2012 Fiscal Year Annual Research Report
ルミネッセンス計測に基づく流砂系土砂移動と歴史津波の推定手法の構築
Project/Area Number |
24246085
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 愼司 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90170753)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田島 芳満 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20420242)
劉 海江 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10600679)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | ルミネッセンス計測 / 堆積過程 / 年代分析 / 歴史津波 |
Research Abstract |
平成24年度は、流砂系表層堆積物の採取と一部の試料に対するルミネッセンス計測を実施した。さらに、砂粒子露光モデルを構築し、露光率の評価を介して海岸線遡上帯の浜漂砂におけるルミネッセンス計測結果の定量的な活用手法を構築した。 海岸侵食が深刻化している宮城県仙台平野荒浜地区とリアス式海岸のポケットビーチである岩手県吉里吉里地区において、地中探査レーダーによる調査を実施し、堆積構造を把握した。どちらの地点も2011年東北地方太平洋沖地震津波の浸水区域であり、流砂系堆積物に加えて、津波堆積物も採取できるものと期待された。長さ約2mのハンディジオスライサを鉛直に貫入させることにより、数年から数千年の時間スケールの土砂移動過程を反映する堆積物コアを採取することができた。コア試料は軟X線撮影装置などで堆積構造を分析した後、鉛直方向に細かくスライスしたうえでレーザ粒度計で粒径分布を計測した。さらに、C14年代分析により、どちらも3,000年程度の堆積物であることを確認した。さらに、スライスした各層から暗室にて薬品処理・重液分離などにより石英・長石粒子を抽出し、ルミネッセンス計測用の試料を調製した。試料の一部を既有のルミネッセンス分析器により計測し、これらをC14年代分析結果と比較することにより、歴史津波の年代同定におけるルミネッセンス分析の有用性を検討した。 沿岸における砂粒子露光モデルに関しては、沿岸漂砂の移動過程のモデル化に整合した露光モデルを構築した。同モデルを適用すれば、従来定性的な議論のみであったルミネッセンス計測結果の解釈において、土砂移動量の定量的な評価を行うことが可能となる。モデルの内容と妥当性に関して、国際学術雑誌に投稿中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、研究の対象地点の抽出、堆積物コア試料採取計画の立案、ルミネッセンス計測のための準備が当初の研究計画であったが、調査結果を全国的にレビューすることにより、堆積物コアの採取歴に関する有用な情報を入手でき、調査対象地点を早い段階で絞り込むことができた。これにより、地中レーダー調査や堆積物コア採取を効率的に実施することができた。これらの地点は、2011年東北地方太平洋沖地震津波の浸水域内であるため、本研究の後半で予定している津波堆積物についても有益な試料を採取することができた。また、沿岸における砂粒子露光モデルに関しては、沿岸漂砂の移動過程を従来の知見に整合する形でモデル化し、露光確率を考慮したルミネッセンス強度減衰モデルを構築した。同モデルを適用することにより、従来定性的な議論のみであったルミネッセンス計測結果の解釈において、土砂移動量の定量的な評価を行うことが可能となった。モデルの内容と妥当性に関して、天竜川およびナイル川を対象にして議論した論文を国際学術雑誌に投稿中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
既有の分析器のみでは効率的な計測が不可能であるため、当初の申請書に記載の通り、平成25年度において、計測器の新規導入を検討する。強いβ線源を装備するRI機器であるので、購入および機器設置に関して多くの許認可を得る必要がある。平成25年度中の計測器導入に向けて資料の作成を開始した。 今後は、平成25年度に導入するルミネッセンス計測器も活用することにより、計測の効率を高め、新しい土砂フラックス推定技術の開発と歴史津波の同定に向けた分析を進める。 砂粒子の露光モデルを申請者らがこれまでに開発してきた土砂移動数値モデルと結合することにより、土砂フラックス推定精度を飛躍的に向上させる。これを津波堆積物の分析に応用し、信頼度の高い歴史津波の同定技術として確立する。
|
Research Products
(2 results)