2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24251014
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Section | 海外学術 |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西秋 良宏 東京大学, 総合研究博物館, 教授 (70256197)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 邦夫 東京大学, 総合研究博物館, 研究員 (10272527)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 考古学 / 新石器時代 / コーカサス / 農耕牧畜 / 狩猟採集 |
Research Abstract |
本研究は、西アジアに起源する最古の農耕牧畜経済が北方に拡散した過程をアゼルバイジャンにおける実地調査によって解明することを目的とする。平成24年度は、次のような研究をおこなった。 (1)野外調査。7月から8月にかけてギョイテペ遺跡と ハッジ・エラムハンル・テペ遺跡を発掘した。前者は、当地新石器文化発展期の長大な層序を有する遺跡である。深堀りと広域発掘を組み合わせ、集落の構造、道具、食性などの時期的変遷を調べた。一方、 ハッジ・エラムハンル・テペは新発見の遺跡である。試掘をおこなった結果、ギョイテペ遺跡よりもさらに古い、前6千年紀最初期にまでさかのぼる南コーカサス地方最古の新石器時代遺跡であることが判明した。早速、成果をとりまとめ学術誌に投稿した。さらに、周辺地域を踏査し、これらの遺跡群を当地の歴史地理的コンテキストに位置づける試みもおこなった。 (2)標本調査。出土した土器、石器、動物骨、植物骨などを多面的な角度から分析した。特に成果があったのは黒曜石の産地分析である。アゼルバイジャン国において本格的な産地同定がなされた初めての研究成果となる。また、ハッジ・エラムハンル・テペとギョイテペ出土遺物を対象として、農耕牧畜経済が定着していく様について詳細な比較研究を開始した。 (3)成果公開。調査の成果をアゼルバイジャン市民に伝えるべく、現地国研究者とともに解説小冊子を作成した。また、ギョイテペ遺跡を保存、公開する仕組みを構築する取り組みをおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
西アジアに起源する初期農耕が周辺地域にいかに拡散したかという問題は、近年、関心を集めているテーマであるが、北方への拡散、すなわち、コーカサス地域の新石器化は最も解明が遅れていた問題であった。3年前、ユーロ圏研究者による大規模な共同研究が開始され、一定の成果をあげつつあるが、代表者が主宰する本研究課題が卓越した成果をあげていることは明らかである。 すなわち、ギョイテペ遺跡において精細編年を確立し、さらには集落構造を解明したことは、同地域で展開した最初期の農耕社会の定着、発展プロセスに新たな光をあてた。さらに、平成24年度に新たに発掘を開始したハッジ・エラムハンル・テペ遺跡においては、アゼルバイジャン共和国最古の新石器村落を発見するにいたった。いずれもユーロ圏の研究者チームが明らかにしていない側面であり、国際的に注目される成果となった。 ギョイテペは2008年度から継続して発掘している遺跡であって、成果の予想は可能であったが、 ハッジ・エラムハンル・テペについては発掘初年度において上記の成果をあげた点、当初の計画以上に研究が進展したと言いうる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に沿って着実に野外調査、標本分析を遂行する。すなわち、ギョイテペ、 ハッジ・エラムハンル・テペなどアゼルバイジャン新石器遺跡について、次の研究を実施する。 (1)ギョイテペ遺跡。発掘を継続する。深堀りと広域発掘を組み合わせ、集落の構造、道具、食性などの時期的変遷を調べる。また、黒曜石、植物珪酸化石、動物DNAなど各所の理化学的分析をおこなう。成果を学術誌に投稿するほか、モノグラフとして刊行する。 (2)ハッジ・エラムハンル・テペにおいては発掘区を拡大し、ギョイテペで把握できたような集落構造を明らかにする。それによって、ギョイテペであきらかになった農耕社会発展期の様相の初期段階の状況を確認する。各種標本についても、ギョイテペ同様の理化学分析を実施し、比較材料とする。 (3)周辺地域のサーベイ。 ハッジ・エラムハンル・テペ遺跡はギョイテペ遺跡周辺で実施した遺跡踏査によって発見したものである。今後も踏査を継続し、さらに古式の新石器時代遺跡が存在しないかどうか見極める。
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Research Products
(15 results)