2012 Fiscal Year Annual Research Report
腹側高次視覚野における色覚ネットワークの構造と機能の解明
Project/Area Number |
24300123
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
小松 英彦 生理学研究所, 生体情報研究系, 教授 (00153669)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 視覚 / 知覚 / 大脳 / 色覚 / ニューロン |
Research Abstract |
注視課題を訓練した3頭のサルのV4野からニューロン活動を記録し、最適刺激を用いて受容野マッピングを行うと共に、色選択性を調べた。色選択性は多数のニューロンにおいて10cd/m2の灰色背景上にCIE-xy色度図上に描いたディスプレイの色域を均等に分割する15点の色度の色刺激を、背景より明るい輝度(20cd/m2)および暗い輝度(5cd/m2)で呈示して調べ、色選択性が刺激の輝度コントラストによってどのように影響されるかを調べた。まずニューロンごとに明るい刺激と暗い刺激で同じ色度座標を持つ刺激同士の反応の相関を計算した。その結果輝度コントラストが色選択性におよぼす影響はニューロンによってさまざまであることが分かった。一部のニューロンでは両者の反応は高い相関を示したが、残りのニューロンでは低い相関しか見られなかった。次に各色度座標ごとに背景より明るい色と暗い色に対するすべての色選択性ニューロンの応答の相関を求めた。その結果鋭い色選択性を示したニューロンにおいては、低い彩度の刺激において相関が低く明るい色と暗い色に対する応答が異なることが分かった。一方ブロードな色選択性を示したニューロンではそのような傾向は見られなかった。次に29個のニューロンに対しては色域を均等に分割する45点の色度の色刺激を用いて反応を記録し、色選択性を詳細に調べ色相方向と彩度方向についてのチューニングカーブを求めることを可能にした。またこのうち19個のニューロンでは錐体コントラストー定の刺激セットを用いて応答を記録した。これによりCIE-xy色度座標を用いて得られたデータと錐体空間上の座標を用いて得られたデータの定量的な比較が可能になると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
V4野から多数の色選択ニューロンを記録し、色選択性が輝度コントラストによってどのように影響されるかを定量的に調べることができた。その結果をこれまでに調べた下側頭皮質のデータと比較すると、共通点と相違点が見いだされ腹側高次視覚野における色情報処理について新しい情報が得られつつあることからおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
V4野の記録部位内での色選択性細胞の分布や色チューニングの鋭さなど定量的な性質の分布を詳細に調べると共に、色以外の形選択性などの性質と比較検討を進めることにより、V4野内での色および他の視覚属性のモジュール構造を明らかにする。そのように同定したモジュール間で表現される情報にどのように違いがあるかを解析し、V4野を含む腹側高次視覚野における色情報処理ネットワークの構造と機能の解明を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
V4野から記録を行う上で、実験前後の外科的処置を行うために角度可変鏡筒を持つ手術用顕微鏡の導入が必要になり、平成25年3月に導入した。主にこの物品とその他いくつかの購入物品の財務処理が平成25年度に入ってから行われるために、直接経費の次年度使用額がみかけ上発生したものであり、実際には平成24年度予算を平成25年度中に使用することはない。
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