2013 Fiscal Year Annual Research Report
確率微分方程式モデルの統計推測法の開発と高頻度データ解析への応用
Project/Area Number |
24300107
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
内田 雅之 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (70280526)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 朋広 東京大学, 数理(科)学研究科(研究院), 教授 (90210707)
増田 弘毅 九州大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (10380669)
深澤 正彰 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (70506451)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 統計数学 / 確率過程 / 統計的漸近推測 / 確率積分 / 漸近分布論 |
Research Abstract |
昨年度までに得られた確率微分方程式のドリフトとボラティリティパラメータに対する適応的推定法を検定問題やモデル選択問題に応用した。具体的には、ドリフトやボラティリティパラメータの検定問題に対して、同時最尤型推定量と漸近同等な推定量を用いて、尤度比型検定統計量、Wald型検定統計量、Rao型検定統計量を構成して、正則条件の下で、それらの漸近分布がカイ2乗分布に従うことを証明した。さらに、それらの検定が一致性を有することも示した。また、同時最尤型推定量と漸近同等な推定量および擬似尤度関数を用いて、赤池型情報量規準を構成し、それが数学的正当性を有することを証明した。同時最尤型推定量と漸近同等な推定量を用いて、検定統計量や情報量規準を構成できることが示されたことは意義深く、パラメータ空間の次元が大きい場合、同時最尤型推定量よりも適応型推定量を用いた推測法が数値的に安定していることが確認された。 外生変数や別の要因 (観測可能) も柔軟に取り込めるOrnstein-Uhlenbeck型回帰モデルや局所安定Levy過程で駆動される確率微分方程式モデルに対して、疑似最尤推定量の漸近混合正規性を導出した。回帰モデルの正則化推定 (高次元モデルの疎推定) において統計的確率場の多項式型大偏差評価を導出し、例えばbridge推定量などの、混合収束率を有する疎推定量の収束速度に関する評価を得た。 非線形なコスト制約の下での確率積分の離散化による平均2乗誤差を漸近的に最小化する問題を解決した。とくに確率積分を効率的にシミュレーションする方法を与えた。また確率微分方程式モデルに対する新しい強近似法を開発した。さらに、確率微分方程式の解そのものではなく、その積分値が高頻度に観測される、隠れマルコフ型モデルを考察し、拡散係数に含まれる未知パラメータに対する、Whittle 近似に基づく有効な推定量を構成し、その漸近混合正規性を証明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、高頻度データに基づく確率微分方程式モデルの検定統計量を構成し、その漸近的性質を示すことができた。前年度までに導出した適応的最尤型推定量や適応的ベイズ型推定量が同時最尤型推定量と漸近同等であることに着目して、より一般の適応型検定統計量を構成することができた。このアイディアはモデル選択問題に応用することも可能であることがわかり、適応的赤池型情報量規準の開発へとつながった。また、ジャンプ型拡散過程やLevy駆動型確率微分方程式に対しても、推定量の収束率の違いに着目して、拡散過程と同様に適応的推測法を開発できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
確率微分方程式モデルのパラメトリック推測において、未知パラメータに対する推定量の収束率の違いを考慮した適応型推測法が数値計算上、安定しており、推定問題だけでなく、検定問題やモデル選択問題にも応用できることがわかった。これは拡散過程だけでなく、ジャンプ付き拡散過程やLevy駆動型確率微分方程式の推測についても同様であると予想される。これまでの研究成果として、適応的最尤型推定法や適応的ベイズ型推定法が開発されているが、実際に推定量を導出する際に、どちらも問題点を含んでいる。適応的最尤型推定法は最適化する際に適切な初期推定量を要し、間違った初期推定量を選ぶと、最適化に失敗する。適応的ベイズ型推定は、パラメータ空間の次元が大きくなると、高次数値積分を実行する必要があり、推定量導出の計算時間が膨大となる。両者の欠点を補い、効率よく推定量を求める方法として、ニュートン・ラフソン法を応用した推定法の研究を行う。初期値として簡素化されたベイズ型推定量を採用し、最適化を要しないニュートン・ラフソン法と適応型最尤法を融合させることで、計算速度を向上させ、安定した数値を返す汎用的な推定法が開発できるのではないかと考えられる。
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Research Products
(22 results)