2012 Fiscal Year Annual Research Report
放射性セシウム汚染土壌を炭酸ガスのみで洗浄・修復する安全安心な可搬型装置の構築
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24246158
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Research Institution | National Institute of Technology, Toyama College |
Principal Investigator |
丁子 哲治 富山高等専門学校, 物質化学工学科, 教授 (80092790)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高田 英治 富山高等専門学校, 専攻科, 教授 (00270885)
袋布 昌幹 富山高等専門学校, 専攻科, 准教授 (50270244)
原 正憲 富山大学, 水素同位体科学研究センター, 准教授 (00334714)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | セシウム汚染土壌 / 除染技術 / 炭酸ガス / 放射線計測 |
Research Abstract |
平成24年度は以下の4つの内容で検討を行った。 1)炭酸ガスを用いた模擬汚染土壌からのセシウム効率除去効率評価:韓国慶煕大学Park教授の助言指導により,海砂および天然土にセシウム133を添加することで人工汚染土壌を調製した。この土壌に対する炭酸ガスによる除染効果を硝酸,純水による除染と比較検討して行った。結果,海砂においては純水洗浄のみでセシウムが脱離したことから,土壌の種類によってはセシウムが容易に脱離するものがあることがわかった。バッチ処理により炭酸ガスを通気した結果,現在研究されている弱酸を用いた除染効率である10%程度の除染効率が得られることがわかった。このことより,炭酸ガスを用いることで,処理の必要な酸などを用いることなくセシウムの除染ができる可能性を見いだすことができた。 2)洗浄中の汚染土壌中セシウム濃度のオンサイト評価法の開発:除染処理中の土壌からの放射線量を測定するため,周辺のバックグラウンドシグナルを分離できる装置を導入した。次年度より実際に試験を開始する。 3)民間企業との連携体を組織した実用化プロジェクトの企画立案:屋外での除染作業を行う際に鉛を用いた放射線遮蔽材を用いると,鉛の溶出による土壌汚染のリスクがあることから,廃ブラウン管の鉛ガラスの粉末を自己硬化性ポリマーと混合することにより形状を自由に変えることができる防水性放射線遮蔽材の試作を民間企業と連携して開始した。除染作業を行う建屋や住居などでの作業者の放射線暴露を回避する資材としても有効性が期待される。 4)アウトリーチ:2012年10月に開催された「土壌・地下水環境展」へのブース出展を通し,研究内容を一般に発信した。実際に除染に取り組む企業等からのコンタクトもあり,本研究の方向性の検討に役立てることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)炭酸ガスによる汚染土壌からのセシウム除染については処理効率には改善の余地があるものの,現在研究が進められている,弱酸などの各種化学試薬を用いたものと同レベルの効率が得られており,炭酸ガスの効果をある程度確認することができた。しかし,福島第一原発事故から2年が経過し,多くの研究が「現位置の土壌処理」に対する技術の比較検討のステージに入っていることから,現位置での処理試験を行うことが緊急の課題である。その際,放射線計測システムの有用性等についても検討が行えるものと考えられる。 2)実用化に向けた展開においては,富山高専がこれまでに連携関係を構築した民間企業等との意見交換において,リサイクル資材を用いた放射線遮蔽材に高い関心をもたれていることがわかった。アウトリーチ等も積極的に行い,社会との連携を深めることにより,本研究成果を幅広く活用していただける可能性を確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
1)炭酸ガスの除染効率向上:現在はバッチ処理での除染を行っているため,反応塔による連続処理などで除染効率は高まることが期待されるが,炭酸ガスの水への溶解量を高めることにより,炭酸ガスそのものの除染効率を向上できることが期待される。炭酸ガスの分圧を高めることができるナノバブルの導入等,反応プロセスの検討を行う。 2)福島での除染試験:上記に示したとおり,福島での実汚染土壌の試験が本研究で急務である。あらゆる接点を活かしながら,福島地区での実証試験を行うことが課題である。 3)アウトリーチ:本研究の方向性を社会に常に発信しながら修正検討し,実際の除染につなげることを目的に,展示会出展などのアウトリーチを積極的に行う。
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