2012 Fiscal Year Annual Research Report
組織損傷ならびに不活動由来の慢性痛に対する理学療法の生物学的効果を探る
Project/Area Number |
24300193
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
沖田 実 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (50244091)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中野 治郎 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 准教授 (20380834)
坂本 淳哉 長崎大学, 大学病院, 理学療法士 (20584080)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 組織損傷 / 不活動 / 慢性痛 / 理学療法 / ケラチノサイト / 神経成長因子 / 神経可塑性 / 侵害受容分子 |
Research Abstract |
組織損傷に伴う末梢組織の炎症によって過剰な刺激が脊髄へ入力されると中枢神経系の感作を引き起こし、痛覚過敏が重篤化することは古くから知られている。これに対して、末梢組織が不活動状態に曝されると末梢から中枢神経系への感覚刺激入力が減少し、痛覚に影響すると近年指摘されているが、その病態や発生メカニズムは解明されていない。そこで、今年度はラット足関節を底屈位で4・8週間不動化したモデルを用いて、痛覚閾値の推移と皮膚の組織学的変化ならびに脊髄後根神経節(DRG)や脊髄後角細胞といった神経系の可塑的変化を検討した。結果、痛覚閾値の低下は不動2週後より生じ始め、それ以降は不動期間の延長に伴って顕著になった。そして、表皮の菲薄化や真皮上層に分布する末梢神経密度の増加といった皮膚の組織学的変化も痛覚閾値の低下が生じ始める不動2週後より認められ、これらの変化も不動期間の延長に伴って顕著になった。また、不動に伴う末梢神経密度の増加にはケラチノサイトが産生する神経成長因子(NGF)の増加が関与する可能性が見いだされ、併せてケラチノサイトにおいて侵害刺激受容の中心的分子であるTRPV1やP2X3の発現増強が不動期間依存的に認められた。つまり、これらの皮膚の組織学的変化が不動によって惹起される痛覚閾値の低下の末梢機構の一因として関与している可能性が明らかとなった。一方、神経系の変化としてDRGや脊髄後角細胞におけるカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)の発現変化を検討した結果、DRGにおいてはCGRP陽性細胞の大型化が不動期間依存的に認められ、脊髄後角においてはその浅層部におけるDRG陽性細胞の発現増強が不動期間依存的に認められ、深層部においては8週間という長期不動を施した群でのみDRG陽性細胞の発現増強が認められた。つまり、不動期間が長期におよぶほど神経系の可塑的変化が顕著となり、このことが慢性痛に発展する要因ではないかと推測している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は不活動由来の痛みの末梢機構の解明に主眼をおいて検索を進め、前述したように皮膚の組織学的変化がその一因であることをつきとめた。この点の成果については非常に満足しているが、他の末梢組織、特に実際の症例でも訴えのある不活動後の筋痛については検索を始めた段階にある。これまでのところ、筋においても皮膚と同様にNGFの発現増強が影響している結果が得られているが、結論づけるまでには至っておらず、これらのことから今年度の達成度は(2)と判定した。
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Strategy for Future Research Activity |
前述した骨格筋の検索については、試料採取まで終了しているため、今年度の上半期までには結論を得たいと考えている。そして、今後は治療介入研究を動物実験モデルでシミュレーションし、慢性痛に対する理学療法の生物学的効果の基礎データを得ていく。
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