2013 Fiscal Year Annual Research Report
符号・信号処理技術アシスト高速信号伝送による高性能ネットワークセントリックLSI
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24300014
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
弓仲 康史 群馬大学, 理工学研究院, 准教授 (30272272)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 集積回路 / VLSIシステム / 等化回路 / 多値情報処理 / 時間領域信号処理 / 符号化 / プリエンファシス / 高速インタフェース |
Research Abstract |
近年、VLSIシステムの極限微細化・GHzを超える高速化・低電圧化に伴い、配線の激増、伝送波形の劣化、雑音等の諸問題が深刻となりつつある。本研究では、符号・信号処理技術を融合させた時間領域情報表現に基づき、スケーラブルな微細MOS回路技術の基本構成要素の検討とその高速信号伝送技術への応用に関する検討を行い、「ネットワークセントリック集積回路」の有効性を実証する。 今年度は昨年度に引き続き、低電圧高速信号伝送を目的とし、従来、振幅によって表現していた情報を、信号のパルス位置を時間的にシフトさせることにより表現することにより、波形の振幅情報が劣化しても時間軸情報は保存されるパルス位置変調(PPM: Pulse Position Modulation)方式の検討を行った。さらに、伝送路の周波数特性に応じて、信号の周波数スペクトル形状を変更可能な符号化技術の考察とその有効性を様々な伝送路を用いて評価した。 高速信号伝送システムの評価の際、シミュレーションにおける伝送路のモデリングの高精度化が重要であることから、試作した評価ボードの伝送路の実測結果を利用したCo-simulation(協調シミュレーション)環境の構築に関する基礎的な検討を行った。ネットワークアナライザから取得したSパラメータをシミュレータのモデルとして利用することにより、シミュレーション結果が周波数特性、過渡応答、アイパターン共に、実測結果に近い高精度なシグナルインテグリティ評価を可能とした。さらに、測定で得られたSパラメータを基に、畳み込み、逆FFT等の数値計算により、回路シミュレータでは実現が困難な信号源や、複雑な信号処理を有する波形等化回路を含めた伝送路モデル全体を評価可能なシミュレーション環境構築の検討も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H24~H25年度の2年間の課題実施において、符号・信号処理技術を融合させた時間領域情報表現に基づき、スケーラブルな微細MOS回路技術の基本構成要素の検討とその高速信号伝送技術への応用に関する検討を予定通り実施しており、その結果は関連の国内学会(多値論理研究会等)、および国際会議(多値論理国際シンポジウム等)、論文に毎年発表を行っている。 会議等における内外の研究者らとの技術討論の結果、(1)高速信号伝送の回路シミュレータによる評価においては、伝送路のモデリングが重要であること、(2)これまでアナログ回路で構成されてきた波形整形回路をディジタル回路で構成する技術が近年注目されているなどの有益な知見が得られ、最終年度の研究計画の改善にむけたPDCAサイクルを有効に実行できた。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、これまでの研究のとりまとめを行うと共に、「スペクトルシェーピングに着目した高速信号伝送のための符号化技術に関する検討」、「シグナルインテグリティ評価のためのシミュレーション環境の構築」に関する検討を行う。 「スペクトルシェーピングに着目した高速信号伝送のための符号化技術に関する検討」:集積回路システムにおける高効率な信号伝送を目的として、符号化技術の高速インタフェースへの適用に関する基礎的な考察を行う。伝送線路において失われた高周波成分は、波形等化等の信号処理技術で補正可能であるが、同様の波形補正効果が符号化技術を用いて実現可能であるかを検討する。また、THP(Tomlinson-Harashima Precoding)と呼ばれる高性能ディジタル波形等化回路の考察等も行い、高速信号伝送のための符号化技術に関する統一的設計手法を検討する。 「シグナルインテグリティ評価のためのシミュレーション環境の構築」:H25年度に基礎的な考察を行った伝送路の実測結果を利用したCo-simulation(協調シミュレーション)手法の改良を行い、より実測結果に近い高精度なシグナルインテグリティ評価のためのシミュレーション環境の構築を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初備品購入を予定していた高速な計測装置が、為替レートの影響、値上げ等により、予算をオーバーすることが判明した。その代替として、Signal Integrity Studioと呼ばれる測定器とほぼ同等の波形をシミュレーションで検証可能なソフトウェアの購入を行った。シミュレーション波形と、他研究室所有の高速な測定器を用いて測定した波形との比較を行った結果、充分な精度で高速信号伝送の波形評価が可能であることが確認された。 上記の結果として、次年度に繰越金が生じることとなったが、最終年度の予算と合算し、高速なシミュレーション実行のためのコア数の多いCPUを有する高性能ワークステーションの購入、および高速信号評価用の伝送路基板の外注費用等に充当する予定である。
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