2015 Fiscal Year Annual Research Report
確率微分方程式モデルの統計推測法の開発と高頻度データ解析への応用
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24300107
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
内田 雅之 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (70280526)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 朋広 東京大学, 数理(科)学研究科(研究院), 教授 (90210707)
増田 弘毅 九州大学, 数理(科)学研究科(研究院), 教授 (10380669)
深澤 正彰 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (70506451)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 統計数学 / 確率過程 / レヴィ過程駆動型モデル / 疑似最尤法 / 高頻度データ解析 / 縮小推定 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,(i) 非エルゴード的拡散型過程モデルのハイブリッド型推定法の開発,(ii) レヴィ過程で駆動される確率微分方程式モデルにおける二段階推定の構築,(iii) ボラティリティの縮小推定,について研究を行った. (i)については,昨年度に開発したエルゴード的拡散過程のハイブリッド・マルチ・ステップ(HMS)推測法を非エルゴード的拡散型過程に応用する研究を行った.HMS法とは,規格化した擬似尤度関数による初期ベイズ推定量を用いてスコア法を必要回数実行した統計手法であり,前年度の研究成果からエルゴード的拡散過程のパラメータ推定に有効であることが知られている.本研究では,非エルゴード的拡散型過程のボラティリティパラメータを推定するために,オイラー・丸山近似に基づく擬似尤度関数による初期ベイズ推定量を用いてHMS推定量を導出し,それが漸近混合正規性およびモーメントの収束性を有することを証明した.また,数値実験によって,初期推定量の収束率に応じて,HMS推定量の漸近挙動が変化するという知見を得た. (ii)については,一般のレヴィ過程駆動型確率微分方程式モデルについて,二段階推定手法を構築し,漸近同時分布を導出した.また,局所安定型モデルに関する非正規型疑似尤度解析についてこれまで得た結果の技術的な改良を行い,ノイズの変動指数がコーシー以上ウィーナー過程未満の場合に統一的な正則条件の下で推定量の漸近混合正規性が得られることを示した.特に局所安定型レヴィ過程の場合に尤度比の局所漸近正規性を導出し,提案推定量が漸近有効であることを証明した. (iii)の縮小推定は,実現ボラティリティ統計量に1より小さい定数を乗じて縮小し,高次の有効性を改善するものである.前年度までに得られたブラウン運動モデルに対する結果を,非整数ブラウン運動やブラウン型半定常過程で駆動されるモデルへ拡張する研究を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り,非エルゴード的拡散型確率過程におけるボラティリティパラメータの推定量の有効な計算法として,初期ベイズ推定量とスコア法を融合させたハイブリッド・マルチ・ステップ(HMS)推定量を構成し,その漸近的性質を示すことができた.具体的には,前年度に導出したエルゴード的拡散過程のHMS推定量を非エルゴード的拡散型確率過程に応用して,オイラー・丸山近似に基づく正規化された擬似尤度関数による温めたベイズ型推定量を初期推定量としたマルチステップ推定量を構成し,それが漸近混合正規性やモーメントの収束性をもつことを示した.また,数値シミュレーションにより,温めた初期ベイズ推定量の収束率に依存してHMS推定量の漸近挙動が変化することを検証することができた.このHMS推定法はエルゴード的・非エルゴード的拡散型確率過程だけでなく,小さな拡散項をもつ微小拡散過程モデルやレヴィ駆動型確率微分方程式に対しても,適応可能であると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
エルゴード的拡散過程だけでなく,非エルゴード的拡散型確率過程にも初期ベイズ推定量を用いたハイブリッド・マルチ・ステップ(HMS)推定量が漸近有効性を有するだけでなく,高精度な計算手法であることがわかった.小さな拡散項をもつ微小拡散過程のパラメータ推定に対しても,初期ベイズ推定量を用いたHMS推定量を構成することが可能であると予想している.そのためには,エルゴード的拡散過程と同様に,微小拡散過程のドリフトパラメータとボラティリティパラメータの適応的最尤型推定量と適応的ベイズ型推定量を導出し,それらの漸近的性質である,漸近正規性やモーメントの収束性を証明する必要がある.そのために,微小拡散過程における統計的確率場の大偏差不等式を示し,Ibragimov-Has'minskii-Kutoyantsプログラムを実行する.また,初期推定量はベイズ型推定量を用いるが,漸近有効推定量を導出するために,スコア法の代わりに適応的最尤型推定法を採用したハイブリッド型推定法についても研究する予定である.初期値問題から解放された初期ベイズ推定量と数値的に安定することが予想される適応的最尤型推定法を融合させたハイブリッド型推定法は,独立同一分布モデルや時系列モデル,確率過程モデルなどの構造を仮定しない,一般の統計モデルに対しても適用可能な統計手法であると期待している.
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Causes of Carryover |
非エルゴード的拡散型確率過程のハイブリッド・マルチ・ステップ推定量の研究をしていたところ,小さな拡散をもつ微小拡散過程に対して,一般のハイブリッド型推定量が構成できるという新たな知見が得られた.しかし,それらの漸近的性質を証明することに時間を費やしたことにより,研究計画の遅延を余儀なくされた.よって,次年度に専門家との研究打ち合わせを行い,研究集会で発表を行うために旅費が必要である.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に微小拡散過程などの確率過程における一般のハイブリッド型推測法およびその応用についての研究打ち合わせ,さらに次年度に開催される確率過程の統計推測や計算統計および高頻度データ解析とその応用に関する研究集会での発表を行うための旅費などに使用する予定である.
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Research Products
(23 results)