造の製作手法の検討および電気粘着機能性表面の高性能化,②高真空環境かつ高温環境下における電気粘着機能性表面の印加電界と保持力の関係,着脱の電気応答性についての評価,③片面に陽極と陰極を配置した片側電極構造を用いてガラス基板などの絶縁体対象物を保持する場合の最適電極パターンの特定,④電気粘着表面に用いるエラストマ材として,真空環境の汚染が少ないと考えられるブタジエン系への代替に取り組んだ.①に関しては,マスク基板上に多重裏面露光法で形成した微細構造シートを,マスク基板より剥離して,形状の整った裏面側を利用することで高性能化,性能の安定化できることがわかった.②に関して,高真空下で電気粘着効果を観察する装置を製作し,観察実験を通して評価を行った.大気圧下よりも真空下では電場印加時の粘着面積が少なくなり,また電場除去時に粘着力が解放されにくいことがわかった.③に関して,電気粘着表面のための片側電極を設計製作し,実験により性能評価を行った.平行平板の対向電極と比較して,性能は1/2に低下するが,固定対象物に配線を施すことなく,半導体でも固定可能であることがわかった.実験により,電極幅と間隔が電気粘着効果に与える影響は確認できたが,最適な電極パターンに関してはシミュレーションを駆使して,引き続き検討を重ねていく計画である.④に関して,ブタジエンへの代替は可能であることを確認したが,時間経過に伴いブタジエンの性能変化が生じ,電気粘着効果に悪影響を及ぼすことがわかった.これに関しては他の材料に関しても検討を重ねる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度に計画した課題に関しては,全て予定通り取り組み,各実施項目に関して課題抽出も含め十分な研究成果を得ることができた.高性能化に関しては,前年度に確立した微細構造の製造方法に改良を加え,より高精度な微細表面構造を与えることで電気粘着表面の高性能化に成功した.真空環境下での性能評価については,大気から真空装置内を観察する真空観察装置の開発により真空中における電気粘着現象の可視化に成功し,真空下での性能低下が生じることを明らかにした.更に片側電極を適用した電気粘着表面を開発し,対象物に配線することなく電気粘着効果を得ることができた.ただし従来の対向電極と比較して,最適と考えられた片側電極パターンを適用しても性能は半減したことから,より精緻な電場解析シミュレーションにより,性能向上を図る計画である.真空対応の材料として有力視していたブタジエンにおいて性能低下が著しかった点は想定外であったが,化学メーカの協力のもと他のエラストマ材の適用をすでに計画している.
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる平成27年度は,電気粘着機能性表面を真空プロセスの保持機構に応用することを考え,より適した片側電極パターンの検討や保持機構の設計開発を行い,着脱性や保持力のなどの性能評価を行うことで,実用可能性を検討する.精緻な電場解析を通して片側電極を適用した電気粘着表面の性能向上を図り,シリコーンに代わる真空対応のエラストマ材候補を評価し,適用する材料を決定する.また,真空中での基板保持機構を設計開発し,ウェハ基板やガラス基板を用いて保持性能を中心に基礎的評価を実施する.更に,XPSやEDXなどを用いて表面の元素分析を行うことで,保持対象物の汚染レベルを評価し,真空プロセスの保持機構としての実用可能性を検討する.上記で得られる結果を含めて,電気粘着保持機構に関する研究成果をまとめる.
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Research Products
(4 results)