2012 Fiscal Year Annual Research Report
雨天時下水道由来の健康リスク因子の起源解析に基づく汚染制御の高度化
Project/Area Number |
24246090
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
古米 弘明 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40173546)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片山 浩之 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00302779)
栗栖 太 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30312979)
春日 郁朗 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20431794)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 環境質定量化・予測 / 水質汚濁・土壌汚染防止・浄化 / 土木環境システム / モデル化 / ウイルス |
Research Abstract |
本研究では、合流式下水道雨天時越流水由来の汚濁負荷が都市沿岸域の水質に及ぼす影響を定量評価し、健康リスク因子の制御・管理のための下水道システムの効率的運用や汚濁負荷削減対策を高度化することを目指している。親水空間における病原微生物の挙動に着目して、糞便汚染の起源を明確にすること、雨天時下水道システムから排出される汚濁流出負荷量を定量評価すること、沿岸域の水質予測を行うことを具体的な目的としている。 昨年度、雨天時越流水の水質調査を実施予定であったが、地元下水道施設において濁度計および電気伝導度計などのセンサ類を設置するに至っておらず、現状では近隣市とも連携協議を進めている。なお、お台場周辺域における雨天後調査は、越流水の水質調査実施が延期していることから保留とした。 越流水と環境水中の病原微生物解析と糞便汚染の起源解析に関しては、雨天時下水中の微生物の起源として、管路内堆積物とし尿を含む生下水とを区別するために、管路内堆積物由来とヒト糞便由来の微生物指標の整理を行った。糞便由来の腸内細菌として大腸菌やBacteroides属細菌等の定量PCR条件の整理を行い、実試料を分析した結果、下水処理過程における腸内細菌ごとに除去率に違いがあることが明らかになった。 雨天時下水道汚濁流出の分布型モデル解析と沿岸域水質予測に関しては、新河岸排水区を対象に年間を通じた雨天時越流挙動の類型化を行い、降雨特性に応じた汚濁負荷量を推定する手順を確立した。また、隅田川などからの汚濁負荷を考慮した解析が可能なように水質予測モデルの拡張を完了させた。都市河川からの汚濁負荷を考慮して降雨後における大腸菌濃度の時空間分布を計算した結果、品川沖から羽田沖まで汚染水域が広がること、お台場における大腸菌濃度変動は、降雨直後には目黒川からの、数日後からは隅田川からの流入負荷の影響を強く受けていることが推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
我々の研究グループは、合流式下水道からの雨天時汚濁流出ダイナミクスに関する研究成果を有していることから、これを基礎に1)受水域におけるリスク因子の挙動のための数値解析手法の精度向上、2)雨天時の汚濁負荷量と負荷発生源の寄与度の把握、3)親水空間での健康リスク評価、4)リスク低減方策の提案、などを行うことが重要な達成度評価の項目である。 1)と2)に関しては、沿岸域に位置するポンプ場の汚濁発生源だけでなく、自然吐口からの越流水を受ける隅田川などの都市河川を通じて流入する汚濁負荷にも着目して、水質予測が可能なモデル構築がほぼ完了していること、分布型都市雨水流出モデルを駆使して雨天時の汚濁負荷量を簡易に推定する手法を確立していることなど、項目4)につながる準備ができており順調に目標達成に向けて研究が進展している。ただし、雨天時下水・越流水水質調査及び雨天時後のお台場周辺域の水質調査に関しては、想定通りの成果が初年度に得られていない。しかしながら、次年度での調査実施の目途は立っている。 3)に関しては、宿主特異的なBacteroidales の16S rRNA 遺伝子情報を活用した糞便汚染の起源解析を詳細に行うことを進めており、健康リスク因子の雨天時汚濁現象時の発生源や寄与を推測する方法論の基礎固めが進んでいる。これは、同時に2)の負荷発生源の寄与度の把握にも貢献できる成果を生み出すことが期待される。今後は、1)における大腸菌濃度の予測精度が向上すれば、親水空間での健康リスク評価へと進展可能となる。 研究成果の発表は、国際雑誌1篇(印刷予定)、国際会議2件、国内会議1件であり、研究は順調に進行している。特に、Water and Environment Technology Conference 2012では、発表者である博士課程学生が優秀発表賞を受賞した。
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Strategy for Future Research Activity |
1)雨天時下水・越流水水質調査及び雨天時後のお台場周辺域の水質調査:流入下水の水質変動調査を横浜市にて行う目途が立ってきていることから、雨天時下水の連続水質観測データの取得を目指す。アンモニア濃度、電気伝導度、濁度測定のためにセンサを設置するとともに、自動採水器による雨天時下水の入手も行い、センサでは把握できない腸内細菌群などの水質項目を分析する。また、お台場を健康リスク評価地点と定め、その周辺の雨天時越流水の影響を受ける沿岸域において、雨天後の水質調査を実施する予定である。 2)雨天時下水中と環境水中の病原微生物解析と糞便汚染の起源解析:一般的な水質指標に加え、腸管系ウイルス類,糞便指標細菌などを定量的に測定する体制が整いつつあることから、詳細なFecal Source Trackingを行う。ウイルスマーカーとしては、宿主特異性のあるコブウイルスと植物ウイルスのPMMoVを糞便汚染指標として、人及び動物由来の糞便汚染を特異的に検出することを試みる。また、糞便由来の腸内細菌であるBacteroides属細菌の定量PCR解析を雨天時下水に対して適用して、CSO発生時の糞便汚染源に関する情報を得る。新規に導入されたキャピラリーシークエンサーにより、多検体試料の遺伝子配列のフラグメント解析も行う。 3)雨天時下水道汚濁流負荷流出量の評価と沿岸域水質予測:排水区単位において年間を通じた雨天時越流挙動の類型化をもとに、降雨特性に応じて汚濁負荷量を簡易に推定可能となったことから、その手法を元に、雨天時における汚濁負荷流出のシナリオを作成する。一方、水質予測シミュレーションモデルにおいては、自然吐口からの汚濁負荷を受けている都市河川からの汚濁負荷流入量を考慮した上で、合流改善対策としての雨水滞水池の設置、雨水浸透貯留、管内貯留など様々なシナリオをモデルに組み込んだ数値計算を進める。
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Research Products
(3 results)