2012 Fiscal Year Annual Research Report
肝臓脂肪蓄積とSREBP-1活性化の分子基盤解明と活性化抑制食品成分探索
Project/Area Number |
24248023
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 隆一郎 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (50187259)
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Project Period (FY) |
2012-05-31 – 2015-03-31
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Keywords | 脂肪滴形成 / SREBP / Perilipin / コレステロール |
Research Abstract |
肝臓における脂肪蓄積のモデルとして、本年は脂肪細胞における脂肪滴形成とSREBP-1活性化について解析を進めた.肥満は脂肪細胞への過剰な脂肪滴蓄積状態を意味する.脂肪細胞は前駆脂肪細胞から成熟脂肪細胞へと分化する過程で,PPARγ,SREBP-1 などの転写因子が活性化され,脂肪酸・トリグリセリド合成が上昇し,それと同時に脂肪滴表面タンパク質Perilipin が発現亢進し,脂肪滴蓄積増加を伴う.Perilipin KO マウスの皮下,内臓脂肪の脂肪細胞は脂肪滴蓄積が著しく低下し,さらにSREBP-1 の活性化も著しく減弱していた.一方,SREBP-2 の活性化は変動が無く,脂肪滴蓄積とSREBP-1 活性化に相関が認められた.同様の現象は,野生型,KO マウスより調製したMEF を脂肪細胞へと分化させたin vitro 培養系でも再現された.前駆,成熟脂肪細胞のそれぞれから小胞体リッチ画分を超遠心法にて分離し,そこに含まれる遊離コレステロール量を定量すると,成熟脂肪細胞の小胞体コレステロール量は有意にし,Perilipin KO マウスの皮下脂肪より分離した小胞体では野生型のそれと比較して,コレステロール量が高値であった.すなわち,脂肪滴は小胞体膜から派生する脂質一重膜で覆われており,脂肪滴形成に伴い,小胞体膜環境が著しく変動する事が明らかになった.以上の結果より,脂肪滴形成は,小胞体膜環境変動を介して積極的にSREBP-1 活性化を促し,それに伴い脂肪酸・トリグリセリド合成を上昇させ,さらに脂肪滴形成を進行させるというフィードフォワード制御機構を駆動させている.このスパイラルを断ち切る事が,肥満予防,解消の有効な標的となる事が期待される.さらに,同様の機構で脂肪肝が進行するかについてさらなる解析を進める.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脂肪細胞はトリグリセリドを脂肪滴に貯留し、次なる飢餓に備える.一方,肝臓は肥満状態あるいはアルコール性脂肪肝の際に,肝臓細胞内に脂肪滴を蓄える.脂肪肝状態において転写因子SREBP-1が高度に活性化されているという報告が複数ある.臓器は異なるものの、脂肪細胞における脂肪滴形成上昇とSREBP-1活性化がリンクする分子機構を明らかにした本年度の研究成果は,翌年以降の研究への大いなる参考となる.脂肪滴は小胞体から派生することは、細胞生物学的研究により明らかにされているものの,その結果として小胞体にどのような変化が生じるかについてはほとんど知見が無かった.その中,本研究において脂肪滴形成に伴い,小胞体コレステロール量が減少し,膜環境が変化する事を示した事は大きな進展と言える.肝細胞においては脂肪細胞と異なり,脂肪滴の表面をPerilipinと同一ファミリーに属するADRPが担う.ADRPとPerilipinの機能の差異を明らかにし,脂肪肝における脂肪滴形成の分子機構をさらに明らかにしていく必要がある.
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Strategy for Future Research Activity |
*肝臓におけるSREBP-1 splicing isoformの発現制御機構の解析 SREBP-1には,N末端のアミノ酸配列が異なるSREBP-1a/1cが存在する.特に肝臓においてはSREBP-1cの発現が高い.一方,転写活性を比較した際に,SREBP-1aは1cより活性が顕著に高く,脂肪滴形成に伴い高活性のSREBP-1aの発現が上昇し,さらに脂肪肝を増強させる方向へと導く可能性が想定される.このような仮説の真偽を分子細胞生物学的手法を用いて明らかにする. *SREBP-1a/1cプロモーター領域のDNAメチル化によるsplicing isoform発現制御の解析 各臓器におけるSREBP-1a/1cの発現パターンは異なり,それを制御している機構としてプロモーター領域のDNAメチル化が挙げられる。SREBP-1a/1cは、互いに14 kb離れたプロモーター領域の転写活性化により発現が調節される.肝臓,小腸、脂肪組織でのメチル化の違い,脂肪肝状況下でのメチル化の変動などについて,エピジェネティカルな制御の可能性を解析する. *脂肪肝発症時のSREBP-1活性化の分子機構解析 脂肪滴を過剰に溜め込む脂肪肝においてSREBP-1の活性化は,脂肪組織と同様の機構で行われるのか,あるいは肝臓に特有のシステムが存在するのかについて分子細胞生物学的な解析を進める.
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Research Products
(2 results)