2013 Fiscal Year Annual Research Report
革新的解析手法による高速伝送信号の多並列指向型超高性能CAEシステム
Project/Area Number |
24300018
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
浅井 秀樹 静岡大学, 電子工学研究所, 教授 (40175823)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 革新的解析手法 / 高速伝送回路設計 / 多並列CAEシステム / シミュレーション工学 / パワー・インテグリティ / シグナル・インテグリティ |
Research Abstract |
本研究課題では、大規模集積化システムの設計に向け、大規模混合領域に対応可能な多並列指向型の高速伝送信号CAE(Computer-Aided Engineering)システムの構築を目的とする。この超高速CAEシステムを、これまでに提案してきた革新的な独自の多並列指向型解析アルゴリズムに対して、さらに、非線形能動回路の解析機能、マルチレート性利用技術等を統合化し、それを多並列計算システム上に実装する。最終的に、世界最高性能の高速伝送信号CAEシステムの構築に挑戦する。 25年度は、従来のSPICE系手法と比較して数十倍以上高速な蛙跳び手法を並列分散処理化することで解析効率をさらに飛躍的に向上させることを検討した。この高速化・効率向上は、GPU付きPCクラスタシステムを構築して実現を目指し、本システムを用いて提案手法の評価実験を行った。その結果、解析効率の飛躍的な向上を達成した。 GPU方式は高速ではあるが個々のメモリ容量が数ギガバイトであり、超大規模集積化システムのシミュレーションにおける超多量データの一括格納には不向きである。本課題では、GPU付き計算機のクラスタ化を実現し、クラスタ内での負荷分散とデータ通信の最適化、GPU側とCPU側での処理についてのタスク割り当てについて検討した。 結果として次のような結果が得られた。蛙跳び手法(LIM)は、電源分配網(PDN)の解析に対して、SPICE系手法と比較して約100倍高速である。また、LIMをGPU上に実装することで、10倍程度の高速化が得られ、マルチGPU化(8GPU)によれば、さらに6倍以上の高速化が達成できた。本システムによれば、大規模PDN解析のSPICE系解析と比較して6000倍以上の高速化が実現できており、従来、きわめて困難とされてきたパワー・インテグリティ解析実現への基盤技術が確立されつつあると確信する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大規模電源分配網(PDN)の解析の高速化という観点から研究を進め、マルチGPUシステムの構築および、革新的解析手法の基本アルゴリズム(LIM)の実装を行い、その解析効率を検証した。LIMはSPICE系手法と比べて数十倍~百倍程度高速lであるが、25年度、これを並列分散処理化することに成功した。その結果、8GPU利用に基づく高並列化により、さらに、60倍以上の高速化を達成した。本システムによれば、大規模PDN解析がSPICE系手法と比較して6000倍以上の高速化を実現しており、本研究課題の最終研究目的達成に大きく前進した。以上のことから、概ね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度、二年度共に順調に進展した。特に二年目において、マルチGPUシステム(GPUを付随する高性能PCによるクラスタシステム)上での基本アルゴリズム(LIM)の構築が順調に実現でき、基本アルゴリズム(蛙跳び手法)とGPU、マルチGPUシステムとの適合性が十分に検証され、システム全体として大幅な効率化、高速化が達成された。当初の予定に変更は無く、26年度は、非線形素子への対応やマルチレート技術の導入など、粛々と計画を進める予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度、GPUを付随する高性能PC、さらに、マルチGPUシステム(GPUを付随する高性能PCによるクラスタシステム)の構築並びに、基本アルゴリズム(LIM)の実装に注力した。特に、マルチGPUシステムへの実装、および、プログラム調整は、分散処理に適した対象システムの分割に関する理論やそれに対応したGPUデバイスによる処理など、検討事項が多く、その高速化の実現に時間と労力を必要とした。従って、本課題に対する本年度の対外発表件数などが抑制され、予算執行が計画より少なくなった。 一方で、初年度、二年度共に研究進捗は、順調であった。基本アルゴリズムの構築が概ね予定通りに実現でき、大幅な効率改善が達成された。当初の予定に変更は無く、非線形への対応など、粛々と計画を進める予定である。 26年度予算は、基本的に、研究員の半年間の雇用費と対外発表経費として計画している。雇用費は、当初計画と殆ど変更は無い。 25年度の研究進捗は、価値があると考えており、このことにより、26年度の対外発表は多くなると期待している。二年目の成果が既に重要な国際会議に採択され、順調に進んでいる。25年度予算からの繰越金を含め、有効活用する形で、本研究室から多くの研究員、大学院生による発表を計画しており、予算執行も問題ないと考えている。
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