2013 Fiscal Year Annual Research Report
細胞はいかにして足場の硬さを感知するのか:アクトミオシンとチャネルの協同機構
Project/Area Number |
24247028
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
曽我部 正博 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任教授 (10093428)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辰巳 仁史 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20171720)
早川 公英 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任講師 (60467280)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | メカノセンシング / 足場 / 機械受容チャネル / 細胞骨格 / 接着斑 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞は基質や隣接細胞の硬さを感知し、それに応じて増殖、分化、生存、運動を制御して自身の運命や行動を決定することが最近明らかになってきた。しかし、その感知機構は未だ不明である。我々は、細胞が基質の硬さを調べる際は、接着斑を介して接着した基質を能動的にアクチンストレス線維により引っ張り、接着斑/細胞骨格において硬さを反映する応力を細胞内シグナル(Ca2+スパーク)に変換して基質の硬さを感知していると考えている。本研究では、その「アクティブタッチ」仮説の検証とその分子機構を明らかにすることを目標としている。これまでに、血管内皮細胞において、アクティブタッチに関連する細胞内Ca2+上昇と基質硬度依存的な細胞伸展には、MS(機械刺激受容)チャネル、特にTRPM7が、関与していることを明らかにしてきた。しかし、それらの抑制効果が部分的であることから、他のMSチャンネルの関与が考えられた。今年度は、基質硬度依存性がより高い間葉系幹細胞を用いて「アクティブタッチ」の分子基盤の解明を目指した。その結果、間葉系幹細胞においても基質硬度依存的なCa2+スパークが観察され、その発生にはTRPM7に加えてTRPV4が関与していることを見出した。実際、TRPV4の発現抑制や薬理学的な機能阻害によりCa2+スパーク発生が抑えられた。細胞膜上のTRPV4チャネルの動態を、全反射蛍光顕微鏡を用いて1分子レベルでライブ観察した。その結果、大部分のTRPV4チャネル分子は二次元拡散運動を示していたが、一部に停留するチャネルが見られた。接着斑プローブとの同時観察を行ったところ、TRPV4チャネルは接着斑上、あるいは、その近傍で停留していることが分かった。従って、TRPV4は接着斑構成分子と相互作用すること、すなわち、TRPV4は接着斑/細胞骨格と分子複合体を形成しアクティブタッチに関与している可能性が示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「アクティブタッチ」に関与する複数種のセンサー分子の同定に成功しており、ほぼ順調と考えられる。すなわち、研究期間を延長することにより、当初標的にしていたセンサー分子の硬さ感知への寄与が部分的であり、別のセンサー分子も関与していることを明らかにした。しかし、まだ「アクティブタッチ」における細胞内シグナルへの変換や機械刺激受容チャネルの機能に関して、それらの生理的意義を解明できておらず、分子基盤全体の理解には至っていない。
|
Strategy for Future Research Activity |
前年度までに明らかにした2種の機械受容チャネル以外にも、硬さ感知に関わる候補分子が存在するので、引き続きアクティブタッチに関与するセンサーの分子同定を進める。また、センサー間の関係・センサー分子の冗長性を評価するために、複数のチャネルを同時に発現抑制しその影響を解析する予定である。さらに、間葉系細胞では、YAP/TAZの局在・リン酸化が基質硬度依存的に応答し細胞分化につながることが明確にされているので、それを指標に、アクティブタッチにより生じるCa2+シグナルやそれを担うMSチャネルの機能の生理的意義の解明を目指す。
|
Research Products
(9 results)