2012 Fiscal Year Annual Research Report
核酸化学と情報科学の融合による革新的アンチセンス医薬創製基盤の構築
Project/Area Number |
24249007
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小比賀 聡 大阪大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (80243252)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
兒玉 哲也 名古屋大学, 創薬科学研究科, 准教授 (00432443)
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Project Period (FY) |
2012-05-31 – 2016-03-31
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Keywords | 核酸医薬 / ゲノム創薬 / アンチセンス医薬 |
Research Abstract |
アンチセンス医薬における課題解決のため、平成24年度は以下の項目を実施した。 ・核酸医薬の配列設計プログラム開発のため、ヒト脂質代謝関連遺伝子のひとつを標的としたアンチセンスオリゴヌクレオチド(AON)の一次構造およびmfoldによる予測二次構造のデータ等を説明変数とし、標的mRNAの発現量を目的変数としてRを用いた重回帰分析を行った。必要に応じて説明変数同士の相関やAIC(赤池情報量規準)を用いて説明変数の数を調整した。このうち、標的mRNA中に含まれる3塩基モチーフ64種類からAICを用いて36種類に絞ったものを説明変数として重回帰したところ、自由度調整済みR二乗値が0.468となった。一方、プログラムを検証する実データとして、ヒト肝培養細胞を用いた脂質代謝関連遺伝子の配列を標的としたAONによる網羅的な遺伝子発現抑制実験を実施し、配列により遺伝子発現抑制効果が大きく変化する事を確認した。 ・AONの効率的な人工核酸修飾を達成するために縮合行程ならびに酸化行程を検討した。本項目は二種のDNA合成機を用いて実施した。AON合成は各機の初期設定条件を用いてCPG固相担体上で実施し、合成効率は各機実装のモニターおよびHPLCにて評価した。その結果、機種による合成効率に大きな差は見られなかったものの、縮合剤によっては合成精度の低下を防ぐために反応後の洗浄過程を長くする工夫が必要であった。なお、現在研究を進めているBNA類については酸化剤は規定のヨウ素酸化が適当であった。 ・新たな人工核酸素材として、カチオン性官能基で架橋構造を修飾したグアニジノBNAを、低極性化オリゴとしてSeBNAを、ダイナミックな構造変化を期待して架橋型ピラノシド核酸の合成を実施し、グアニジノBNAやSeBNAがこれまでに合成してきたBNA類とは異なる特性を示す事を見いだした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、アンチセンス医薬に焦点を絞り、その問題点を洗い出すとともに解決に向けて4つの課題を遂行する事で、海外に遅れをとっている核酸創薬の大きな全身を目指すものであるが、初年度は計画通り以下の3項目について検討した。 まず、当初計画として掲げている配列決定プログラムの開発については、計画通り標的RNAから得られる各種の構造情報をパラメータとして抽出したことに加え、標的RNAに含まれる3塩基モチーフのパラメータ化も検討した。プログラム検証のための培養細胞を用いた遺伝子発現抑制実験も実施しており、本項目は予定通り進展していると考えられる。 また、AONの効率合成については、DNA合成機の違いにより縮合活性化剤が次の合成サイクルに影響する事が明らかとなるものの、その合成サイクルの洗浄過程を時間延長して実施する事で改善でき、現在検討している人工核酸の縮合反応は市販されている縮合剤で効率的に達成できることがわかった。一方、当初計画では反応溶媒の検討を実施する予定としていたが、SeLNAのAON合成を実施する際に酸化過程が懸念材料となった事から、予定を変更して酸化過程を検討し、安価なヨウ素酸化で高効率な酸化を達成できることを確認した。なお、機種による合成精度が問題となる事があることが明らかとなった事は重要といえる。本項目も順調に進展している。 さらに、人工核酸素材の開発として、アミン官能基化架橋型核酸モノマー、低極性化オリゴ核酸、架橋型ピラノシド核酸の合成に順次取りかかり、本年度中に一つの合成を達成する事を目標としたが、既にそれぞれグアニジノ型人工核酸とSeLNAのオリゴ核酸の合成を達成し、残りもヌクレオシド合成を達成できる見込みである。本項目は、当初の計画以上に進展していると考えている。 以上のように、本研究は全体的に順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策は、原則としてこれまでと同様の方策に準ずるが、加えてAONの低分子化合物との複合体化を志向した新たな項目を開始する。 すなわち、核酸医薬の配列決定法の開発を目指し、配座探索プログラムの構築を引き続き実施する。R二乗値が大きくなった本年度の結果を基に、変数の圧縮や、他の解析法を用いて検討する。また、実際の実験結果と照らし合わせる事で構築してきたパラメータの有効性を考察し、場合によっては新たなパラメータ導入の必要性を検討する。この項目はこれまで通り、バイオインフォマティクスの専門家である大阪大学薬学研究科高木達也教授と連携して進める。 また、オリゴ人工核酸合成の効率化に関しては、反応温度というこれまでに検討される事が少なかった項目に注目し、加熱やマイクロ波照射を利用する事で、縮合時間の短縮の可能性を検討する。 人工核酸素材合成に関しては、これまでに興味深い結果が得られたカチオン性官能基導入型人工核酸や低極性化人工核酸の開発を引き続き行うほか、ピラノシド核酸のオリゴ核酸への導入も進める。これら新たな人工核酸については、各種分光学的解析を含めて様々な視点から性質を明らかにする。さらに新たな項目として、特定臓器への集積または特定部位での薬効等が確認されている低分子化合物をAONと複合体化するべく、その誘導体化や複合体化に着手し、AONの機能強化への準備を進める。これら項目については、核酸合成の専門家としても医薬基盤研究所森廣邦彦特任研究員と連携して進める。 連携研究員として医薬基盤研究所森廣邦彦特任研究員が本研究に参画するが、研究計画そのものの大きな変更や、研究を遂行する上での大きな問題点はない。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] Amido-Bridged Nucleic Acids (AmNAs): Synthesis, Duplex Stability, Nuclease Resistance, and in Vitro Antisense Potency.2012
Author(s)
Aiko Yahara, Ajaya Ram Shrestha, Tsuyoshi Yamamoto, Yoshiyuki Hari, Takashi Osawa, Masaki Yamaguchi, Masaru Nishida, Tetsuya Kodama and Satoshi Obika
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Journal Title
ChemBioChem
Volume: 13
Pages: 2513-2516
DOI
Peer Reviewed
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