2013 Fiscal Year Annual Research Report
ステンレス鋼におけるMnS介在物起点の孔食発生機構の解明と高耐食化の新原理の創出
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24246118
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
原 信義 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40111257)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武藤 泉 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20400278)
菅原 優 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40599057)
赤尾 昇 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助手 (80222503)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 省資源 / ステンレス鋼 / 孔食 / 硫化物系介在物 / マイクロ電気化学測定 |
Research Abstract |
省資源化と省エネルギー化(グリーン化)の社会的要求に応え,少ない合金元素量でも高耐食性を発揮するグリーンステンレス鋼を創製することが重要である。そのために,本研究では(1)非金属介在物起点の孔食発生機構の解明と(2)高耐食化の新原理の創出を目的とする。項目(2)の具体的内容は,硫化物系介在物の不活性化(原理1)と微小ピットの活性溶解の抑制(原理2)である。いずれも微小な腐食起点の溶解特性制御による高耐食化であり,従来の化石燃料や鉱物資源を多量に消費する高合金化や高純度化による全面的な高耐食化とは根本的に異なる,高耐食化の新概念の提案である。 項目(1)に関して,本年度は昨年度の研究によりMnSの溶解により元素状Sが生成すること明らかになったことから,MnSの溶解反応を同定し,塩化物イオン共存下でのMnSの溶解がピットの発生に至る機構を検討した。MnSの溶解により生ずるチオ硫酸イオンはpH3.5以下になると不均化反応により元素状Sとなり,鋼表面に析出し,このSと塩化物イオンの相乗作用に行って鋼の脱不働態化が起こることを明らかにした。脱不働態化によりMnSと鋼との界面で溝状溶解が深く進展し,溶解先端部でpH低下と塩化物イオン濃縮が起こり,さらにIRドロップによる電位低下の条件が揃った所から成長性のピットが発生・進展する。 項目(2)に関してはピットの溶解抑制効果を持つ合金元素をコンビナトリアルアプローチによって探索するために,傾斜組成合金薄膜の作製法を検討した。昨年度購入したとマグネトロンスパッタリング装置を立ち上げ,14Cr鋼と純Snの2つのカソード(ターゲット)を用いる2元スパッタリングにより傾斜素成膜を作製するための,放電条件とカソードと基板の設置位置関係を検討し,Sn濃度を0~5%の範囲内で連続的に変化した膜を作製することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
項目(1)の「非金属介在物起点の孔食発生機構の解明」に関しては当初の 計画通りに,MnSの溶解生成物であるチオ硫酸イオンから元素上Sが析出する条件を見出し,元素上SとCl-の存在下で鋼の活性溶解が起こることを明らかにした。これと,電気化学制御下の孔食発生のin-situ,リアルタイム観察の結果を総合することにより,微量S添加SUS304鋼のMnS介在物起点の孔食発生機構は全容が解明された。残る課題は,汎用の高耐食ステンレス鋼(低S含有鋼)における孔食が同じ機構で起こるかどうかの検証である。 項目(2)の「高耐食化の新原理の創出」に関しては,硫化物の溶解制御(原理1)には保護性酸化皮膜形成元素(バルブ金属のTi,Nb,希土類のミッシュメタルMM)の添加が有効であることを明らかにしており,また,ピットの活性溶解抑制(原理2)については,Snなどの有効元素の探索を行うためのコンビナトリアル合金ライブラリー作製の準備が完了した。したがって,ほぼ100%に近い進捗であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
計画は順調に進んでいるので,当初計画通りに進めることで目的は達成されると考えられる。H25年度までの成果により,微量S添加SUS304鋼での孔食発生機構は明らかになったので,H26年度はこの機構がS量の少ない汎用SUS304鋼での孔食発生に適用できるかどうかを検討する。また,微小ピット内の溶解抑制に有効な元素探索については,マグネトロンスパッタリングによる傾斜組成合金膜作製の条件が明らかになったので,H26年度はSnを中心にコンビナトリアル合金ライブラリーを作製して,ピット模擬環境での溶解特性評価を実施する予定である。
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Research Products
(9 results)