2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24300072
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
和田 俊和 和歌山大学, システム工学部, 教授 (00231035)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | パターン認識 / 異常予兆検出 / 非線形回帰 / ガウス過程回帰 / Dynamic Active Set / 時間多重解像度解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
患者や工業プラントなどが危機的状況に陥る前に,これらに取り付けたセンサデータからその予兆を検出し,対象の延命を図る問題が異常の予兆検出である.この予兆検出は,センサデータの回帰を行い,それによって推定される値と実測値の乖離を計る問題として扱うことができる.本研究では,非線形回帰の一手法であるGaussian Process Regression:GPRの計算負荷を軽減するために, 計算に用いる事例集合(Active Set)を入力に応じて動的に限定するDynamic Active Set:DASを提案した.DASの理論的基盤構築と拡張,多種の問題でこの手法の有効性を確認することが本研究の目的である.
25年度までの研究成果は以下の通りである.1)人工データを用いた回帰計算では,精度を維持したまま,全データを事例として使う場合よりも約65倍の高速化が実現できた.2)GPRにより得られた推定値と実測値との差をGPRで推定された偏差で割った「異常度」を定義した.この異常度による予兆検出は,米国Smart Signal社が特許を持つSBMよりも高感度かつ安定であることを実験により確認した.3 ) この異常度を様々な時間解像度で求めるSAGを提案した.4)ベクトル値の出力予測とその共分散行列推定法の提案と,異常度の定義の拡張を行った.
26年度は,上記4)の計算において推定された共分散行列の固有値が負になることがあり,非負拘束を与えて,各事例に対する重みを再計算する方式を数種類考案した.これらを異常検出問題に適用した結果,そのうちの一つを用いて計算した異常度が,異常部で高い値を持ちながら,非異常部では低い値を持つ事を確認した.この異常度を,工業プラントの異常検出,心電図の期外収縮の検出問題に適用した結果,極めて安定かつ高感度な検出が行えることを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度に取り組んだ内容と結果は以下の通りである.番号は実施計画書に示した番号と同じである. 1)Dynamic Active Setを利用したベクトル出力時の共分散行列計算の問題点の一つであった,「負の固有値を持つ共分散行列が推定されることがある」という問題点を回避する共分散行列の推定方法について検討した.非負拘束を与えて,各事例に対する重みを再計算する方式を数種類考案した.これらを異常検出問題に適用した結果,そのうちの一つを用いて計算した異常度が,異常部で高い値を持ちながら,非異常部では低い値を持つ事を確認した.この異常度を,工業プラントの異常検出,心電図の期外収縮の検出問題に適用した結果,極めて安定かつ高感度な検出が行えることを確認した.この結果について電子情報通信学会PRMU研究会で発表を行った. 2)のGPRの動画像圧縮の開発は終えているが,圧縮性能の比較は行っていない. 3)複数の顔画像をデータベースとして,入力に近い画像を生成する「想起」にGPRを適用する問題に取り組んだ.40名の各人物が眼鏡の装着の有無,顔向き,表情,などを変えた10枚の画像から成る合計400枚の画像データベースAT&Tの"The ORL Database of Faces"を用いて,GPRを用いた想起および人物同定の実験を行った.この実験では,各人物10枚の画像のうち9枚をデータベースに入れ,1枚を入力として扱った.この結果,39名の人物同定に成功し,1名の推定に誤った.これは,GPRによって推定される共分散行列を全く利用していないために起きた誤りと考えられる.この内容については電子情報通信学会PRMU研究会で発表を行った. 4)心電図データの解析については上記1)で行ったが,AMeDASデータの解析については行っていない. 上記のうち,最も困難な課題であった1)で大きな進展があったことから,順調に進展していると判定した.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で,ベクトルの期待値と共分散行列の推定については,異常検出用途での計算法は実証的な意味での優位性は確認した.しかし,画像の想起などの用途では,推定される人物IDについては影響がないものの,想起される画像の質が低下するという問題があることを確認している.この点に関しては,理論的な検討が必要である.また,これまでに実証した異常検出の用途が狭いために,より多くの適用例を開拓する必要がある.ただし,AMeDASのデータを用いた「予測」タスクについては,本研究の範囲を超えており,研究推進上,「異常検出」と「想起」の2タスクに集中して取り組むべきであると考える.
以上のことから,27年度は「異常検出」については,26年度までの開発手法をできる限り多くの対象に適用することを目的とする.血液検査データなど生体情報への適用を模索する.「想起」に関しては,より精度の高い想起の方法について,理論と実証両面から検討を進める.
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Causes of Carryover |
26年度末まで,出力の共分散行列計算時に正値対称ではない行列が推定される問題を解決するため,重みの再計算を行う手法の検討を行ってきた.そのため,26年度中に予定していた実証実験で必要となる人件費の執行が行えなかった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
27年度は,異常検出用ソフトウエアをパッケージとして作り上げるための改修作業と,異常検出の実証実験とデータ収集に必要となる人件費と旅費を予定している.
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Research Products
(4 results)