2012 Fiscal Year Annual Research Report
系の安定化に基づくレジリエント社会コミュニケーション技術の開発
Project/Area Number |
24300064
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
|
Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
野田 五十樹 独立行政法人産業技術総合研究所, サービス工学研究センター, 研究チーム長 (40357744)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山下 倫央 独立行政法人産業技術総合研究所, サービス工学研究センター, 主任研究員 (50415759)
栗原 聡 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (30397658)
鳥海 不二夫 東京大学, 大学院・工学系研究科, 准教授 (30377775)
篠田 孝祐 独立行政法人理化学研究所, 光グリーンテクノロジー特別研究ユニット, 協力研究員 (90533191)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 知的エージェント / 情報工学 / 防災 / 人工知能 / 認知科学 |
Research Abstract |
震災が発生したときは情報の重要性が変化し、安定的な情報共有を行うことが困難となり、情報の伝搬に混乱が生じる。本年度は、東日本大震災時における情報伝搬に着目し、情報の伝搬に混乱が発生している状態、すなわち情報の不安定化が発生した際にどのような現象が見られたかを明らかにし、モデル化を行った。 まず、東日本大震災発生前後のTwitter上における情報伝搬行動を分析しどのような変化が現れたかを明らかにし、ユーザの情報に対する行動パターンの分類することを試みた。具体的には、震災前後の約4億のTweetを用いて,震災にTwitterがどのように用いられたか、特にどのようなタイミングでリツイートが行われ、どのようなユーザの情報が重要視されるのかに着目し、リツイートのモデル化を行った。そして、EMアルゴリズムによって得られた混合対数正規分布を利用して、リツイートのタイミングからユーザの情報伝播力を推定する手法を提案、SIRモデルをベースにしたエージェントシミュレーションを用いてその妥当性を検証した。その結果,各ユーザの次数を利用した情報伝播力の推定よりも高い精度で、情報伝播力を推定可能であることが示された。また、Twitter上で実施に拡散した数例のデマに対し、「拡散過程の解析」「デマ拡散のモデル化」そして「モデルの検証」を行い、SIRモデルを拡張させた拡散モデルの構築した。提案モデルによる現実の拡散過程の再現を試みた結果、現実の拡散過程を再現することに成功した。 さらに、非常時における情報伝搬を情報収集機会の選択ゲームと見做し、このゲームを試行錯誤する過程をマルチエージェント強化学習でモデル化し、システムとしての限界などの解析を進めた。具体的には、各エージェントの試行行動とエージェント間の相互作用を確率論的にモデル化し、学習行動の形式的解析を行った。その結果、試行行動による系の揺らぎに起因する最適行動獲得の限界が示され、社会的選択ゲームとしての限界を示すことができた。 また、東日本大地震発生前後のTwitterデータにおける情報伝搬構造の特徴を分析し、ネットワーク構造としての特徴量の推移の解析を行った。ここでは、約4億のTweetを用いて、Twitter空間におけるコミュニケーションを意味するTwitterの機能であるReply, ReTweetにより形成されるMentionネットワークを対象に、その構造的特長量やノードの重要性をしめす指標であるネットワーク中心性が、震災前後でどのように変化したのかを示し、コミュニケーション構造の変化を議論した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた、Twitter上における情報伝搬行動パターンの収集とユーザの分類、非常時における情報伝搬を情報収集機会の選択ゲームと見倣した分析、Twitterデータにおける情報伝搬ネットワーク構造の特徴変化の分析について、予定通りの成果を上げており、計画通り、次年度の研究テーマに入ることができる。このことから、順調に進展していると判断する。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続きTwitter上の情報伝搬の分析を行うとともに、分析結果に基づいて情報伝搬行動及び情報伝搬構造のモデル化及び解析を行い、安定化のメカニズムを明らかにする。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費については、今年度はデータ解析中心となったため、当初より少額となったが、次年度、モデル検証において計算機等が必要になると考えられ、その費用として活用する予定である。また、成果が当初想定より多く出る予定で、発表にかかる旅費等にも活用してゆく。
|