2013 Fiscal Year Annual Research Report
大脳皮質神経回路の不可欠な構成要素としてのギャップ結合性神経細胞連結の解明
Project/Area Number |
24300127
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
福田 孝一 熊本大学, 生命科学研究部, 教授 (50253414)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | ギャップ結合 / gap junction / 大脳皮質 / GABA / パルブアルブミン / 視覚野 / シナプス |
Research Abstract |
今年度の研究において、ギャップ結合による神経細胞連結を、化学シナプスが媒介する既知の神経回路の中にどのように位置づけたらよいかという年来の疑問への答となりうる、大きな成果が得られた。 初年度からの研究で明らかになった事は、(1)パルブアルブミン含有ニューロンがギャップ結合を介して形成する樹状突起の相互結合は、複数の細胞に由来する樹状突起が錯綜として連結し、樹状突起細網dendritic reticulumとも称すべき構造をとる事、 (2)ギャップ結合の位置を細胞体からの距離として計測すると、生理学的に想定されてきた距離よりもはるかに遠い位置にも多数ギャップ結合が存在していることであった。しかしこの遠位ギャップ結合の機能的意義は不明であった。平成25年度の研究過程で、この遠位ギャップ結合は、結合する相手側のニューロンの細胞体からは必ず近い位置にあることに気づき、定量的にもそれを確かめた。生理学的には、細胞体近傍のギャップ結合がEPSP様の興奮性シグナルを遅延無く結合相手の細胞内にもたらす事が知られている。すなわち今年度の研究成果から、ギャップ結合は近位側のPVニューロンがpresynaptic、遠位側の細胞がpostsynapticとしての性格をもち、かつ遅れが0ミリ秒の特殊なシナプスとして位置づけられる事、従って抑制性ニューロンであるPVニューロンの相互結合では興奮性ニューロンとして働きうること、また二細胞のどちらからも近いギャップ結合では恐らく両方向性の電気シナプスとして作用する事、実際クラスター状に集積する細胞間では近位樹状突起間にギャップ結合が存在していること、などを見いだした。さらにカラム内の上下のニューロン間での電気シナプス結合が密に存在する所見を得た。一方で、カラム間の連結を意味する横方向での結合も(preとpostの関係を示しながら)存在していた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年間の研究により、ネコ視覚野およびマウス新皮質バレル野のどちらにおいても、計画に沿った研究が順調に進展した。現在どちらの研究内容についても、質の高い国際学術雑誌への投稿に十分な結果がほぼ得られているため。
|
Strategy for Future Research Activity |
ネコ視覚野およびマウス新皮質バレル野のどちらにおいても、質の高い国際学術雑誌への投稿に十分な結果がほぼ得られており、今年度は論文の出版を目標として最終的なデータの解析と論文作成を実行する。後半は、さらに研究内容を発展させる実験を協力に推進する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
基金助成金は3年間の研究の遂行に伴い柔軟に支出することが可能であるため、平成25年度は補助金の使用を中心に研究を遂行した。本研究における実験機器の中核である共焦点レーザー顕微鏡が導入後8年となり、経年劣化による高額部品の交換を今年度に行った。同様の修理やレーザー光源の更新が次年度に予想されるが、本機器の維持は研究に必須の事項であるため、基金助成金の使用を次年度に振り分けた。 研究に必須である共焦点レーザー顕微鏡の維持費用、抗体その他の試薬、実験動物等の必須消耗品の購入に充てる計画である。
|
Research Products
(3 results)