2013 Fiscal Year Annual Research Report
試験管内再構成系を用いた相同組換え反応における時空間ダイナミズムの分子機構研究
Project/Area Number |
24247033
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
岩崎 博史 東京工業大学, 生命理工学研究科, 教授 (60232659)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 相同組換え / DNA二重鎖切断 / DNA修復 / DNA鎖交換反応 / 分裂酵母 / Rad51 |
Research Abstract |
相同組換え (修復) は、大きく3 つの反応ステップ(初・中・後期) に分かれるが、本申請研究では、分裂酵母を主要な生物モデル系として、申請代表者らによって独自に発見された因子(Nip1/Ctp1、Swi5-Sfr1 複合体、 Fbh1 ヘリケースなど) を中心に、各ステップを再構成し、これらの因子がそれぞれの反応過程にどのように関与するのか、分子レベルでの解明、また、一部は、ヒトタンパク質ホモログを解析し、その普遍性の検討、さらに、各ステップ間を再構成し、ステップ間の連携機構の解明、最終的に、これらのアプローチより、時空間的にダイナミックな核内反応機構における分子反応機構解析のパラダイムの構築を目指している。 2013度は、Swi5-Sfr1タンパク質が減数分裂特異的リコンビナーゼであるDmc1に対して、recombinase mediator とactivatorの2種類の作用機序の異なる正の因子として働くことを証明した。さらに、Rad51のmediatorであるRad52は、Dmc1にとって負の因子として機能することを示し、Dmc1依存的な交差型組換えの発生機構について提唱し、これらを論文にまとめて出版した。 また、Swi5-Sfr1はRad51が形成するヌクレオプロテインフィラメントを安定化することが以前から知られていたが、その安定化はSwi5-Sfr1が存在しない時と比べて極めて高い安定化(50倍程度)であることが分かった。 また、Fbh1ヘリカーゼについては、Rad51反応の制御機構について、前年度までに、正負の2面の効果を発見していたが、当該年度に、負の制御の新たな作用機序として、5’-invasionの抑止力があることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1) 初期過程の再構成系の構築と反応機構解析:初期過程には、Mre11, Rad50, Nbs1, Ctp1などが関与する。昨年度までに、これらの発現精製系を構築し、Ctp1にエンドヌクレアーゼ活性を発見した。2013年度は、Mre11とRad50がCtp1のエンドヌクレアーゼの活性にどのような影響を及ぼすのかを解析したが、特段の発見は得られなかった。 (2) 初期-中期過程の再構成系を用いた反応機構解析:減数分裂時組換えには、減数分裂特異的リコンビナーゼであるDmc1が働くことによって交差型組換え体が生じる。我々は、Swi5-Sfr1タンパク質がDmc1に対して正の因子として働くことを報告していたが (Haruta et al., 2006)、今回、この作用機序を詳しく解析して、recombinase mediator とactivatorの2種類の異なる正の作用機序を証明した。さらに、Rad51のmediatorであるRad52は、Dmc1にとって負の因子として機能することを示した。分裂酵母の染色体上で、Rad51は二重鎖切断のホットスポットに存在するのに、Dmc1はむしろ二重鎖切断の発生し難いところに局在すること、また、Dmc1が機能するときのみ交差型組換えが生じることから、Rad52によって交差型組換えの生成が制御されている機構について提唱した。 また、Swi5-Sfr1によるRad51ヌクレオプロテインフィラメントに対する影響を解析して、Swi5-Sfr1による安定化はSwi5-Sfr1が存在しない時と比べて極めて高い安定化(50倍程度)であることが分かった。 (3) Fbh1ヘリカーゼの機能:Fbh1はRad51反応を正負の制御を行うことを示していた。2013年は、負の制御機構を詳しく解析して、Rad51によるD-loop形成において5’-invasionに対して抑止があることを見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 初期過程の再構成系の構築と反応機構解析: 引き続き、これまでの解析を継続して行う。すなわち、以下の実験を継続遂行する。Mre11, Rad50, Nbs1, Ctp1からなるMRNC複合体を再構築する。これを用いて、Mre11やCtp1のエンドヌクレアーゼ活性の制御機構を詳細に解析し、recombinogenic な3’突出型ssDNA単鎖DNAが生成される分子機構を明らかにする。特に、Mre11のエクソヌクレアーゼの方向性では3’突出型ssDNAの生成機構を説明できず、大きな問題となっている点に注目して解析する。また、MRNCタンパク質複合体に加えて、Rqh1 ヘリカーゼを追加して、end-resectionの反応を再構成する。また、Ctp1の結晶化にトライする。 (2) 初期-中期過程、及び、中・後期過程の再構成系とその反応機構解析:Rad55-Rad57に関しては、2013年に大きな進捗が望めなかったので、今後、特に力を入れて解析する。特に、Rad55-Rad57ヘテロ2量体による野生型Rad51の活性化機構のin vitro解析は重点化する。また、Swi5-Sfr1に関しては、生物物理学的手法を導入して、Rad51フィラメントの安定化を解析する。Fbh1 ヘリケースのこれまでの解析をまとめて、論文として発表する。 (3) ヒトRad51の付随因子による活性化機構:本テーマは、2013年度には、大きな進展がなかった。今後は、より重点化したいと思う。目標は、ヒトRad51によるDNA鎖交換反応系を構築して、ヒトSwi5-Sfr1複合体やBrca2がどのように作用するか、in vitroで解析することを可能とすることである。
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