2012 Fiscal Year Annual Research Report
イネ属AAゲノム種の種分化におけるF1花粉不稔遺伝子の進化生物学的役割
Project/Area Number |
24248002
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
吉村 淳 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (00182816)
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Project Period (FY) |
2012-10-31 – 2017-03-31
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Keywords | F1花粉不稔 / 種分化 / 生殖的隔離 / イネ / 進化 |
Research Abstract |
本研究は以下の4項目により構成されている。項目別に概要を記す。 (1)遺伝子単離と機能解明: S23の候補領域70 kbを包含する領域に関して、バイナリーベクターpYLTAC7を用いた平均断片長30kb程度のゲノミッククローンライブラリーの構築を行い、現在スクリーニングを行っている。S22Aに関しては約1920個体を用いた高精度連鎖解析の結果、約150 kbの領域に絞り込まれた。候補領域内にF1花粉不稔遺伝子S22Bと類似した遺伝子を三つ発見したので、そのうち二つをバイナリーベクターpPZP2H-lacにクローニングし、相補性検定のための形質転換を開始した。 (2)原因変異の同定: 遺伝子単離済みのS22BおよびS28に関しては、T65アリルとglumaepatulaアリルのキメラ遺伝子を花粉半不稔個体に導入した形質転換体を作製し、原因変異を特定する。本年度はS22Bに関しては、計画した5つのうち4つ、S28に関しては、計画した3つのうち、3つのキメラ遺伝子を作製することができた。バイナリーベクターへの移し替えを開始した。 (3)対立遺伝子間の多様性解析: S21(=S23)に関して行っている。S21-gla NIL, S23-glum NIL, S23-ruf NIL, S23-mer NILのハーフダイアレル交雑を行い、F1種子を得た。O. glumaepatulaのコアコレクション(ランク1, 2, 3)を遺伝研から分譲を受け、マリ原産O. glaberrimaとの交雑を行いF1種子を得た。 (4)S遺伝子座の分子系統学的解析: AAゲノム種コアコレクションについてS遺伝子および近傍ゲノム領域に関して配列解読を行う。本年度は遺伝研コアコレクションの分譲を受け、植物体育成とDNA抽出を行った。台中65号との交雑F1種子の作製を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)遺伝子単離と機能解明: S23に関してはライブラリー作製に時間がかかっている。S22Aに関しては候補となる原因遺伝子が三つ見られ、そのうち二つに関して相補性検定にも着手することができ、順調である。ただし、相補性実験と並列して、候補領域の更なる絞り込みを行う必要がでてきているが、平成24年度の材料展開のサイズは十分でなかった。 (2)原因変異の同定:キメラ遺伝子の作製がほぼ終わり、バイナリーベクターへの移し替えと形質転換を迅速に進める必要があるものの、進捗に問題はない。 (3)対立遺伝子間の多様性解析: NIL同士のハーフダイアレル交雑を行い、順調に材料育成が進んでいる。O. glaberrimaとO. glumaepatulaコアコレクション間のF1花粉不稔の多様性の評価に関しては、来年度F1の花粉稔性を評価するために十分なF1種子を得ることができた。 (4)S遺伝子座の分子系統学的解析: 遺伝研コアコレクションを中心とした野生イネ材料の収集、DNA抽出、F1種子の作製を進めることができた。国際イネ研究所の材料の分譲を予定していたが、進めることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)遺伝子単離と機能解明: S23に関しては高精度連鎖解析を進めると共に、ライブラリー作製を進める。S22Aに関しては候補遺伝子の形質転換体T0の花粉稔性を行うとともに、その他の遺伝子の可能性も考慮して、更なる候補領域の絞り込みと相補性検定を進める。 (2)原因変異の同定: 得られたキメラ遺伝子を導入した形質転換体T0の評価を行う。またS遺伝子座の分子系統学的解析において近縁のAAゲノム種の配列解析を進めるので、そこから得られる分子系統樹上から候補SNPsを推定するアプローチも補助的に用いながら原因変異の特定を促進する。 (3)対立遺伝子間の多様性解析: S23 NILのハーフダイアレル交雑F1個体の花粉稔性の評価を行う。O. glaberrimaとO. glumaepatulaコアコレクション間のF1個体の花粉稔性評価を進めるとともに、F2種子が採種できる場合はF2世代における花粉稔性のQTL解析を行い、O. glaberrima/O. glumaepatula間のF1花粉不稔の遺伝的基盤を解明する。 (4)S遺伝子座の分子系統学的解析:単離済みのS遺伝子座、未単離の座に関しては近傍遺伝子座の配列解析を進め、塩基多様性(π)や進化速度Ka/Ks等のパラメータを計算する。S遺伝子座NILを作製し、機能の有無を評価する事で配列/機能の連関解析を行い、重要なアミノ酸置換の分子系統樹上および地理学上の発生点を推測する。
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