2014 Fiscal Year Annual Research Report
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24300137
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
上口 裕之 独立行政法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, チームリーダー (10233933)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 脊髄 / 軸索ガイダンス / 成長円錐 / リゾリン脂質 / G蛋白質共役型受容体 / カルシウム |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、神経軸索に対して反発性ガイダンス分子として機能するリゾホスファチジルグルコシド(LysoPtdGlc)の受容体下流シグナルを同定した。各種G蛋白質阻害ペプチド(Galpha蛋白質のカルボキシ末端)を導入した神経細胞のLysoPtdGlcに対する応答性を定量した結果、G蛋白質(Galpha13)がLysoPtdGlc受容体に共役し軸索の方向転換に必要であることが判明した。さらにRNA干渉法あるいはG蛋白質キメラを用いた実験により、LysoPtdGlc受容体はGalpha13を介して細胞内シグナルを生成することが明らかになった。G蛋白質下流のエフェクターを同定するために各種薬理学的阻害剤の存在下で軸索ガイダンスアッセイを行った結果、アクチン骨格制御因子であるRhoおよびRhoキナーゼの関与が強く示唆された。以上の実験結果から、LysoPtdGlc受容体はGalpha13―Rho経路を介して神経軸索を反発することが示された。 一般的に成長円錐細胞質でのカルシウムイオン濃度上昇が軸索ガイダンスのシグナルとなることが知られているため、LysoPtdGlcによる軸索ガイダンスにおけるカルシウムシグナルの関与を検証した。各種カルシウムチャンネル阻害剤の存在下で軸索ガイダンスアッセイを行った結果、LysoPtdGlcはL, N, P/Qタイプチャンネルからのカルシウムイオン流入を介して軸索を反発することが明らかになった。 脊髄感覚神経回路の構築過程におけるLysoPtdGlcの役割を解明するため、昨年度に引き続き、LysoPtdGlc受容体ノックアウトマウスの解析数を増やして動物個体レベルでの実験を継続した。昨年度と同様、ノックアウトマウスでは脊髄感覚神経軸索の走行異常が確認され、盲検化した定量実験においても申請者らの結論の再現性が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
LysoPtdGlc受容体に対するモノクローナル抗体の作製を計画通りに行ったが、得られた抗体の力価と特異性が十分ではなかった。この問題は、モノクローナル抗体作製の技術的限界によるものであり、研究計画時に抗体作製の成否を予見することはできない。その他の研究課題については、すべて順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、より特異的な分子マーカーを用いてLysoPtdGlc受容体ノックアウトマウスの脊髄神経回路を詳細かつ定量的に解析し、生体内でのLysoPtdGlcの機能的意義を明らかにしていく。また、LysoPtdGlcおよびLysoPtdGlc受容体の産生細胞を特定しその分布を明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
LysoPtdGlc受容体に対するモノクローナル抗体の作製および本抗体を用いた免疫組織学的解析を次年度に繰り越すため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の研究計画に加え、LysoPtdGlc受容体に対するモノクローナル抗体の作製費用の一部およびマウス神経組織の免疫組織学的解析の費用として使用する。
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