2012 Fiscal Year Annual Research Report
心臓大血管形成における広域器官形成ネットワークの概念と組織構築モデルの確立
Project/Area Number |
24249047
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
栗原 裕基 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20221947)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
富田 幸子 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (40231451)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 心臓 / 血管 / 発生・分化 / 循環器 / 再生医学 |
Research Abstract |
本研究では、心臓大血管形成における細胞起源の多様性と動態に着目し、従来知られていた心大血管の起源領域に加え、心臓大血管形成に関与する可能性が考えられる新しい領域として、i)頭部神経堤、ii)第1,2鰓弓(中胚葉組織を含む)、iii)心流入路~肺形成領域中胚葉の3領域に注目し、心大血管構造への寄与について解析した。その結果、以下の知見を得た。 1.これまで心臓形成への関与が知られていなかった頭部神経堤細胞が心流出路に遊走し、一部は冠動脈近位部の平滑筋に分化すること、エンドセリンシグナル欠損によってその過程が障害され、冠動脈拡張病変をきたすことを明らかにした(Arima et al., Nat. Commun. 2012)。さらに弁形成にも関与することを見出し、中胚葉由来の二次心臓領域との相互作用などによる弁形成の機構について解析を進めている。 2.心臓神経堤細胞(頭部神経堤細胞より尾側の神経外胚葉に由来)による大血管形成に関わるエンドセリンシグナルが、頭部形成と異なってDlx5/6に依存しない新たな機構によることを明らかにした(Kim et al., Mech Dev. 2013)。 3.第1,2鰓弓由来の中胚葉由来細胞が冠動脈形成に関与する新しい細胞系譜の可能性を見出し、蛍光ラベリングや移植実験などによってその詳細に関する解析を行っている。 4.新しい技術として、マウス‐鳥類間のキメラ移植実験による心臓形成の解析系を確立し、マウス心流入路中胚葉が刺激伝導系の形成に寄与することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
冠動脈の発生に関して、これまで心臓発生に関与することが知られていなかった前耳胞領域の頭部神経堤細胞が冠動脈平滑筋細胞の起源となることを明らかにするとともに、この細胞群が第2鰓弓領域から心流入路を通って心臓内に遊走し、「心臓神経堤細胞」として従来知られていた後耳胞領域に由来する神経堤細胞と異なる分布様式をとること、冠動脈平滑筋への寄与がエンドセリンA受容体を介するシグナルに依存し、その異常により冠動脈形成異常が生じることを明らかにした。これらの成果は、2012年11月にNature Communications誌上に発表した。心流入路の細胞群に関しては、マウス→ニワトリ胚のキメラ移植実験により、移植したマウス細胞が心筋層に取り込まれ、心筋細胞に分化して生着している状態が観察された。本成果により、心流入路の細胞群が心臓内でどのような細胞に分化しうるのかを肺発生後期まで追跡することが可能になり、現在その解析を進めている。また、血管新生のin vitroモデルにおいて内皮細胞を選択的に蛍光ラベルしてその動態をタイムラプスでイメージングするとともに、現在その動態に基づく一次元の離散的運動モデルを作成してシミュレーションを試み、細胞動態の制御機構について理論と実験の両面から研究を進めている。以上より、現段階では研究はほぼ予定通りに順調に進んでいると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
1.心臓大血管形成に寄与する細胞間ネットワークの解明 前年度に明らかにした頭部神経堤、第1,2鰓弓(中胚葉組織を含む)の冠動脈形成への寄与に関して、特に神経堤細胞の冠動脈平滑筋細胞への分化に注目し、その運命決定の時期と分子機序、心臓を構成する他の細胞との相互作用について、Cre発現レポーターマウスと前年度に確立したマウス-ニワトリ胚キメラ移植実験等を用いて解析を進める。さらに、神経堤細胞をマーキングしたWnt1-Cre;ROSA26-lacZマウス、エンドセリンA受容体発現細胞の系譜をマーキングしたEdnra-CreERT2;ROSA26-lacZマウスなどを用いて冠動脈病変モデル、ドキソルビシン負荷心筋傷害モデルなどを作成し、前年度に明らかにした頭部神経堤由来の細胞がどのように病態形成に寄与するかを解析する。さらに、心流入路細胞のマウス-ニワトリ胚キメラ移植とin vitro培養によるコロニー形成実験を進め、刺激伝導系を形成する細胞群の同定とともに、その分化を制御する因子を解明する。 2.広域器官形成ネットワークの概念と組織構築モデルの確立 前年度の研究において、頭部神経堤細胞の心臓形成への寄与が明らかになり、さらに予備実験で鰓弓の中胚葉由来細胞の新たな役割も明らかになりつつある。特に、ホメオボックス遺伝子のこれらの知見は、頭部形成と心臓形成の間に新しい関連が明らかにできることが予想され、本年度は新しい流れとして上記の実験系と新たなホメオボックス遺伝子ノックインマウスにより、ホメオボックス遺伝子による領域および分化調節の分子機序を中心に解析を試みる。さらに、心臓大血管形成における特定細胞の蛍光ラベルによる可視化と動態のコンピューター解析法をさらに改良し、特に血管新生に関しては現在行っている数理モデル作成とシミュレーションを進め、新たな細胞動態制御パターンの解明を試みる。
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Research Products
(35 results)