2013 Fiscal Year Annual Research Report
強誘電体を用いた巨大分極接合界面のサイエンスとそのパワーエレクトロニクス応用
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24246049
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
藤村 紀文 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50199361)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉村 武 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30405344)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | パワーデバイス / 強誘電体 / Ga2O3 / 大気圧プラズマ |
Research Abstract |
強誘電体薄膜をゲート絶縁膜として用いた強誘電体ゲート型パワーMOSFET を試作し、その物性評価、デバイス評価などの実験結果と、強誘電体/極性半導体ヘテロ構造における応力場・分極場の相互作用の理論的解析とをリンクさせることによって、強誘電体ゲート型パワーMOSFET の設計指針と駆動原理を検討し、「巨大分極エレクトロニクス」と言うべき新分野の理論体系を構築することを目標とした。 1)パワーMOSFET素子を駆動するためのパワーデバイス用強誘電体としてBiFeO3を開発した。正方晶歪の大きさを0-4%の間で制御することが可能になり、正方晶とみなせるBiFeO3薄膜を得ることができ、d33圧電定数が60pm/Vから90pm/Vへと向上するなど本物質が有する巨大な分極をデバイス中で取り出すための準備が整った。またデバイス作製に向けて、ウエットプロセスによるBiFeO3薄膜の微細加工技術も確立した。 2)大気圧プラズマ酸窒化を用いてSi表面に低界面準位の絶縁膜を形成することに成功し、強誘電体/パワー半導体MOS界面におけるトラップ準位などの低減に新しい道を拓いた。 3)反転可能な自発分極を有する強誘電体と反転できない自発分極を有する半導体の接合界面を作製し、自発分極が半導体のキャリア輸送特性に及ぼす影響を精査した。半導体層のみの時の移動度に比べて、強誘電体層を積層した後の蓄積状態における移動度が増加することを見出した。キャリア散乱機構の解析の結果から、強誘電体の自発分極による強い閉じ込め効果に起因していることが示唆された。またノンドープのワイドバンドギャップ半導体(ZnO)上で、強誘電体の自発分極が反転稼働であり、それに伴ったキャリア変調が生じることを確認した。これらの知見から、応力場・ひずみ場・電位分布・分極分布・キャリア分布の解析という、非常に複雑ではあるが極めて重要な問題への理論展開にむけて大きな第一歩を踏み出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
エネルギー利用の飛躍的な高効率化を実現するため、巨大分極/半導体界面を用いた以下の特徴を有する新奇なパワーデバイスの開発を提案し、1)強誘電体のワイドバンドギャップ半導体上へのエピタキシャル成長と強誘電体の巨大分極を用いたワイドギャップ半導体の界面電荷制御、2)大気圧プラズマ窒化を用いた界面準位の低減、3)巨大分極/半導体界面のポテンシャル緩和機構の解明、それぞれの項目に対して大きな進展が確認された。 1)パワー半導体の界面電荷制御に関しては、ワードバンドギャップ半導体のキャリア変調を行うための強誘電体として、巨大分極を有するBiFeO3薄膜の作製に取り組み、本物質の最大の問題点であった大きなリーク電流の低減に関して、ターゲットの高密度化と装置の改造によって達成した。また、正方晶歪の大きさを0-4%の間で制御することが可能になり、正方晶とみなせるBiFeO3薄膜を得ることに成功し、100uC/cm2にも及ぶ巨大分極を得ることに成功した。また、そのワイドギャップ半導体上への製膜を試み、製膜条件を確立した。 2)大気圧プラズマ酸窒化を用いてSi表面に低界面準位の絶縁膜を形成することに成功した。その手法を、強誘電体/パワー半導体MOS界面へと展開した。 3)反転可能な自発分極を有する強誘電体と反転できない自発分極を有する半導体の接合界面を作製し、自発分極が半導体のキャリア輸送特性に及ぼす影響を精査した。半導体層のみの時の移動度に比べて、強誘電体層を積層した後の蓄積状態における移動度が増加することを見出した。キャリア散乱機構の解析の結果から、強誘電体の自発分極による強い閉じ込め効果に起因していることが示唆された。強誘電体/極性半導体ヘテロ構造におけるバンドの接合状態を放射光XPSにより調べる方法を確立し、さらに応力場・ひずみ場・電位分布・分極分布・キャリア分布の解析という、理論的方法論の構築は計画通りに進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
1.ワイドバンドギャップ半導体としては現在既に実用化が進んでいるSiCから「国産の」高品質基板が入手でき産業的により重要度が高いZnO、Ga2O3へと研究の中心をシフトさせる。また、強誘電体としては、大きな自発分極量を有する物質が望ましいので、100uC/cm2 という巨大な自発分極を有する非鉛強誘電体であるBiFeO3を中心に検討する。BiFeO3 は500℃以下の比較的低い温度で薄膜成長できることが明らかになっているが、半導体との界面反応を抑えるためにさらに低温でBiFeO3 薄膜を成長させることを試みる。産業的にはまだ先のデバイスとして位置づけられるダイヤモンド、特にハイドープダイヤモンドは「巨大分極エレクトロニクス」の格好の研究対象である。従って、最終年度も研究対象とする。 2.大気圧プラズマ界面窒化処理による界面準位の低減を試みるとともに、C-V、I-V測定とそれらのパルス電界印加、すなわち等温容量過渡分光(ICTS)特性やプローブ顕微鏡を用いた表面ポテンシャル評価など強誘電体の分極スイッチングに伴うキャリアダイナミクスを実験的に詳細に評価する。これらは、強誘電体とワイドバンドギャップ半導体との間のバンドオフセットの影響が大きいため、放射光を用いたXPS測定と合わせてその実験結果を解析する。この様な評価は、モット絶縁体であるBiFeO3 強誘電体薄膜のパワーデバイス応用にとって極めて重要な知見が得られるものと期待している。 3.上記の試料と物性評価の結果を用いて、強誘電体に電界を印可した際に生じる強誘電性自発分極や圧電歪み、その分極反転挙動のダイナミクス、強誘電体特有の微細構造である分極ドメインを取り込んだ素子モデルを構築し、強誘電体・圧電体の熱電気弾性問題について研究を進める。
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Research Products
(54 results)
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[Presentation] 常圧リモートプラズマCVDを用いたZnO薄膜の成長2014
Author(s)
Y. Nose, T. Kiguchi, T. Nakamura, T. Yoshimura, A. Ashida, T. Uehara, N. Fujimura
Organizer
第61回応用物理学会春季学術講演会
Place of Presentation
神奈川 青山学院大学
Year and Date
20140317-20140320
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[Presentation] 大気圧プラズマCVDを用いたZnO薄膜の成長機構2013
Author(s)
Y. Nose , T. Nakamura, T. Yoshimura , A. Ashida , T. Uehara , N. Fujimura
Organizer
2013年 第74回応用物理学会秋季学術講演会
Place of Presentation
同志社大学京田辺キャンパス
Year and Date
20130916-20130920
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