2012 Fiscal Year Annual Research Report
建築物に作用する津波荷重の定量化とその耐津波性能の向上に関する総合的研究
Project/Area Number |
24246093
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中埜 良昭 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (10212094)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
有川 太郎 独立行政法人港湾空港技術研究所, 海洋研究領域, 上席研究員 (00344317)
高橋 典之 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60401270)
崔 琥 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (40512009)
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Project Period (FY) |
2012-10-31 – 2015-03-31
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Keywords | 耐津波性能 / 漂流物 / 衝突 / 応答 / 荷重評価 |
Research Abstract |
平成24年度の本研究課題で実施した研究は、主として下記の2点である。 ①小型水槽を用いた津波漂流物の衝突実験及び解析 アクリル製の小型水槽を用いて、6階建て津波避難ビルを模した鋼製試験体を津波漂流物を模した模型へと衝突させる衝突実験を実施し、衝突力、衝突時間及びそれらによる建物の応答を検討した。その結果、衝突時間は衝突速度に因らないこと、衝突速度および漂流物質量が増大し、衝突力の力積が増大すると、建物の衝突による変位も増大すること、および衝突時間などの条件が変化しても衝突力の力積が一定である限り、応答変形も一定であることが確認された。また、本実験に類似の状況を想定した衝突解析では、浸水深および水深係数が増大すると、建物の応答塑性率が1階部分において大きくなること、さらにその状態において300t程度の漂流物の衝突を受けると1階及び高層階において応答塑性率が1を超え、降伏する場合があることを確認した。 ②津波漂流物の衝突により破壊した鉄筋コンクリート造柱の残存軸耐力評価実験 上記の衝突実験及び衝突解析に基づき、漂流物の衝突により破壊が生じた柱の軸力支持能力が、津波避難ビルの安全性検討のためには不可欠であるとの認識に至った。津波波力および漂流物の衝突に対しては、建物全体の水平抵抗力により抵抗可能であったとしても、柱等に局所的な破壊が生じた場合にはその軸耐力が維持できることは最低限保証されるべきである。 以上の認識に基づき、破壊した鉄筋コンクリート造柱を想定した柱試験体の残存軸耐力評価実験を行った。試験体は漂流物の衝突により柱内部のコンクリートが破壊されかつ津波により流失した状態(柱の軸力支持能力を検討する上では最悪の状態)を想定し、露出した主筋のみの試験体を作成した。試験体に軸力に相当する錘を設置し水平変形を与えたところ、早期に軸崩壊した試験体が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では建築物に作用する津波荷重だけでなく、建築物の耐津波性能の向上に関する総合的研究を行うことを主旨としているため、検討が必要な課題が多岐に渡っており、また、研究実績の概要の欄で述べた柱の残存軸耐力評価実験のように、研究の進捗に伴い新たな課題が生じることもあった。 これらの、申請当初には予期しえなかったが目的達成のためには必要となる課題の解決に時間を費やす必要があったため、現段階の達成度としてはやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、アクリル製水路(幅1m程度)および1/30スケールの建物模型ならびに漂流物模型を用いた、より実大に近い状況を模擬した衝突実験を行う。実験は漂流物質量や流速等をパラメータとした複数ケースについて行う予定であるが、それでも不足する条件下での衝突評価は解析により補完する予定である。以上の実験及び解析により、津波漂流物が衝突した際の外力評価法を波力と併せて一般的な形で提示する。また、柱の残存軸耐力評価についても継続して実施していく予定である。
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Research Products
(3 results)