2012 Fiscal Year Annual Research Report
アルプス自然流域に残された生物多様性の大規模ゲノム解析による解明とその保全
Project/Area Number |
24254003
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大村 達夫 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30111248)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉村 千洋 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (10402091)
竹門 康弘 京都大学, 防災研究所, 准教授 (50222104)
風間 聡 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50272018)
西村 修 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80208214)
渡辺 幸三 愛媛大学, 理工学研究科, 准教授 (80634435)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際研究者交流 / ドイツ / イタリア / 生物多様性 / DNA / 洪水氾濫原 / 生息場 / 河川 |
Research Abstract |
研究期間の初年度となる平成24年度では,主に課題1「流域環境と生態系機能の調査」を実施し,課題2「DNA型コピー数平準化法の開発」についても一部検討を行った。 課題1では,調査対象流域エリアを視察し,最適な調査地点候補として30地点を4流域から選定した。これらのうち,上流から中流域に9地点(Piave川1地点, Adige川5地点, Brenta川3地点)で,来年度以降行う課題2や課題3の遺伝子解析に用いるサンプルとして,流水性生息場と止水性生息場を区別して底生動物群集の定量採集を行った。さらに,氾濫原の物質循環を理解する基礎的データとして餌資源(粒状性有機物)の安定同位体(C,N)解析も行った。さらに,研究対象流域の広いエリアの衛星画像を入手し,広域環境解析に着手した。 課題2では,試験的に集めた水生生物群集サンプルの次世代DNAシークエンシング解析(Roche 454 Sequencer)を行い,当初の予想通り,DNA型間でコピー数が大きく異なる事実を確認した。このことは,次世代DNAシークエンシング解析に基づく種多様性を正確に実施するには,DNA型コピー数の平準化が必要であること意味する。 また,海外共同研究機関のトレント大を訪問し,H25年度以降に着手する課題4「河川地形履歴に基づく種多様性と生態系機能の評価」に向けた打ち合わせを行うとともに,トレント大学がタリアメント川中流のFlagognaならびにCornino付近の山頂に設置した自動カメラの画像データの提供を受け,データの予備的な解析を終了した。河床地形の履歴が既知となった止水的生息場計30カ所選び,微生息場の多様性や水質等の環境要因測定と底生動物群集の定性採集を行った結果,流水適応した種群では若い生息場で種数が多いのに対して,止水適応した種群では古い生息場で種数が多い傾向が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究期間の初年度となる平成24年度は,研究計画通り進んだ課題,予定より一部遅れが生じた課題,計画以上に進んだ課題があったが,研究課題全体としては,本年度の当初研究目的をおおむね達成することができたと考えられる。 課題1「流域環境と生態系機能の調査」は,サンプリング地点の設定,サンプリング,生態系機能,広域環境解析の着手など,ほぼ当初の予定通り研究は進捗した。課題2「DNA型コピー数平準化法の開発」は平準化法の開発自体には至っていないが,開発の前提として必要なDNA型コピー数が不均一(平準ではない)という事実をつかむことに成功した。また,本年度は本格的に着手することを計画していなかった課題4「河川地形履歴に基づく種多様性と生態系機能の評価」では,研究計画以上の進捗を見ることができた。タリアメント川の山頂カメラの時系列画像データを一部解析し,画像範囲内のワンド,タマリ,背水路等の各生息場が存在した時間(日齢)を定量化まで成功した。さらに,各生息場の底生動物サンプルの採取も既に行い,群集データの解析にも一部着手した。
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Strategy for Future Research Activity |
上述したとおり,初年度となる平成24年度は当初研究目的をおおむね達成することができたので,平成25年度以降も,計画通りのペースで研究を遂行していく方針である。ただし,個別研究課題ごとに進捗ペースにややムラが見られるので,各課題を担当する研究分担者間の連絡調整および情報交換を研究代表者が中心となって進める対応を必要と考えられる。研究分担者が合同でフィールド調査を行ったり,国内での会議を行うなどして,課題間の進捗のムラを縮小すると共に,より効率的に研究計画を遂行する体制作りを強化していく予定である。
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