2012 Fiscal Year Annual Research Report
抗原取り込みに特化した特殊腸管上皮M細胞の統合的理解
Project/Area Number |
24249029
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
大野 博司 独立行政法人理化学研究所, 免疫系構築研究チーム, チームリーダー (50233226)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金谷 高史 独立行政法人理化学研究所, 免疫系構築研究チーム, 研究員 (20553829)
中藤 学 独立行政法人理化学研究所, 免疫系構築研究チーム, 特別研究員 (20584535)
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Project Period (FY) |
2012-05-31 – 2015-03-31
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Keywords | M細胞 / 分化 / RANKL / Spi-B / GP2 / サルモネラ / 腸管免疫 |
Research Abstract |
腸管上皮幹細胞にM細胞誘導能を有するサイトカインRANKL刺激後3~6時間と比較的早期に、転写因子Spi-Bの発現が誘導されることを見出した。そこでSpi-B欠損マウスのパイエル板上皮を免疫組織化学法にて観察した結果、Spi-B欠損マウスではGP2陽性のM細胞が欠失していることが示唆された。これに一致して、電子顕微鏡による観察でもM細胞に特徴的な微絨毛を持たずM細胞ポケットを形成して樹状細胞などの免疫細胞を抱え込む像を呈する細胞は見いだせなかった。このようにSpi-B欠損マウスはM細胞を持たないことが示唆された。そこで次に、Spi-B欠損マウスおよび野生型マウスにM細胞から取り込まれるサルモネラを投与し、菌のパイエル板への移行やその後のサルモネラ特異的T細胞応答を調べた結果、Spi-B欠損マウスでは、それらが著しく低下されていた。したがって、Spi-B欠損マウスでは正常なM細胞の分化が傷害される結果としてM細胞が欠落しており、そのために本来M細胞によって取り込まれるサルモネラなどの細菌に対する粘膜免疫応答が障害されることがわかった。 また、われわれが見出したM細胞特異的に発現する細菌受容体GP2を標的とするワクチン送達法に関しては、モデル抗原であるOVAと抗GP2抗体との融合分子を用いた免疫反応において、より少量のOVAでマウスに免疫寛容を誘導できることから、抗GP2抗体との融合タンパク質は、より効率的な経口免疫や経口ワクチンのデザインに有効であることが示唆された。 腸管上皮特異的にGPIアンカータンパク質を欠失する腸管上皮特異的Pig-a欠損マウスでは、C. rodentium感染やDSS腸炎に対する感受性が高かったが、感染や炎症誘導前の小腸・大腸上皮の遺伝子発現パターンは野生型と大きな違いはなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
M細胞の分化に関しては、M細胞分化においてSpi-Bがマスター転写因子として必須であることを示し、さらに、Spi-B欠損マウスを用いて、M細胞が細菌抗原に対する長官免疫応答に必須であることを示すことができた。またSpi-Bの上流で働く転写制御因子の候補も見出している。さらに、慶應大学・佐藤俊朗博士との共同研究により、マウスおよびヒトの小腸、大腸クリプトの腸管上皮幹細胞からオルガノイドを誘導する技術を習得し、このオルガノイド培養系にRANKLを添加することにより、M細胞が効率よく分化誘導されることも確認しており、この系を用いて今後M細胞分化の分子メカニズムの詳細な検討が可能になると考える。 GP2を標的とするワクチン送達系の構築に関しては、抗GP2抗体とのストレプトアビジンとの融合タンパク質を用いた系に於いては、その有効性を示唆する結果が得られるつある。また、GP2特異的アプタマーに関しても、人工塩基を用いたDNAアプタマーライブラリーのスクリーニング系は構築できており、次年度にはGP2特異的DNAアプタマーを取得できると期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
Spi-Bの上流でM細胞の分化に関わるシグナル伝達系として、NF-kB経路が働いていることが示唆された。そこで、canonicalおよびnoncanonicalのNF-kBの2つの経路に関わる分子群である、TRAF6, TRAF3, NIK, RelBなどの遺伝子改変マウスを用いてこれらの分子のM細胞分化における役割を詳細に検討する。 腸管のクリプトをWntなどの因子の存在下にマトリゲル内で3次元培養することにより、クリプトの幹細胞が増殖・分化して吸収上皮、杯細胞、Paneth細胞などすべての腸管上皮サブセットをもった"オルガノイド”を形成する。そこにM細胞分化誘導因子であるRANKLを添加すると、M細胞の文化が誘導されることが示された。そこでこのオルガノイドによるM細胞分化誘導系を用いて、RNAseq法によりM細胞分化に関わる未知の分子群や、Spi-Bの下流で働く分子群の同定を試みる。 GP2特異的アプタマーに関しては、人工塩基を用いたDNAアプタマーライブラリーのスクリーニング系を用いて、GP2特異的DNAアプタマーの取得を試みる。 寄生虫感染におけるM細胞の役割はこれまで全く検討されていない。そこで、Toxoplasma gondiiおよびHeligmosomoides polygyrusを野生型ならびにM細胞を持たないSpi-B欠損マウスに感染させてM細胞の役割を検討する。
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