2015 Fiscal Year Annual Research Report
うつ状態に伴う構造可塑的変化とその病態における意義の解明
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24249063
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
加藤 忠史 国立研究開発法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, チームリーダー (30214381)
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Project Period (FY) |
2012-10-31 – 2017-03-31
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Keywords | うつ病 |
Outline of Annual Research Achievements |
変異Polgトランスジェニックマウスは、周期的に自発的なうつ状態を示す。ストレスによるうつ様状態では、内側前頭葉において、神経細胞の樹状突起に萎縮、スパインの減少などが生じていることが報告されているが、このトランスジェニックマウスが、同様の神経細胞の形態学的変化を示すかどうかは明らかではない。そのため、ゴルジ染色切片を用いて、神経細胞の樹状突起および樹状突起スパインの形態学的な定量的解析を行い、このトランスジェニックマウスのうつ状態に伴う神経細胞の形態変化を調べた。変異Polgマウスのうつ状態、寛解期および野生型マウス、各群5匹(54~65週齢)を用いた。ゴルジ染色キットにより染色し、200μm厚の冠状断切片を作成し、下辺縁皮質(Infralimbic Cortex)のlayer II/IIIから錐体神経細胞を1匹につき5個ランダムに選択して解析した。細胞体のサイズ、樹状突起の長さ、樹状突起の分岐の解析では、3群で有意差は見られなかった。総スパイン数についても、基底樹状突起、尖端樹状突起のいずれにおいても明らかな差は見られなかった。さらに、スパインを形態により、Thin型、Mushroom型、Stubby型に分けた解析を行ったところ、尖端樹状突起のスパインの種類に差が見られた。変異Polgマウスでは、Thin型が増加し、Mushroom型、Stabby型が減少していた。この所見は、変異Polgマウスではスパインが未成熟であるということを示唆していると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、スタッフの退職等で遅れたことがあったが、その後は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
変異Polgマウスで、スパインの形状に差が見られ、T型が増加し、M型、S型が減少していた。今回の所見は、変異Polg Tgマウスではスパインが未成熟であることを示唆している。うつ病モデル動物(ラット、マウス)を用いた研究では、慢性予測不能軽度ストレス(CUMS)において、海馬CA3錐体細胞の樹状突起の長さの減少、分岐の減少、スパイン密度の減少などが報告されている。mPFCでは、ラットにおける慢性拘束ストレスにより、Prelimbicでキノコ型スパインが減少し、T型スパインが増加するとの報告もあるが、スパイン密度全体が減っている、樹状突起の短縮など、より顕著な変化を報告している論文が多い。これらの変化は、若年ラットでは回復するが、高齢ラットでは回復しないとの報告もあることから、一度うつ状態を経験すると、スパイン形態が回復しない可能性も考えられる。今後、二光子顕微鏡によるインビボでの神経細胞形態観察法を確立し、動物モデルにおける検討を行いたい。
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