2014 Fiscal Year Annual Research Report
核酸化学と情報科学の融合による革新的アンチセンス医薬創製基盤の構築
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24249007
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小比賀 聡 大阪大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (80243252)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
兒玉 哲也 名古屋大学, 創薬科学研究科, 准教授 (00432443)
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Project Period (FY) |
2012-05-31 – 2016-03-31
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Keywords | アンチセンス核酸 / ゲノム創薬 / 核酸医薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
アンチセンス医療における課題解決のため、H26年度は以下の項目を実施した。 ・多数の決定木を利用した集団学習アルゴリズムであるランダムフォレストを用い、マウスPCSK9を標的とした二値分類(高活性と低活性)モデルを作成した。その結果、アンチセンス分子(AON)の活性グループを88%と高い精度で分類するモデルを構築することができた。またモデル構築に用いた各説明変数の重要度から、AONの活性がAON・標的mRNAの二次構造と関連することがわかった。本モデルを利用することにより、標的mRNAの発現を50%以上抑制する効果の高いAON候補をあらかじめスクリーニングすることができるようになる。 ・効率的なAONの人工核酸修飾を達成するため、AONの伸張過程での反応温度を昨年度に引き続き検討した。今年度は縮合反応の効率が悪い人工ヌクレオシドのオリゴマー化について検討した。例えば、反応の加速を期待して加熱条件での検討したが、縮合反応の進行後に鎖切断が進行したと考えられるオリゴ核酸の断片化が問題となる事が分かった。糖部2'位に求核性の高い原子(例えばセレン)をもつ人工核酸ではその現象は顕著であった。 ・6員環性人工核酸として、昨年度の研究で興味深い性質を見いだした3'-6'結合型ピラノシド核酸の熱力学解析と3'-5'結合型ピラノシド核酸のチミジン類縁体の合成を実施した。その結果、これまで応用例が少なかったピラノシド核酸類がアンチセンス分子として有効に機能する可能性を見いだすことに成功した。 ・AONの体内動態の制御を目的として生体成分能調節化合物のアジド誘導体とアセチレン修飾したAONとの複合体化を実施した。50ナノモルスケールのホスホロチオアートDNAで複合体化を検討したところ、Cu-TBTAを用いた条件において最大30%程度で複合体化する事に成功した。また、複合体の細胞内取り込み実験の条件検討を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、アンチセンス医薬に焦点を絞り、その問題点を洗い出すとともにそお解決に向けて研究を遂行する事で、海外に遅れをとっている核酸創薬の前進を目指すものであり、本年度は以下の項目について検討した。 配列探索プログラムの開発では、計画通りにマウスPCSK9遺伝子を標的としたアンチセンス核酸の二値分類モデルの作成に成功した。本モデルの利用により、標的mRNAの発現を50%以上抑制する効果の高いAON候補をあらかじめスクリーニング出来る事から、今後の実験の時間や費用の削減を期待できる。 オリゴ核酸の合成の効率化の検討では、合成時間の短縮をめざして当初予定通り人工核酸合成おける反応温度を検討した。昨年度合成したSeLNAを用いて手動加温下で縮合反応を実施したところ、鎖切断由来の断片化オリゴの生成が顕著となった。一方、高濃度反応液(0.1 mol/L)では他の例と同様に反応効率が上昇し、最終的なオリゴ収量の上昇につながった。精製の効率を考慮すると合成時間の短縮よりも合成精度の向上が重要であると判断できる。 さらに、人工核酸素材として3'-6'結合型ピラノシド類の機能を評価し、これまでに世界中の研究者が有用な性質を見いだす事が出来なかった1'位に塩基をもつピラノシド核酸から初めてAONとしての利用を期待できる性質を見いだす事に成功した。さらに、3'-5'結合型人工核酸の合成にも着手し、本項目は計画以上に進展しているといえる。 加えて、生体成分機能調節化合物とAONとの複合体化を実施し、最大30%程度で複合体化する事に成功した。このAONの取り込み評価を行うための予備実験として、生体成分機能調節化合物と蛍光化合物との複合体を用いて細胞取り込み実験の条件検討を行い、化合物の取り込みを蛍光によって判断できることを明らかにしている。 以上のように、本研究は概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方針は原則としてこれまでと同様の方策に準じるが、ヒトでの利用を想定したAONの実情をより反映させる。例えば、リン酸ジエステル結合まわりの修飾に着目した実験では、リン酸ジエステル結合をもつAONに代えて現在のAON研究で主流なホスホロチオアートAON(S-AON)での実験を中心に行う他、中性主鎖構造をもつAON(N-AON)を新たに合成し、その機能性の違いを議論することで、よりヒトでのAONとしての利用価値の高い修飾法を示す。N-AONは、S-AONとは異なる吸収分布を期待できる。また、核酸医薬配列探索設計法の開発においては精度の高いプログラム開発方法を探索することを目的にしていたため、これまではマウスでの実験結果をバイオインフォマティクス(コンピュータ実験)研究に取り入れた研究を行ってきた。ヒトで実験を実施してその結果を取り入れることは出来ないものの、できるだけヒトPCSK9など他生物種の蛋白質にも拡張可能なモデルの構築を目指す。この項目は、これまで通りバイオインフォマティクスの専門家である大阪大学薬学研究科高木達也教授を連携して進める。
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Research Products
(12 results)