2012 Fiscal Year Annual Research Report
核輸送因子インポーティン研究を基盤とする高次生命機能制御の統合的理解
Project/Area Number |
24247036
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
米田 悦啓 大阪大学, 生命機能研究科, 教授 (80191667)
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Project Period (FY) |
2012-05-31 – 2015-03-31
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Keywords | 細胞核 / 核タンパク質輸送 / importin α |
Research Abstract |
これまでに、神経細胞分化を誘導する転写因子Oct6が未分化ES細胞でも高発現して細胞質に局在していること、さらに、importin α1がOct6の核内移行を阻害することをすでに見出している。H24年度は、importin α1によるOct6の輸送阻害のメカニズムを明らかにするため、リコンビナントタンパク質を用いてimportin α1とOct6の分子相互作用を詳細に解析した。その結果、通常のNLSを持つタンパク質とは異なり、Oct6はimportin α1のC末領域に結合することが分かった。さらに、その結合に重要なOct6およびimportin α1のアミノ酸残基を特定することが出来た。また、これまでにimportin α5遺伝子欠損雌マウスではエストロゲンシグナル経路の抑制とともに、卵巣の成熟段階の卵胞数の減少や子宮内膜の発育不全がみられることが分かっている。そこで、エストロゲン受容体の核―細胞質間輸送メカニズムを解析した結果、エストロゲン受容体はimportin α1とは結合せず、importin α5とimportin α3により核内へ輸送されていることが分かった。さらに、NLSを欠失した変異体は、エストロゲン添加により急速に細胞質側へと移動することが分かった。この結果は、エストロゲン存在下でのエストロゲン受容体の核―細胞質間シャトリングが、その生理活性に大きく影響していることを示唆している。H24年度はimportin αと細胞老化の関連にも着目し、解析を進めた。その結果、核輸送方向性制御因子Ranや、importin αの核外輸送因子・CASのノックダウンに伴うimportin αの核内集積により、細胞老化が促進されることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
核輸送因子importin αが細胞分化・未分化の運命決定に果たす役割の一つとして、そのOct6との相互作用のメカニズムを明らかにした。また、importin αのエストロゲン受容体核内輸送における役割を明らかにした。さらに、importin αと細胞老化の関連性を見出すことが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでの結果を踏まえ、ES細胞抽出液に存在するimportin α1結合因子の同定とその役割の解明、脳高次機能におけるimportin αの役割の解明、importin α局在変化と細胞老化の関連、を明らかにする。また、一部計画を変更し、卵母細胞特異的に発現するimportin α8の機能解析も同時に行う予定である。これらを通して、高等真核生物の高次機能と核輸送制御の関連を明らかにする。
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