2013 Fiscal Year Annual Research Report
大脳新皮質の層特異的入出力形成におけるプレプレートの形成と分離の機能的意義
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24300126
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
寺島 俊雄 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20101892)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | リーリン / Dab1 / リーラー / ヨタリ / 大脳皮質 / 層形成 |
Research Abstract |
大脳新皮質の層構築形成の共通原理を大脳皮質の層形成に関する遺伝子ことにリーリン・Dab1シグナル伝達系を欠損するミュータントマウスから明らかにすることが本研究の目的である。以上の目的に沿い、以下の研究を行った。 (1)Dab1遺伝子の全長から一部を削った切断型遺伝子を導入することにより、Dab1タンパク質のN末とC末間の分子内制御について検討した。Dab1全長遺伝子をEGFPレポーター遺伝子と一緒に胎生14日目(E14)遺伝子導入すると、標識ニューロンは皮質の全層に分布した。逆にDab1のN末端断片を遺伝子導入すると、標識ニューロンは皮質の深層に分布した。同一のフェノタイプがリン酸化チロシン部位を欠くN末端断片を導入すると観察できた。N末端断片とC末端断片を一緒に遺伝子導入すると、皮質深層に蓄積する異所性ニューロンの数は減少する。以上よりDab1のN末端とC末端は相互に干渉することにより大脳皮質のニューロンの移動を制御していることを示唆している。 (2)前脳特異的にDab1を欠損するDab1cKOマウスを用いて、大脳皮質の表層マーカーCDPと深層マーカーFez1の分布を蛍光免疫組織化学的に検討した。cKOマウスのCDPおよびFez1免疫陽性細胞の皮質内分布は、正常マウスのそれと相対的に逆になり、ヨタリと同様の分布を示した。一方、カルビンジン免疫染色と鍍銀法で調べた結果、Dab1cKOマウスの小脳は正常化していた。以上より、組織学的な検索によりDab1cKOマウスの大脳皮質と海馬の細胞構築異常はDab1欠損マウス・ヨタリのそれと全く同じであるが、Dab1cKOマウスの小脳には全く異常を見出すことはできなかった。またDab1cKOマウスは振戦、歩行異常などまったく小脳失調症状を呈しなかった。以上より本cKOマウスは神経行動学的な研究対象として優れていることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下の理由で「(2)おおむね順調に進展している」と判断した。 (1)リーリンの下流で機能するDab1のさまざまなtruncated form を子宮内遺伝子導入法により移動皮質ニューロンを標識することにより、Dab1のドメイン間の分子内制御機構があることを明らかにした。 (2)Dab1を前脳特異的に欠損するコンディショナルマウスの形態学的観察により、本マウスが大脳皮質や海馬領域ではリーラーフェノタイプを示すこと、そして小脳においては正常であることを形態学的に示した。その結果、本マウスは小脳性運動失調を呈さないので、神経行動学的な研究に用いることができることを示した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)大脳新皮質の各層に特異的に発現する多くの分子マーカーが近年、明らかにされている)。例えば、Tbr1(第6層)、Otx1(第5、6層)、Er81(第5層)、RORα;(第4層)、Brn2(第2-4、5層)、Reelin(第1層、カハール・レチウス細胞)である。このような分子マーカーの抗体を用いて、Dab1断片を子宮内電気穿孔法により胎性中期から後期に導入し、導入直後あるいは生後における各マーカーの皮質内分布を調べる。 (2)上記遺伝子導入マウス胎児のホルムアルデヒド固定脳の大脳脚、視床、反対側大脳皮質にカルボシアニン蛍光色素DiI あるいは4DiI-10ASPを注入し、数週間、緩衝液内に脳を保存する。蛍光色素が軸索膜脂質層を物理的に側方拡散することを利用して運動野の皮質脊髄路ニューロン(第5層)、視床皮質投射ニューロン(第6層)、脳梁交連線維系ニューロン(第2・3層)の分布を検討する。 (3)GFP 遺伝子を胎生中期から後期のリーリンシグナル伝達系異常の各種ミュータント動物の胎仔の側脳室に注入し、神経管上皮細胞に遺伝子導入を行う。GFP 蛍光標識された脳室上皮細胞の娘細胞(=神経芽細胞)が脳室側より大脳皮質表面に細胞移動する状態を、タイムラプス顕微鏡を用いて直視下あるいはホルマリン固定後に蛍光顕微鏡にて観察する。特に、対照マウスにおける皮質板ニューロンがプレプレート内に進入し、プレプレートを辺縁層とサブプレートに分離して皮質板を形成し、しかも皮質板の内部でインサイドアウトパターンを形成することが、ミュータント動物でどのように障害されているか、明らかにする。
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Research Products
(6 results)