2013 Fiscal Year Annual Research Report
三次元非剛体形状を持つ仮想エージェントの動作発現とその制御機構について
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24300035
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
長橋 宏 東京工業大学, 像情報工学研究所, 教授 (20143084)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青木 工太 東京工業大学, 像情報工学研究所, 助教 (90447532)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 反応拡散系 / 活性因子 / ばねモデル / モデル変形 / ばね質点モデル / LOD表現 / 動的特性 |
Research Abstract |
平成25年度は,形状変形の自律的かつ分散的な制御を行うために,反応拡散系モデルの一種で,生体系の神経伝達における動的変化をモデル化したFitzHugh-Nagumo方程式に基づいて,その活性因子の挙動を3次元モデルの形状変形に利用するシステムを構築した.このシステムでは,活性因子の状態を,物体モデルの形状変形制御因子と見なして3次元モデルの形状面に写像する.任意形状を持つモデルの表面上に2次元空間上の活性因子を写像するために,3次元モデルのパラメータ化手法の一種であるFloaterアルゴリズムを改良して用いた.そして,写像された活性因子の状態変動を,3次元メッシュモデルの各頂点上に作用する力として定義した.また,これらの力による物体の形状変形をより自然に行うために,メッシュの各頂点間をばねで連結したモデルを導入し,各頂点に写像された力による物体の形状変形を実現した.さらに,反応拡散系における複数のパラメータを変化させ,その時のモデルの変形具合を観測した.変化させるパラメータの数は少数であり,モデルの形状変形によるモデル内部の体積変化を計測することで,パラメータ値の制御に関する指針を得ることができた. 一方,人体の臓器や組織をモデル化する上で重要な役割を担うMass Spring Model(MSM,ばね質点モデル)表現についても,異なる種類の素材を表現する上で欠かせないヤング率とポアソン比の可変化を実現するモデル化法を新たに考案した.提案したMSM法によって,素材の物理的特性を精度よくモデル化することが可能となった.さらに,モデルのLOD表現における近似精度を従来手法と比較した結果,上記の静的特性に加え,動きに伴う動的特性においても提案手法が高い近似精度を持つことが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3次元メッシュモデルの形状変形に関しては,反応拡散系に基づく複数のモデルを用いた形状変形法を実現した.また,この系で定義される複数のパラメータを変化させた場合のモデルの形状変形についても,ある一定のパラメータ範囲内での形状変化を制御可能であることを確認した.これは,モデルの動作獲得を教師無し学習によって実現する上で重要な情報であり,自律的動作生成実現のための基盤技術となる部分である.また,一般的な反応拡散系での3次元モデルの形状変形実験は概ね計画通りに進展しており,引き続き当初の計画に沿って進めていくが,制御の容易さという観点からのモデル選定も必要であると考えている. 一方,ばね質点モデル(MSM)表現による物体の素材表現に関しても,異なる素材表現に欠かせない,ヤング率とポアソン比を可変にする新たなMSM表現法を提案した.この提案法は,自律的な動作表現の対象となる人体の臓器や組織モデルの表現において非常に有効である.また,このMSM法による物体形状表現についても,そのLOD表現のモデル近似精度が従来法と比較して,極めて優れていることを明らかにした. 以上の成果より,研究目標の達成度はおおむね順調と判断される.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの成果を踏まえ,今後は自律的機能や動作の獲得に向けて,複数の教師無し学習法を用いた学習を試すとともに,それぞれの獲得すべき機能に適した学習法を明らかにすることを第一の目的とする.このとき,物体エージェントがとる行動を,物体エージェント自身が評価するための評価関数が必要となる.この評価関数として,動作の周期性や外乱への頑強性とともに,獲得すべき機能が正当に獲得されたかを評価する関数を検討し,システムへの組み込み化を図る. 獲得すべき機能については,複数種類の機能について検討する.たとえば,毛虫や青虫,蛇などのように,自らの体を動かすことで物体モデル自身が移動や変形をする機能や,動物の肺や心臓のように,液体や気体,紛体などの被作用物に働くことでモデルの機能を達成する場合などを検討し,これらの機能の物理的特性を考慮しつつ目的に合った評価関数を定義していく.そして,導入した評価関数を最適化することで,機能獲得を自律的に学習するシステムを作成する. 一方,これらの機能を可視化する際のモデル表現の効率性に関しても,可視化の精細さに応じて,モデル自身が,自らのLOD表現を動的に変化させることができるようなメカニズムを新たに検討し,それをシステム化することを目指す.また,反応拡散系は基本的に連続系であるため,この2次元空間の量子化幅を調整することで,モデルのLOD表現と同様に,制御空間のLOD表現を実現する方法についても合わせて検討する. MSM法に基づく物体モデル表現については,そのばね定数やヤング率,ポアソン比などのモデルパラメータを動的に変化させることで物体の動きを制御する機構を開発し,反応拡散系制御空間による自律的な動き生成を実現する方法を確立する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度および平成25年度に進めてきた研究内容は,主に理論的な部分を中心としたものであり,博士学生の学位論文の中核となる部分である.この部分は学生としての本来の研究と位置づけられるため,本研究の業務委託には当たらないと判断した.そのため,当初計画で使用予定であった博士学生に対する人件費・謝金の支出を,平成26年度に実施予定の応用を踏まえた実験に支出するのが妥当と判断し,相当額を平成26年度に繰り越すこととした. 平成26年度は,2名の博士学生を中心に,サーフェスモデルおよびばね質点モデルで表現されたそれぞれのモデルの機能獲得実験を集中的に進める予定である.これらの実験は,主として手法の有効性確認のための作業という面がある.このため,人件費・謝金として,繰越金を支出する計画である.
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Research Products
(4 results)