2012 Fiscal Year Annual Research Report
骨格筋における異種細胞間コミュニケーション機構の解明
Project/Area Number |
24248045
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
西邑 隆徳 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (10237729)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辰巳 隆一 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (40250493)
尾嶋 孝一 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産草地研究所・畜産物研究領域, 研究員 (60415544)
保坂 善真 鳥取大学, 農学部, 准教授 (00337023)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 骨格筋 / 筋細胞 / 脂肪細胞 / 神経細胞 / 細胞間コミュニケーション / 細胞外マトリックス |
Research Abstract |
1. 筋細胞が分泌する生理活性因子の網羅的解析:骨格筋細胞の増殖・分化・成長の各過程において分泌されるタンパク質/ペプチドの網羅的かつ定量的な解析を行い、発現プロファイルを作成した。同定した437個のタンパク質/ペプチドのうち、分泌性因子は38個であった。分泌性因子の内訳は成長因子、細胞外マトリックス、およびタンパク質分解酵素阻害剤などであった。 2. 筋細胞と脂肪細胞の細胞間コミュニケーション機構:脂肪細胞を筋細胞と共培養すると、脂肪細胞の脂肪蓄積が抑制される傾向が認められた。共培養時に抗ミオスタチン抗体あるいはフォリスタチンアンタゴニストを添加すると、筋管による脂肪細胞分化抑制作用は抑制されたことから、筋管が産生・分泌するミオスタチンがパラクリン的に脂肪細胞に作用した可能性が示唆された。 3. 細胞外マトリックスを介した細胞間コミュニケーション調節機構:筋細胞と脂肪細胞の細胞間コミュニケーション物質の一つとして考えられるミオスタチンについて、各種細胞外マトリックス分子との相互作用を調べた結果、活性型ミオスタチンはラミニンと結合することが明らかになった。そこで、ミオスタチンシグナルに対するラミニンの影響をレポーターアッセイで調べた結果、ラミニンはミオスタチンによる細胞内シグナルを減ずることが示された。 3. 筋衛星細胞と神経細胞の細胞間コミュニケーション機構:筋再生過程において、衛星細胞はHGF依存的に神経軸索ガイダンス因子Sema3Aを合成・分泌し、その後、TGF-β3によって発現が抑制されることを明らかにした。また、Sema3A発現のシグナリング受容体が細胞膜貫通型プロテオグリカンであることを見出した。さらには、先のHGFが抗炎症性マクロファージ(M2)に由来することから、衛星細胞・運動神経末端・M2の細胞間コミュニケーションの重要性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
筋細胞あるいは脂肪細胞が増殖・分化・成長の各過程において分泌するタンパク質/ペプチドの網羅的かつ定量的な解析については、筋細胞が分泌する生理活性因子についてはその網羅的解析が終了したが、脂肪細胞が分泌する生理活性因子については解析がまだ終了しておらず、当初計画に比べてやや遅れている。しかし、細胞外マトリックスを介した細胞間コミュニケーション調節機構については、筋細胞が分泌するミオスタチンと相互作用する細胞外マトリックス分子がいくつか見つかったので、今後も順調に研究が進展すると考えられる。また、筋衛星細胞と神経細胞の細胞間コミュニケーション機構については、衛星細胞はHGF依存的に神経軸索ガイダンス因子Sema3Aを合成・分泌すること、Sema3A発現のシグナリング受容体が細胞膜貫通型プロテオグリカンであることを見出しており、ほぼ計画通り研究が進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度予定していた「脂肪細胞が分泌する生理活性因子の網羅的解析」がまだ終了していないが、既に脂肪前駆細胞~脂肪細胞の各ステージにおける培養上清は採取済であるので、これを試料として脂肪細胞が分泌するタンパク質/ペプチドの網羅的かつ定量的な解析をH25年度前半に終える予定である。また、筋細胞が分泌する生理活性因子の機能については、筋細胞自身へのオートクリン的作用ならびに脂肪細胞へのパラクリン的作用について検討を進めていく。また、細胞外マトリックスを介した細胞間コミュニケーション調節機構については、筋細胞が分泌するミオスタチンと相互作用する細胞外マトリックス分子がいくつか見つかったので、これらについてその活性調節能をアッセイする。さらに、筋衛星細胞と神経細胞の細胞間コミュニケーション機構については、衛星細胞がHGF依存的に合成・分泌する神経軸索ガイダンス因子Sema3Aに焦点を当てて検討を進める予定である。
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Research Products
(11 results)