2013 Fiscal Year Annual Research Report
植物病原菌の宿主侵入における表層認識と形態形成の制御機構
Project/Area Number |
24248009
|
Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
久保 康之 京都府立大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (80183797)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高野 義孝 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (80293918)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 炭疽病菌 / 付着器 / 侵入様式 / シグナル伝達 / RNA結合タンパク質 / RNAサイレンシング / 分子パターン / 植物免疫 |
Research Abstract |
ウリ類炭疽病菌において分裂酵母tea1のホモログであるCoKEL2が宿主表面の非生物的シグナル受容を介した付着器形成に関与することから、植物特異的シグナル受容によって付着器を誘導する経路の存在が示唆されている。本年度の研究において植物特異的シグナル受容を介した付着器形成に関与する遺伝子の一つとして、出芽酵母の細胞極性成長などに関与するMORシグナル伝達経路の構成因子PAG1と相同性をもつCoPAG1を同定するとともに、恒常活性型NDRキナーゼの導入実験によりCoPAG1がMOR経路に関わることを確認した。出芽酵母においてPAG1は細胞の極性形成や細胞の分離および細胞壁の健全性などに関与するRAMネットワークの構成因子であることが報告されており、RAMネットワークの植物特異的シグナル受容系への関与を示唆する新知見である。また、病原菌の分子パターンに関する研究では細胞壁構成を制御するRNA結合制御因子SSDがCBK1キナーゼの制御下にある実験結果を得、結合RNAの精製をおこなった。一方、PacCの機能解析に関して、本年度は分泌タンパク質遺伝子の詳細な発現パターンを調査した結果、pacC破壊株が活物寄生段階において2つの病原性関連分泌タンパク質遺伝子NIS1とCoMC69を野生株よりも高いレベルで発現することを明らかにした。このことはPacCが分泌タンパク質遺伝子の発現制御に関わることを示している。また、DCL2が本菌の病原性発現に必要であることを前年度明らかにしたが、本年度は野生株、dcl1破壊株、dcl2破壊株、および、dcl1 dcl2二重破壊株についてその低分子RNAの網羅的解析をおこない、本菌ゲノム配列に完全一致する低分子RNA配列を約1300万(野生)、約600万(dcl1)、約1900万(dcl2)、約2300万(dcl1 dcl2)取得した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画に従って、植物特異的シグナル受容を介した付着器形成に関与する遺伝子を同定し、その機能解析を進めることができた。また、細胞壁構成を制御するRNA結合制御因子SSDの結合RNAの純化を行うことができた。また、PacCによる遺伝子発現制御を明らかにし、さらに野生株およびRNAサイレンシング変異株の低分子RNA配列の取得に成功した。
|
Strategy for Future Research Activity |
植物特異的シグナル受容を介した付着器形成に関与する鍵遺伝子CoPAG1の上流、下流にある遺伝子の同定を進め、シグナルカスケードの全貌を明らかにする。また、細胞壁構成を制御するRNA結合制御因子SSDの結合RNAの遺伝子配列情報を明らかにする。さらにPacCを起点とした侵入様式の選択および病原性発現の制御メカニズム解明に向けて研究を行う。また、取得した低分子RNAの情報解析およびそれに基づく分子生物学的解析を進め、RNAサイレンシングがどのように植物感染プロセスに関わるのかを明らかにする。
|