2013 Fiscal Year Annual Research Report
魚介類RNA干渉機構の解明と増養殖・感染防御への応用
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24248034
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
浅川 修一 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (30231872)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 小分子RNA / miRNA / piRNA / RNA干渉 / トランスクリプトーム / 感染防御 / RNA薬 / 寄生虫 |
Research Abstract |
先行研究で解読していた小分子RNAの解析を再度精査した。1億4000万リードのデータを解析した結果、約9000種類のmiRNAに分類できた。そのうち約2000種類は魚類で初めて見いだされた。また、魚類特異的なmiRNAも見いだした。さらに組織別に発現プロフィールを解読し、それぞれの組織に特異的なmiRNAを多数見いだした。また、それぞれのmiRNAについて多くのisomirを見いだした。 機能および進化的観点からmir499に注目して解析した。miR-499はヒトから各種魚類にいたる生物種で共通にミオシン重鎖遺伝子のイントロン中にコードされており、その近傍の遺伝子含めて遺伝子構造が保存されているが、メダカではミオシン重鎖遺伝子が消失しており、miR-499のみが残っている。メダカにおけるmiR-499の発現をin situ hybridizationなどで調べたところ、miR-499はホスト遺伝子が消失しているにもかかわらず、発現していた。 アコヤガイについては真珠形成に関与する外套膜を含む6種類の組織を回収し、小分子RNAの解析を進めている。またアコヤガイにおいて細胞遺伝学的実験を行なうため、遺伝子導入方法の検討を進めた。 トラフグ寄生虫Heterobothrium okamotoiについて昨年度のトランスクリプトーム解析の結果、平均443bpの長さのコンティグ16,710個が構築されていたため、それぞれの配列(遺伝子)の相同性検索を行なってKEGGなどの代謝マップ上にマップした。その結果、自由生活性の種とは代謝経路が異なることを示唆する結果が得られたため、その精査を進めている。これらのデータに基づきHeterobothrium okamotoi駆除のためのターゲット遺伝子の候補をリスト化した。トラフグに注射などで導入した2本鎖RNAが、どのような動態を示すかを調べるため、蛍光ラベルした2本鎖RNAを購入し、まずはゼブラフィッシュを対象にして予備実験を進めた。 魚介類感染菌Aeromonas hydrophilaのシーケンシングを行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度にmiRNAのプロファイリングまで行なっていたが、小分子RNAのデータベースは年々拡充していることや多くのisomirの存在が見いだされたことなどから、再度、新たなクライテリアでmiRNAの分類を行なった。その結果、9000種類ものmiRNAが同定され、魚類で初めて見いだされたmiRNA、魚類特異的なmiRNAなども数多く見いだした。また、それぞれのmiRNAに多種類のisomirが存在していることが分かった。さらに、組織特異的な発現を示すmiRNAが多数見いだされており、それぞれの組織における遺伝子発現制御に関わっていることが示唆された。miR-499の研究成果は、イントロン内のmiRNAがホストの遺伝子の消失にも関わらず、その機能を果たしていることを示すデータであり、機能的側面、進化的側面の両面で意義の大きいデータが得られた。 アコヤガイは実際に真珠形成に用いているものを提供されたため、高品質真珠形成に関わりのある小分子RNAのデータが得られることが期待される。 Heterobothrium okamotoiのトランスクリプトームの結果から、その代謝経路の特徴等のデータが得られた。このことは駆除のためのターゲット遺伝子の選定などで活用できる。またAeromonas hydrophilaのドラフトシーケンス4.7Mbを得た。以上のように本研究は順調に進んだ。
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Strategy for Future Research Activity |
クルマエビ、アコヤガイの小分子RNAのトランスクリプトームを推進する。既知miRNAに関しては、組織ごとの出現頻度をカウントし発現プロフィールを明らかにする。クルマエビあるいはアコヤガイの種内で表現型に大きな差があればmiRNA発現プロフィールの比較照合を行なって、特定の表現型に関与する小分子RNAをリスト化する。特にアコヤガイについては、外套膜とパールサックで発現に差が見られるmiRNAを優先して研究を進める。新規miRNAについては、ISHやゲノム上でのコード領域、他生物との相同性比較等を行ない、特に頻度の高いものについて、ノックダウン実験を行う。蛍光ラベしたモデル二本鎖siRNAによる2本鎖RNAの動態を調べる。Heterobothrium okamotoiのトランスクリプトーム解析の結果、発現頻度の高い遺伝子などをターゲットとしたsiRNAの設計を行なう。また現在水産業の現場で問題になっている他の魚病関連寄生虫に関してもトランスクリプトーム解析を推進する。それらの結果、駆除に効果があると考えられる遺伝子を選んで2本鎖siRNAを合成しドラッグデリバリーシステムを用いて、対象生物に導入してsiRNAの効果を検証し、効果の高いsiRNAの確立を目指す。また魚介類感染とRNAiとの関連も調べたいと考えている。
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Research Products
(4 results)
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[Presentation] Draft genome sequence of Aeromonas hydrophila strain Ae34, isolated from a koi carp showing signs of haemorrhagic septicaemia,2013
Author(s)
agoda, S.S.S.De S., Engkong, T., Kinoshita, S., Watabe, S., Asakawa, S.
Organizer
The 36th Annual meeting of the Molecular Biology Society of Japan
Place of Presentation
Kobe, Japan
Year and Date
20131203-20131203
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