2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24246146
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
|
Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
浅川 賢一 独立行政法人海洋研究開発機構, 海洋工学センター, 調査役 (40344288)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 水中グライダー / バーチャルモアリング / 長期定域観測 / 水中ロボット / 海洋観測 / 海洋環境変動 / ツクヨミ / 自律昇降式水中ロボット |
Research Abstract |
次世代の海洋観測システムでは、観測の効率と質・量を高めるため、気候変動の影響が早期に現れるキーとなる海域を見出し、2,000mを超す水深も含めて、集中的に観測することが求められている。そこで本研究では、数年に亘り一定の海域に留まり、海底から海面の間を定期的に往復しながら海水温度等の海洋環境を観測し、イリジウム衛星経由でデータを陸上に伝送する定域長期観測用自律昇降式水中ロボットを開発する。 本研究では、シャトル型水中ロボット「ツクヨミ」をベースとなる機材として使用する。ツクヨミの全長、空中重量、最大潜水深度はそれぞれ約2.5m、150kg、3,000m である。これまでに、ハードウエアの基礎部分と運動制御測定用のプログラムを開発し、基本的な潜水・浮上動作、滑空機能などを確認している。 本年度は、以下の研究を実施した。(1)小型斜版式アキシャルピストンポンプを組み込んだ小型・高速浮力エンジンの基礎的検討を行い、モータ、ギヤ、油圧ポンプを選定した。また、予備的な実験を行い、高水圧下でも油の押し出しと引き込みが可能であることを確認した。(2)超音波高度計を開発し、小型船による沿岸での実験等により、その基本的動作を確認した。(3)運動制御ソフトウエアに関しては、パーソナルコンピュータで動作する運動シミュレータを開発した。このシミュレータを用いることにより、実際に海洋での実験を行わなくても、運動制御方式の検討を進めることができるようになった。また、制御プロフラムのデバッグにも使え、その信頼性を高めることができる。(4)平成25年1月にはJAMSTEC の海洋調査船「かいよう」を用いた海洋実験を行い、防失対策用の安全索付きではあったが、安定した動作や浮上中のGPS測位とイリジウム通信ができることを確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ソフトウエアに関しては、予定通り順調に開発が進んでいる。ユーザーインターフェイスも改善され、海洋実験での操作やデータの解析効率も改善された。超音波高度計の開発も順調であり、当初予定していた性能を持つ超音波高度計を開発することができた。平成25年度にツクヨミ本体に搭載する予定である。小型高速浮力エンジンの開発も順調である。従来の浮力エンジンと比較して、寸法で1/2 以下、速度は1桁以上改善できる見込みである。従来の浮力エンジンは、もともとプロファイリングフロート用に開発したものであるため、高速である必要はなかった。しかし、水中ロボット用では迅速に行動するためには浮力エンジンにも高速性が要求される。優れた性能を持つ浮力エンジンを実現する見通しを得ることができた。 一方で、予定していた音響測位システムの開発は遅れている。これは、ソフトウエア等の開発に、予想以上の費用と時間を要したことと、ツクヨミ耐圧容器の海水による腐食が予想以上に進んだため、その対策に予定外の支出が必要となったためである。また、海洋実験においては、予定していた無索での実験までに至らなかった。これは、搭載していた既存の浮力エンジンが、実験中に故障してしまったためである。この浮力エンジンは、新しい小型・高速浮力エンジンと交換する予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成25年度には、まずツクヨミに組み込み可能なマイクロアキシャルピストンポンプを利用した小型高速浮力エンジンを組み立て、室内においてその電圧-流量特性、電流-圧力特性、電力効率など、基本的特性を測定する。ツクヨミが潜水した場合には、外部から水圧に相当する外圧が加わる。このような状況を想定し、JAMSTEC 所有の水圧試験器を用いて、高圧下での特性を測定する。高圧環境下で油を引き込む時は、外圧でポンプ・モータが駆動されるのでブレーキをかける必要がある。このような状況を想定した試験を室内で行う。その後、この小型浮力エンジンをツクヨミ本体に組み込む。同時に、この小型高速浮力エンジンを制御できるように、ツクヨミの制御ソフトウエアを改修する。 定域長期観測用自律昇降式水中ロボットは、水面浮上時にGPS で測位する。水中では、その姿勢・方位と下降速度から自分自身の位置を推定しながら滑走する。潮流や海流で流されて目標位置から離れた場合には、目標位置までの距離と方位などの経路を計算し、所定の位置に戻る。また、観測期間を延ばすため海底に着底して、一定期間スリープする。平成25年度には、このような高度な自律制御機能を組み込む。開発するソフトウエアは、まず室内において、平成24年度に開発したシミュレータによりデバッグするとともに、制御パラメータの最適化を図る。 その後、開発した小型高速浮力エンジン、超音波高度計およびソフトウエアを評価するために、海洋実験を行う。まず、小型船舶を用いて、沿岸で試験を行う。防失対策のため、安全索をつなげた状態で行う。ツクヨミは、港から曳航する。その後、JAMSTEC 所有の研究船「かいよう」により、大水深への潜水・浮上試験を行う。 平成24年度の成果は、IEEE/MTS主催で米国San Diego で開催される国際会議OCEANS で報告する。
|